6話
類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。奇人の仲間もまた奇人、ただこの奇人は目の前にいるただの馬鹿とは違う。前者の奇人はただ真っすぐに目標に突っ走る猪、だけど後者の奇人は――、
「賭けをしようぜ」
敵をジワジワと締め殺していく蛇だ。相手が知らないうちに自分のペースへと引き込んでいき気づいた時には罠に嵌められている。今回もいつ用意させたのかわからない誓約書をアルクから受け取り机の上に叩きつける。
「ギルド戦をしようぜ。俺らが勝ったらお前らのギルドをもらう。逆にお前らが勝ったら俺らはお前らの奴隷だ」
「正気かお前ら」
「正気も正気だ。俺らもそろそろ一軒家が欲しいと思っていたところなんだ。それにこんな事件が起こったんじゃ出て行くしかねーだろう」
「こっちのメリットが少なすぎる」
「営業妨害で憲兵に突き出してもいいんだぞ」
「……それごときで俺が捕まるとでも」
「まあそれじゃ弱いだろうな」
ヴィルグは当たり前のようにアルクから紙を受け取り、彼だけに見えるように紙をひらひらと見せびらかす。瞬間、男の表情はギョッとするものへと変わる。それは男にとって悪いことが書かれている紙を見せられたから――、
「お前……いつからだ」
だけじゃない。確かにそれもあるが男が目の前にいる男に驚愕しているのはその策略さだ。まるで予めこうなることを予想しているかのように色々と用意し一番効果的なタイミングでそれを出す。今男は悪魔と取引しているかのような底知れない何かを感じていた。
「いつからこうなることを予想していた」
「一体何のことだ」
「チィ……後悔するんじゃねーぞ」
これ以上話していたらさらに向こうのペースにハマってしまう。そう感じた男は荒っぽくヴィルグから紙を奪い取り、素早くサインをして店の外まで歩いていく。その後を屈強な男達が慌てながらついて行く。嵐がさった店の中には呆気が包まれる。
「何が何だかよくわからなかった」
それは当事者達にも同様で、リュートとマッケンユーの二人はゾロゾロと人を連れて去って行く男の背中を見ながら呆気に取られていた。
「大丈夫、僕もよくわからなかったから」
「お前はよく分かっとけよ、リーダーなんだろ」
「僕は現場に任せるリーダーなんだよ」
親指を立て白い歯を見せて何言ってんだこいつ。そう思いながら白い目でリュートのことを見ていたマッケンユーはその視線を他の三人に向ける。その三人は自分達のリーダーのことなど無視して今後のことを話し込んでいた。
(よくこんなんでやってられるな)
経営なんてものはよくわかっていないが彼も最低限には常識というものが備わっている。だからこそ運営なんてものは上がしっかりしていないと下がついていかないと知っている。
特に冒険者というものはそれが大半を占めており、上が嘗められたもんならすぐにでも頭はすり替わっており、逆に下が調子に乗っているようだったら締められる。
だというのに彼らのチームは馬鹿な神輿を賢い担ぎ手が懸命に支えている。その姿は優秀なものが引っ張っていくギルドマスターというものよりもまるでーー、
(何が王にはなりたくないだ。立派に王様やってるじゃねーかよ)
臣下がせっせと働きそれを団扇で扇がれて悠長に見ている王様のようだった。
(まあ王様は王様だけど馬鹿殿だけどな)