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97話

 終わりの時は突如として訪れる。


 それは襲撃組のもの達がこの場に来た訳でもリュート達がトドメを刺した訳でもない。


 ……部屋を漆黒の焔が徐々に支配し始めたからだ。


 リュート達は瞬時に一カ所に集まりヴィルグが結界を張る。


「なんだ、テメーは刺客だったのか」


 それを横目で見ながらイガレスは静かに自分の最期を悟る。


 この焔は自分を助けるためにはなったものではない。


 その逆、余計なことを喋らないように口封じを行なうもの。


 通りで今まで姿を見せなかった訳だ、とイガレスは自分のところに忍び込んでいたネズミの顔を思い浮かべ薄ら笑いを浮かべる。


 部下には見捨てられ、刺客には殺されようとしている。


 暴君として恐れられ疎まれた自分には相応しい最後だと一人納得していた。


「随分と潔く諦めようとしているんだな」


 黒い焔で包み込まれる部屋の扉が勢いよく開けられる。


 イガレスはその人物の登場に目を見開いて驚いていた。


 彼とは決別した、少なくとも自分はそう思っていた。


 絶体絶命の負け戦なんかに残るはずもなく今頃逃げているはず……少なくとも彼はそう思っており()()()()()()()()()()()()()


 けれどやって来た男ーークレイドルは逃げず、今まで下で襲いかかって来た侵入者達を食い止め、今は命の危機に陥っている主の元へと馳せ参じている。


「お前……何故ここに来た」


「言っただろ、最後の最後まで付き従ってやると」


「あんなもん誰も信じねーよ」


「そうか、少なくとも俺は信じて曲げない」


 黒い焔で体が燃やされていくのなんて関係ない。


 クレイドルは一歩一歩着実に身動きが取れない自らの王の元へと向かって行く。


 その光景を見て暴君は目を閉じて折れる。


「そうか、そんなに俺と心中してーのか。前々から馬鹿だ馬鹿だと思っていたけどここまで馬鹿だと思わなかったぜ」


「ああ俺は馬鹿者だ。残虐で暴虐で人のことなんて微塵も感じていない暴君、そんなお前でもーー」


 防御や治療、その他のすべてを投げ捨ててまで集めた自分の魔力。


 そのすべてを左手に持っている銃に注ぎ込み銃弾として開放する。


 放たれた銃弾は何人ものの人が力を合わせて作った結界を突き破る。


「俺は生きて欲しいんだ」


 どこまでも優しくどこまでも温かい笑みを浮かべる。


 イガレスはその笑みを見たことがある、自分達を命がけで逃す時に浮かべた仲間達が浮かべたもの。


 そして今回も浮かべている意味は同じだった。


 空いた結界の穴に目掛けてイガレスを投げ飛ばし、帰還の魔法が刻まれた銃弾を銃に込めて放つ。


 イガレスがどんな表情を浮かべていたなんて今の彼には見えない、もう目が見えないくらい彼は焼かれすぐにその場に倒れ込む。


 その表情はとても満足げだったと……リュート達はいつまでも忘れなかった。

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