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3話

「そうキレんなよ、お里が知れるだろうが」


しかしその手は途中で止めれれてしまう。途中で来訪者がやって来たからだ。しかもその人物は自分達にまったく気付かれることなく店の入り口に立っていた。


男の表情には先ほどまでの余裕はもうどこにもなく振り返る速度がそれを物語っていた。そして振り返った先にいた男の正体に気づいてさらに驚く。


彼は今この王都で少しばかり名が通っているからだ。ソロでたった一年半でBランクまで駆け上がり、つい三ヶ月前にこの王都でも有数なクランに所属した。


それからさらにメキメキと頭角を表していき今では次期Sランク冒険者とまで噂されている逸材。そう彼の名は――、


「おいマヌケンヌ、またチャック閉め忘れてんぞ。派手な柄のパンツが見えてんぞ」


「も〜相変わらずおっちょこちょいなんだからマヌケンヌ君は」


「だから俺はマヌケンヌじゃなくってマッケンユーだって言ってんだろうが!」


猪突猛進でおっちょこちょい、誰が呼んだか聞かん坊ことマッケンユー。今も少しバツが悪そうに恥ずかしがりながら慌ててズボンのチャックを閉めている。その光景に思わず周りにいた男達もクスッと笑ってしまう――、


「何笑ってやがる」


それが命取りになるとも知らずに。直後、彼の近くにいた屈強な男の体が宙を舞い、さらに周りにいた男達を巻き込みながら店の中へと突き進んでいく。その光景は笑っていた男達を現実(命の危機)へと引き戻していく。


マッケンユーは殴りつけた拳を戻さず周りにいる男達に一睨みする。その瞳は微かに瞳孔が開いており睨まれた男達は蛇に睨まれたカエルの如く体を硬直させていた。


もし次に何かを言えば自分が殺されてしまう。空気はそれを物語っており誰も声を上げられない状況にあった。


「ま〜た派手にやらかしやがって」


「ホント落ち着きないよね」


「お前が言うな馬鹿」


と言うのにリュート達ときたらそれが当たり前かのようにいつもの調子で話しかけている。その言葉を聞いた男達は震え上がり、もはや怯えた小鹿のようにビクつきながらマッケンユーのことを見た。


見られたマッケンユーは先ほどとは打って変わって静かだ。黙ってリュート達のところへと歩いていき、


「だから俺はマッケンユーだと言ってるだろうが!」


何の躊躇いもなく拳を振り下ろす。彼は敵だろうが味方だろうが関係ない。自分を馬鹿にする奴には容赦なく噛みつく野犬なのだ。特にライバルと思っている相手には自然と力が入ってしまう。


「……相変わらず短気な男だ」


だがその拳は振り下ろされたリュートには当たらない。いつの間にか立ち上がり、これまたいつのまにか手に持っていた盾で攻撃を防いだものがいたからだ。


「エルドアン……」


こぼれるように口から出てきた言葉。忌々しく苦々しく放たれたそれはどことなく敬意も込められていた。まるでこのくらい出来て当然のような表情をしている。


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