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実況:ノマル 解説:マイロ

「どうも。今回初めて実況をさせてもらう、ノマルだ」

「マイロ」

「今回はちょっと変わった試みでお送りしたいと思う。なんでも、マイロは他者の考えていることを読み取れるという話なので、それを存分に生かしていこうと思っている」

「がんばる」

「つまり、実況と解説といういつものスタイルではなく、実況と勇者の内心の実況という、変則的な形でお送りするつもりだ」

「読心術、オン」

「では、早速始めていこうか。今回の勇者は、宿敵である暗黒騎士との一騎打ちに赴く途中と資料にあるな。今、勇者は何を考えているのかね?」

「昼食のふりかけご飯美味しかった」

「き、緊張感がねえな。さて、目の前に見えるのが、暗黒騎士が待っているという砦らしいが」

「ついに、決着をつける時が来たか」

「勇者も決戦を前に燃えている様子」

「ここまで3415回負けたが、今日こそは勝つ!」

「負けすぎじゃね!?」

「策は用意してきている。今度こそ大丈夫だ」

「説得力がなさ過ぎる」

「そろそろ、皆の視線も痛くなってきたし、ここらで威厳を取り戻さなければ」

「手遅れも甚だしいな。それはともかく、暗黒騎士と対面したようだ」

「ふっ、早速今回の策を使わせてもらおう」

「お、期待できる内心だが?・・・おおっ!高威力の火球で先制攻撃か!これは開幕から派手だな!」

「向こうの状態が整う前に全力の一撃!不意打ち上等!!卑怯や汚いは敗者の戯言よ!!」

「勇者とは思えんな」

「はーっはっはっはっは!」

「魔王かっ!!それはともかく、煙が晴れていくが・・・おっと!?暗黒騎士は無傷だ!」

「なんでやねん!」

「何で関西弁やねん!それはともかく、先手を取ったんだから、畳みかけるために次の手を打たないとな。さて、追撃は何を使う!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・万策、尽きたか・・・!」

「おいぃ!?お前の自信満々の策って、先手必勝のみかよ!?もうちょっとなんかあるだろ!?」

「くっ、今ので魔力は全て使ってしまった!!」

「計画性皆無か!!」

「だが、まだ俺には剣術がある!その首、貰い受けるぞ!!」

「予想外にカッコいいセリフ!向こうも剣を構えたし、これは良い剣戟が見られそう------」

「体力テストで握力19だった俺を、なめるんじゃねえぞ!!」

「非力もいいところじゃねえか!!剣をまともに握れるのかすら不安なんだが!?」

「くそ、なんで聖剣ってのはこんなに重いんだ!?」

「腕力もねえぞ、こいつ!」

「ステータスのなさを装備でカバーしてきたツケが、こんなところで効いてくるとは・・・!」

「人間性能皆無!?」

「うりゃああああああああああっ、我流剣術、逆龍ぎゃくりゅう墜とし!!」

「お、何かカッコいいネーミング!」

「・・・実際には、武器の重量に頼ったただの振り下ろし!!」

「名前だけそれっぽくしてんじゃねえよ!!しかも、あっさりはじかれて剣を飛ばされてやがる!」

「くそ、こうなったら奥の手だ!!」

「お!なんだよ、まだ隠し玉があるんじゃねえか!」

「俺式究極必殺最終奥義!!」

「物々しいな。・・・逆に不安になってきたんだが」

「ヘッドダイビング土下座!!」

「山田君!この勇者持ってって!」

「ふっ、これほど綺麗な土下座は見たことがあるまい・・・!」

「何で得意気なんだよ!?」

「うおっ!?バカな、この完成度の土下座を見てもビクともしないだと!?」

「どうして通用すると思った!?ていうか、相手の攻撃をよけるのだけは上手いなおい!」

「うわぁ!にょ!?ふぇっ!?にゃはぁ!?」

「心の声が情けねえ!でも、全部躱してる!!小学校でクラスに一人はいる、ドッジボールで玉躱すのだけは上手い奴みたいだ」

「にゃあ!?ほいっと!にょっほほー!たりらりらーん!」

「調子づいてんじゃねえよ!!」

「ほーら、私を捕まえて御覧なさーい?」

「趣旨が変わってきてねえか!?」

「うっふふー」

「・・・あ、暗黒騎士が黒い雷を落とした」

「あべべばべべ!?」

「おお、何とか耐えてやがる。だが、既に虫の息だ」

「くっ!殺すなら俺以外をころせええええええええええ!」

「ここまでくると、いっそ清々しいカッコ悪さだな」

「・・・そうだ!こ、交渉しよう!ほら、ここに聖徳太子の描かれた千円札がある!貴重品だぞー?額面以上の価値があるぞー?これで見逃してちょんまげ!」

「ついには買収かよ!?ていうか、差し出した札を目の前で破られてやがる!」

「なんてことを!?俺の宝物をよくも!!」

「ささやかな宝物だな、おい」

「慈悲や融和といった人の心がないのかお前には!!」

「いや、相手暗黒騎士ですし」

「くそ、ドジったぜ」

「ドジも何も、完全にお前の実力不足だろうよ」

「昼食は、ゲンを担いでカツ丼にすべきだったか・・・!!」

「後悔するポイントおかしくね!?」

「くそ、これほどの屈辱は今朝ぶりだ!!」

「もしかして、今朝も挑んで負けてんのかよ!?」

「近所の子供に、ポンコツ勇者とからかわれた時以来だ・・・!」

「面目失墜しきってやがる!ちょっと同情に値するわ」

「その時に、強さを見せつけるために必殺の魔法を使わなければ、もっと威力のある魔法を使えたのに・・・!」

「自業自得もいいとこじゃねえか!!」

「まあ、どうせさっきの奇襲に毛の生えたような火力しか出ないけどな!」

「すいませーん、この勇者チェンジでお願いしまーす。もっといい勇者を頼む」

「うう・・・異世界でハーレムを作るチャンスだと、意気込んで転移してきた結果がこれだよ」

「動機も不純じゃねえか!!肯定できるところが皆無なんだが!?」

「だが・・・だが・・・俺は決してあきらめんぞ!!俺は死んでも何度でも生き返るからなぁ!!」

「それが、化身から貰った加護の内容か」

「俺の心は決して折れん!!何度だって挑んでやる!勝てないとわかっていても挑んでやる!!」

「その心意気だけは肯定してやれるかもしれんな」

「村の住人が、一周回って尊敬できるくらいには挑み続けては負けてやる!!」

「勝つことを諦めてるのは潔いと評するべきか?」

「そして、不屈の勇者という二つ名を手に入れて見せる!!」

「こいつ、目的見失ってねえか?」

「そして、いかにもかっこいい二つ名を名乗って、女の子を口説く材料にしてやる!」

「俺、ようやくわかったわ。こいつ、アホどころか底抜けのアホだ」

「はっ!誰かが、どこかで俺の事を蔑んだ気がする・・・!」

「どんな直感だよ!?」

「って、今更の話だよな。今滞在してる村の住民は、全員俺の陰口言ってるだろうし」

「自業自得とはいえ、悲しい境遇に置かれてんな、おい」

「いずれ、何らかの奇跡によって力を得た暁には、俺の恥ずべき過去を知っているあいつらには村ごと消えてもらうことにしよう」

「それでいいのか勇者!?」

「さあ、やれよ、暗黒騎士。覚悟はできてる」

「千回単位で死んでるだけあって、潔いな」

「・・・痛くしないでね?」

「前言撤回!最後まで情けねえ!注射される前の子供か、お前は!?」

「・・・優しくしてね?」

「それは、なんだか意味が違ってくる気がする!」

「・・・なんなら、俺の執念に根負けして自殺してもいいのよ?」

「他力本願もいい加減にしろや!」

「あ、やめて、心臓に一撃なんて!やだ・・・この、ケダモノォ!!・・・読心術の対象が絶命しました」

「そんな最後の言葉あるかいっ!!」

「せっかくなので、暗黒騎士側の内心ものぞいてみますか?」

「そうだな。興味もあるし、締めの前に覗いてみるか」

「では、読心術開始」

「終始無言だった、いぶし銀な暗黒騎士の内心はいかほど?」

「わーい!きょうもゆーしゃをたおしたぞー!はやくかえって、ママにおせきはんたいてもらおーっと!」

「勇者だけでなく、お前にもガッカリだよっ!!」

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