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実況:オドリー 解説:クレッセ

「さて始まりました!神に近しい存在である化身によって選ばれた勇者の動向を、同じ化身である我々が実況しようというこの突発企画!実況は私オドリー。解説はクレッセでお送りします」

「なんかよくわかりませんが・・・まあ、よろしくです、画面の前の人間達」

「今回は、アレイエンの選んだ勇者という事ですが、どの程度の実力を持っているかが楽しみですね!」

「あの女神は面食いですからねー。きっと、本人の才能や素質などではなく、顔の良さだけで選んでるんじゃないですかねー」

「おっと、早速勇者が登場しました!ここは・・・城の中でしょうか?」

「そのようですねー。状況が分からずにキョロキョロする勇者が微笑ましいですねー」

「この様子を見ると、ろくな説明もなしに異世界へと放り出されたようにも見受けられますが、いかがでしょうか?」

「あの女神は飽き性でもありますからねー。きっと、一から十まで説明するのが面倒になって無理やり放り込んだんでしょうねー。迷惑極まりないですねー。僕に絡むときも妙にねちっこいですし、早く死------」

「おっと!早速、侍従の女性に見つかってしまったようですね。意味もなく手をわたわたと振っている様がまた微笑ましいですねー。思わず笑みがこぼれてしまいそうな必死さです」

「ただ、視線だけはスカートの下に固定されていますねー。いわゆる”絶対領域”について一家言あるタイプなのかもしれないですねー」

「なるほど、意外と余裕があるのかもしれませんね。・・・さて、どうやら釈明を終えたようで、どこかへと連れていかれようとしていますね」

「侍従の後ろに大人しくついて行ってるように見せかけて、やはり視線はスカートの下へ向けられてますねー。これは、自分が絶対領域を堪能するために後ろについた可能性が濃厚ですねー」

「余程好きなんでしょうね。・・・おや、二人の足が止まりましたね。部屋の中へと入っていきますが・・・これは内装的に玉座の間でしょうか?」

「この無駄に煌びやかで、無駄に広くて、無駄に厳格な雰囲気が漂っている感じからすると、間違いなさそうですねー。剥製とか飾ってないだけ、部屋の趣味は比較的マシですが」

「おや、勇者は王様と何か話をしているようですね。何を話しているかまでは分かりませんが・・・」

「王の表情が怪訝なところを見ると、お前は本当に我が王国を救いに来た勇者なのかと確認している感じですかねー。事前に、王様の方には女神が口添えしていたようですがー」

「勇者の方は、やはり身振り手振りを駆使して必死に何かを訴えているように見えますね」

「視線は王様ではなく、その両隣の従者の女性に向いていますねー」

「確かに、ここまで案内してきた従者の女性も含めて、三人ともそれぞれに華がありますからね。男性としては致し方ないと言ったところでしょうか?」

「それにしても、時と場合を考えろとは思いますけどねー。緊張感なさすぎじゃないですかねー。手足の動きと視線の動きが一致してないんですよねー。あれが勇者とか、この王国の未来は真っ暗ですねー。ちょっと同情しちゃいますねー。まあ、僕たちには関係ないんで、ご愁傷さまって感じですかねー。大体------」

「ここで動きがあるようです。・・・王様が勇者に何かを渡しましたね」

「あれは金貨袋のようですねー。おそらく、装備を整えるための準備金なのではないかとー」

「女神の加護によって多少の力を手に入れた勇者といえど、装備を整えて戦闘経験を積まなければ、宝の持ち腐れですからね」

「まあそれ以前にー、あの男は性根が腐っている気がしなくもないですねー。今も、袋の中身を見て顔が欲望一色になってますねー」

「これは、人選を誤ったと言えるのでしょうか?」

「大間違いですねー。あの下卑た視線は、どう考えても勇者じゃなくて盗賊のそれですねー」

「さて、ルンルンスキップで玉座の間を後にした勇者ですが・・・どうやら城下町へ向かっていますかね?」

「そのようですねー。まともな勇者であれば、まずは武器や防具の品定めをするところですがー。果たして彼はどうでしょうねー」

「おや、どうやら屋台で買い物をするようですね」

「あれは、焼きキュロックのお店ですねー」

「焼きキュロックとは、いったい何でしょうか?」

「簡単に言うと、串に刺したキュロックと言う野菜を、直火で炙って軽く味付けするだけで完成するシンプルな料理ですねー」

「その焼きキュロックの串を二本購入して、食べながら屋台を見て回るようです」

「文字通りの食べ歩きですねー。最初に購入したモノが、戦闘に何ら寄与するモノでないという時点で、先が思いやられますねー」

「腹が減っては戦はできぬという格言もありますし、必ずしもそうでもないのでは?」

「彼の場合、減るのはリスナーからの好感度でしょうねー。きっと、リスナーにアンケートを取ったら、支持率は二ホンの政権に対するソレより低いんじゃないかと思われますねー」

「おや、食べ終えた串を路地裏へと投げ捨てましたね。この行動についていかが思われますか?」

「環境破壊幇助ですねー。しかも、周囲の視線が自分に集まっていないのを、さりげなく観察してから事に及んでますねー。世間の評判を気にするくらいならやらなきゃいいのに、小心者な勇者様ですねー」

「・・・おや?またもや周囲を気にしていますね。今度は何をするつもりなのでしょうか」

「あー、あれは遊郭街へ続く路地ですねー。その入り口付近で、人を待っているようなフリをしながら、時おり路地の先をチラ見してますねー。成人指定のコーナーに対する、男子学生の挙動に似ていますねー」

「おや、中へ入っていきましたね。覚悟を決めたんでしょうか?」

「あれは、加護によって手に入れた隠密のスキルを使ってますねー。こんなくだらない事に使うために、あの女神は加護を与えた訳じゃないと思うんですがねー。これは、大誤算と言ったところでしょうねー。まあ、顔を見るばかりで、中身まで見通せなかったアレイエンの失態ですねー。まー、予想通りとも言えますがー」

「おや、遊郭の一つへと入っていくようですね」

「中へ入ってから隠密を解いたものだから、出迎え担当の女性が混乱していますねー。迷惑極まりないですねー。というか、あの遊郭ってかなり敷居が高い感じがしますし、買うにしても相応の値段になるのではないかと思われますねー」

「・・・つまり?」

「あー、今日貰った軍資金は全てのみ込まれると見ましたねー」

「そうですかー・・・・ところでクレッセさん」

「はいはい、オドリーさん」

「・・・もういいよね?」

「もういいと思います。あれは、勇者は勇者でも、”夜の”勇者です」

「ですよね!では、今回はこのあたりで!」

「また機会があればー」















「・・・アレイエンがどんな顔をするか楽しみですね」

「顔に泥を塗られたー!!って怒り狂った挙句に、憤死でもしてくれれば言う事ないですね」

「・・よっぽど嫌いなんですね」

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