黒と緋と碧 ~緋の話~ 2話
2話
破壊する者
世界が緋色に染まった後、2人は木の虚の中にある居住スペースで、ここに住む全員を集めた。
「それじゃあ、お話始めるね」
中心には、キラと呼ばれた子。ショートの銀髪から2本の尻尾のような束が垂れ、白い花を逆さにしたような服をまとっている。
全員服は同じような形で、それぞれ髪の色に合った服を着ている。
「まずは外だけど…お空も森も、全部真っ赤になっちゃってるんだ」
ざわざわ。
それぞれ驚いたり、隣と話したり、寝たり、よだれを垂らしたりしている。
「もう…トトとコクは…」
はぁ、とキラも飽きれ顔。
両隣では、紫の服をまとうシクと、半透明な服をまとうウイ。
「トトに関しては服すら来てないしもう!ウイ、着替えさせてきてよ」
「さっき着替えさせたのにすぐ脱ぐんだよ!キラの権限でどうにかして…」
お互いにやってやってと押し付け合う二人に、こほんと咳払いをして、シクが続きを話す。
「さっきキラが言ったように、外は真っ赤だわ。これは、ロキが見た景色に似てる。緊急事態よ。」
シクの一言で空気が凍る。
キラと真逆の色である黒の服を着た、ロキと呼ばれた子。ロキには、断片的にだが、未来を見る力がある。
「ロキが見たのと、外の景色が一緒なら、もうすぐ…ここは終わるわ。全員、今すぐ身支度をして!すぐに緋の花畑を移す……!?」
「逃げてみんな!!」
キラの声と同時に、白い物にロキが捕まってしまう。ロキも、もがいていてはいるが、相手の大きさが違いすぎる。
「これは…[ガイジュウ]!!」
悲鳴にも似たシクの声と、ハッキリとした、キラの声が響く。
「みんな急いで!移動に必要な最低限だけ持って!生きて!」
全員が散り散りに飛び去ると、[ガイジュウ]は、唸り声をあげる。
[ニガスナァア!ゼンブツカマエロ!!]
[コレデオレタチ、アソンデクラセルゼェ!!]
みんなが逃げる時間を稼ぐため、囮として[ガイジュウ]の気を引き、最後に花畑を出たキラが見たのは、無惨に踏み荒らされ、見る影のなくなった花畑だった。