8話
「ルーキーって怖いもの知らずだな」
「というよりも田舎者だから常識知らずなんだろ」
そこは品位なんて感じさせない場所だった。薄暗くて埃っぽい、物は乱雑に置かれ家具の統一性もない、おそらく高級品だろうと思うがどれもこれも傷が入って痛んでいた。
人もそうだ、ギルドのメンバーであろう下品にゲラゲラと笑っており彼らに愛想を振る舞いている女どもも扇情的な服を着ていて知性の欠片すら感じさせなかった。
ただ……そのような衣装を着た女性には二通りの人種が存在していた。一つはその服装通りに自分から率先して男達を誘惑しているもの達。もう一人はどこか距離を置きたそうな表情を浮かべているもの達。
後者のもの達は全員首輪をつけていた。そしてよく周りを見てみれば彼女達ではなく屈強な男たちの何人かも首輪をつけている。
彼らは奴隷。ここのギルドや彼らが所属しているクランが非合法な方法で連れて来たもの達、皆が皆好き好んで彼らに従っている訳ではなかった。いっそう死んでしまいたい、奴隷の指輪のせいでそのような行動は出来なかった。
そんな彼らが今の彼らの会話を聞いて思った感想はーーなんて愚かな子達だった。誰も彼もが助けに来てくれた、やっとこいつらをぶちのめしてくれる……なんて思ってもいない。
彼らは知っている、現在だらしない表情をしている彼らは腐っても冒険者。しかもこの王都では市民達が視線を背ける荒くれ者達。喧嘩を売ったギルド達がどうなったのかよく知っている。
しかも今回彼らに売ったのはそ四人の田舎上がりの新人冒険者。何が出来るというのだ、勇敢さと無謀をはき違えた馬鹿な行動だ。
「まあさっきのを見たら少しは腕が立つだろうと思うけどさすがにこの人数を相手にしようと思っているのは馬鹿なんだろ」
「総勢三百名以上。よくこんなに集まったな」
「なんでもギルマスがあの方に会いに行くためだそうだ」
「あの方に……か」
「しかも大きな仕事らしく連れて行けるだけ連れて行ってそれ以外はここでお留守番だとさ」
「そんな時に攻めてくるなんて……あいつら運ないだろ」
「いやある意味運がいいかもよ。ここが手薄になる時を狙って攻めたら勝てるかもしれないんだから」
「その前に俺らがあいつらを見つけ出して袋たたきにすればいいだけの話だろ」
「だな。……で、どれくらいで捕まると思う?」
「俺は一時間に銀貨一枚」
「なら俺は三時間で銀貨三枚。イモってどこかに隠れたらさすがに見つけづらいだろ」
「じゃあ俺は三十分。俺らを敵に回したらまずいと思っている住民達に捕らえられ連れて来られるだろ」
「んじゃ僕は……ハイエナどもが今からボコボコに叩きのめされるのに金貨一万枚だね」
1銅貨=100円
1銀貨=1000円
1金貨=10,000円