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完璧少女の亡命先  作者: 雷
8/24

ワクワクドキドキの初めての旅

私はスズ、今年七歳になった女の子。今、私はとってもワクワクしてる!なんでかって?それは...デデン!旅に出てるの!最近まで寝込んでたんだけど、その治療をしてくれたリカさんって人が一緒に旅しないかって言ったの。お話ばっかで私も行きたいのにって考えてたからすごく嬉しかった。お姉ちゃんは渋ってたんだけどね。ところで旅って何するんだろう?世界の色んな所を回るんだよね。どこ行くの?


「ねえ、リカさん。スズ達どこ行くの?」


私の言葉にお姉ちゃんがはっとする。代わりにリカさんはキョトンとした。


「どこって...?言ってなかったっけ。ユンガチュエに行きたいって言ってたでしょう。まぁとりあえずはこのまま東に行って、ユンガチュエの国を見に行けばいい。後のことは着いてからかな。」


ユンガチュエ。名前しか知らない国。コランチェよりは小さい国だと思う。


「リカさん、私は別にリカさんの旅を邪魔するつもりはないのです。リカさんの行きたいところについて行くつもりですよ。」


お姉ちゃんが少し困った顔をする。モウシワケナイっていう気持ちになった時あの顔になるんだと、お兄ちゃんから聞いた。


「いや、別に私達の目的地はないんだよ。」


私はびっくりする。目的地のない旅なんて初めて聞いた。


「リカさんはじゃあなんで旅してるの?」

「ああ、スズちゃんは寝てたから知らないんだね。」

「スズでいいよ!」


ちゃん付けは少し気持ち悪い。私はもう子供じゃ無いんだから。リカさんは足を止めてしゃがんだ。リカさんと目がちょうど合う。


「じゃあ、スズ。私もリカでいいからね。私達は人探しをしてるの。」

「どんな人?」

「髪が長くて、白い服を着て、口から雪を吐く人。」

「こ、氷の女王?!」


私はびっくりして声が裏返る。リカは楽しそうだ。


「リカ様、あまりからかわれないように。本気で信じてしまうでしょう。」

「ごめん、ごめん。」


エンがちょっと怖い顔でリカを見る。けれどリカはなんともないようでニコニコしてる。


「氷の女王探してるの?」

「スズ、冗談よ。リカさんは探す人を教える気は無いの。」


お姉ちゃんが私の髪を撫でながら、ため息をつく。「騙されやすい」と言われて少し傷付いた。


「でも、あながち間違いじゃあないんだよ。本気で氷の女王探してたこともあったから。」

「え!じゃあ、女王様にあったの?」


「ききたい?」とリカは笑う。私は嬉しくなる。だってリカの話はいつもとーっても面白いから。


「ききたい!」

「ふふ、そうだね。あれはここからもっと北に行った雪国だった。.......」


リカさん...違った、リカの話を聞きながら私達は歩く。門の外にはお姉ちゃんが出してくれなくて来たことがなかった。町とは違ってクウキがおいしい。そして草がいっぱい生えている。道はでこぼこで歩きずらい。すれ違う人も全然いない。でもそんなの関係ない。だって『旅』だからね。でもなんか疲れてきたよ。


「お、もうそろそろ民家が見えてきたよ。あそこに着いたら休憩かな。」


リカの指さす方向にたくさん家が見えてきた。その中の一つに「ごはん」とかかれた看板がある。


「よぉし、着いた。休憩しようか。」


リカは「ごはん」の下にある店へ入っていく。ちょっと汚そうに見えるけど大丈夫かなぁ?お兄ちゃんはちょっと困った顔になる。お兄ちゃんに「この野菜残ってるよ」と言うとなる顔だ。そういう時はお姉ちゃんが「好き嫌いせずに食べさない」っていう。私は「スキキライ」はしないから言われたことないよ。


綺麗じゃないテーブルの前の椅子に座る。ちょっと高い。ちょっとだよ。私は身長高い方なんだから。目の前に何かよく分からないものが置かれる。湯気が出てるけどスープ?


「お腹すいたでしょ。もうお昼だもんね。」


リカの言葉にびっくりする。


「お姉ちゃん、お昼のかね、鳴らなかったよ。」

「そうね、ここまでは音が来ないみたいね。ここの人は不便じゃないのかしら。」

「姉さん、俺達も別に不便じゃなかったろ。そういうことだよ。」

「そういうことってどういうこと?」


私が首を傾げてもお兄ちゃんは答えない。お姉ちゃんも「そういうことかしらね」と言ってよく分からない。


「さ、とりあえず冷めないうちに食べよう。」


リカはどこからか食器を出している。


「スズ、はいこれ。」


お姉ちゃんはカバンから私の食器を出す。リカはなぜか変な顔になった。笑っているのにわるい顔。


「お兄ちゃん、あれはなんの顔?」


私はお兄ちゃんに小声で聞く。昔から人の顔はよく見て、わからなかったら聞け、と言われてきた。そのおかげでなんとなくだけど「いい顔」と「わるい顔」がわかる。中でも笑顔は気をつけなくちゃいけない。見分けるのが難しくて奥の奥を見なくちゃ行けないから。


「あれは苦笑い。ほら、姉さんがユッテさんにするやつ。」


ああ、なるほど「にがわらい」。ユッテさんはお姉ちゃんに求婚してくる人。求婚の度にいらない薬を買い取ってくれて儲かるから「ムゲ」にできないと言ってる。


「スズ、食べないの?」


...忘れてた。ちょっとぼーっとしてただけだから。私はスープの上に手をかかげてお祈りをする。


「『いただきます』。ヴィフリティエスティモンディスリィー。」


スープはちょっと光る。これは食べ物にするおまじないでお姉ちゃんが言うには自分に「がい」があるものは光ってそこは食べたらいけないんだって。でもこのスープは光ってないから食べて大丈夫そう。ちょっとガッカリ。光ったままだったら食べる量が減ったかもしれないのに。仕方ない。食べるよ。食べるからね!.......................................まずい。まずいという言葉は使う時なんて来ないと思っていたのに。お兄ちゃんも少し嫌な顔をする。お姉ちゃんも他の人には絶対わかんないぐらいの嫌な顔をしている。


「おおう、みんな評価低いね。これが庶民の普通の食事よ?君らいいもの食べすぎ。舌が肥えてるよ。」


リカはまずいと思ってないみたい。どうせなら美味しいものが食べたい。お姉ちゃんのごはん美味しかったんだ。


「リカさん、この調子で行くとユンガチュエに着くのはどのくらいの日数かかりますか?」

「んー、三週間ぐらいかなー。」

「三週間ですか...。」

「いや、早いからねこれ。早い方だから。」


お兄ちゃんは嫌な顔をやめない。このごはんが三週間だから...えっと...二十一日だよね、だから...二十一回も食べなきゃいけないの?


「スズ、たぶん夜もだ。」


お兄ちゃんがちょっと低い声で言う。えっと夜と昼で...。


「四十二回!えっ、そんなになの?」


私は泣きそうになる。だってこれからそんなにこのごはんを食べなきゃいけないなんて。


「慣れればいいんだよ。って言ってもダメだろうね。極力自炊かー。」


リカはチラッとエンさんの方を見る。エンさんはため息をついた。あの顔は確か「しかたない」って顔だ。「きょくりょくじすい」がわかんないけどたぶんこれよりはましになるはず。


それからお姉ちゃんとお兄ちゃんがリカと話してたけどわかんない言葉がいっぱい出てきてよくわかんなかった。暇だったから、エンちゃんとおしゃべりしてたの。あ、エンちゃんって呼んでもいいよってちゃんと言われてるから大丈夫だよ。


ごはんを食べたら今度はひたすら歩いた。途中から森に入って見たことない動物がたくさんいた。ふらっともふもふを追いかけたらはぐれちゃったこともあったけど。スズは悪くない。もふもふがわるい。そんなこと言ったらお姉ちゃんに「本気?」って怒られるから言わないけど。


その後のテント張りは楽しかった。旅ってやっぱり楽しいんだね。


「ふあぁ。」

「スズ、もう寝なさい。お月様も出てるから。良い子は寝る時間よ。」

「はーい。」


お姉ちゃんのカバンから出した藁を布の下に詰めて「がいとう」を被って目を閉じる。今日は色々あってほんとに楽しい一日だったなあ。いつもは一緒に寝るお兄ちゃんがいなくても一人で今日は眠れたんだよ。スズは偉いんだから。エッヘン。


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