番外編④
「お、里美の彼氏くんじゃーん! 久しぶり元気?」
「ど、どーも」
里美の家に向かう途中、里美のお兄さんに出会った。
確か名前は陸川俊介さん。
前に一度しか会ったことはないが、気さくで面白そうな人だった。
あと相変わらず背がでけぇ。
「何? これから里美に会いにくるの?」
「そうですね。すいませんお邪魔します」
「いーよいーよ。いつでも寄ってらっしゃい見てらっしゃい」
「何を見るんですか……」
「そんなこと恥ずかしくて言えないな」
何を見せる気だ。
「里美と付き合ってどれくらい?」
「えーっと、8ヶ月ぐらいですかね」
「ながっ! めっちゃ長いじゃん!」
そんなに長いわけではないと思うんだけど……。
「大丈夫? 惰性で付き合ってない?」
「いやいやいや。変わらず今も俺が好きなんで大丈夫です」
「言うなぁ! ひゅーひゅー!」
ひゅーひゅーって……。
そうこうしている間に里美の家へと着いた。
何度か来ているが、未だにお兄さん以外に会った事はない。
たぶん里美が意図的に避けているんだろう。
普通家族がいないってなったらチャンスなのにな。
なんのって?
そんなこと言えるか!
「彼氏くん! ほらインターホン押して!」
「ええ……俊介さんの自宅じゃないんですか」
「鍵を忘れた。そして俺がインターホン押すと里美が怒る」
「どういう関係性ですか……」
仕方なく、俺はインターホンを押した。
数秒後、里美が応答した。
「あ、清正。待っててね今開けるから」
さらに数秒後、ガチャリとドアの鍵が開き、扉が開いた。
「清正いらっしゃ───」
「ただいまー」
「何でお兄ちゃんがいるの!?」
「俺の家でもあるからな!」
「最低!」
最低って……どんな挨拶?
「ほら、帰ってきた兄に言うことは?」
「お帰り下さい」
「惜しいな! 帰るところがここなんだよな!」
「もぉー! 私は今日清正しか呼んでないんだよ!?」
「だから俺の家でもあるんだって」
やっぱ兄妹だからか?
里美がここまでケンケン言うの珍しいな。
まぁ俺も愛と話すときとか何も気使わないしどこもこんなもんか。
「清正大丈夫? 変なことされなかった?」
「変なことってなんだよ。失礼しちゃうぜ」
「全然何も。面白いお兄さんじゃん」
「分かってんなー彼氏くん!」
「女の子取っ替え引っ替えしてるような人が面白いわけないでしょ」
あー……そういえばすげーモテるってなんか前に言ってたな。
顔も整ってるし性格も明るいし身長も高いし、そりゃモテるよな。
「この前来てた彼女さんのところにでも行ってくれば」
「アイツとはもう別れたよ」
「またぁー!? 前の人と別れてから2週間しか経ってないじゃない!」
「そう考えるとまじスゲーよなお前ら。俺なんか3ヶ月以上続いたことねーよ。彼女いない時もねーけど」
敵だ!
この人一部の男の敵!
危ねぇ……里美という存在がいなかったら俺はこの話題に耐えられなかった。
里美バリア強すぎる。
「はぁ…………もし刺される時は私達の見てないところでお願いね」
「刺されないお願いをしてくれよ」