第1話 時給 九百円
ロードバイクに乗る若い人が増えたらいいなあと思い、書いてみました。主役はJKですが、ストーリーは全世代対応。話数は多そうですが、文庫本(1頁650字程度)換算で130頁位。1日で充分読み切れてしまう分量です。軽い話なのでダウンヒルのようにすいーっと読めると思います。異世界やドラゴンやBL等が多いラノベとしては古典的な青春ストーリーですが、最後までお楽しみください。
◆麻影 琴 主人公
春水高校1年生で天然系。ゆりの影響でロードバイクを始める
◆羽田 ゆり(はねだ ゆり) 準主人公
春水高校1年生でロードバイクにおける琴の師匠
聡明でしっかりもの
◆ヨシノさん
カフェ・ワッフルで働く体育大卒の快活な女性
ロード乗りでカフェ・ワッフルは彼女の自宅
◆コウヘイさん
琴やゆりが自転車を購入するショップのメカニック
◆椎名さん(爺様)
琴の祖父で、ロードバイク乗り。滋賀県大津市在住
◆羽田大先輩
ゆりの祖父で、近隣では有名なロードバイク乗り
◆お小夜
春水高校で琴とゆりの同学年。
1年ではゆりと、2年以降は琴と同じクラス
◆マスター
ヨシノさんの父、カフェ・ワッフルのオーナー兼シェフ
ロードバイク乗りで羽田大先輩の後輩
◆五十鈴さん
ヨシノさんの大学の後輩。体育教師志望のスポーツウーマン
◆千歳ちゃん
五十鈴さんの妹で春水高校での琴やゆりの後輩
「琴、今月はウチが当番だからさ、広報誌配ってきてくれない?」
うららかな日曜の朝、ママから仕事がやって来た。
「広報誌って、市のやつ?」
「うんそう、全部のポストに入れてくれたらいいだけだよ」
「はーい」
新米女子高生の琴は、広報誌の束を抱えてマンションの共同玄関まで階段を降りて行った。ポストに順番に入れてゆくと一部余った。あれ?ウチのは取り置きしてるから、これは予備かな。琴は余った一部をチラチラめくりながら階段を上がりかけた。
「ん?」
最後のページの市のお知らせの二行記事『学生アルバイト募集!』が目に入ったのだ。市のアルバイトってあるんだ。
『サイクリングツアーのエイドステーションスタッフ急募! 高校生一名 ゴールデンウィーク期間 時給九百円』 とある。
時給九百円!朝から夕方までなら五千円以上になる。入学以来ボケーッとしていた琴の心を揺さぶる二行だった。
「ねえ、ママ。エイドステーションって何?」
「エイドステーション? 救急看護所じゃないの? どこにあるの?」
「広報に載ってるの。そこでのバイトが時給九百円だって。サイクリングツアーって書いてある」
「ふうーん。自転車でこけた人の手当てでもするのかな。」ママも記事を覗き込んだ。
「高校生って事は、大した仕事じゃなさそうだけど、市役所に聞いてみたら?」
琴は翌日昼休み、こっそり持ってきているスマホで市役所に電話してみた。
「ああ、広報に出したやつですね。自転車で市内を回るツアーをやるんですけど、途中の休憩所で飲み物とか渡してもらう係なんですよ」
要は、自転車ツアーの途中休憩所のテントの下で参加者に地元スイーツと飲み物を配るだけ。だけど雑用もあるし、屋外だから日焼けを嫌う女子高生が多くて一名足りないんだとか。なんだ、全然大丈夫じゃん。
「あの、それ応募していいですか?」
琴は即決した。どうせゴールデンウィークも暇だ。詳しい事は書類送るから見てとの事だった。