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番外編③

「なぁこれ楽しい?」

「むしろ楽しくないと思いますか!?」

「めっちゃ思うよ……」


 昼休み現在、俺は空野と行動を共にしていた。

 理由は一つ、空野が桐生をストーキングしているのを見つけてしまったため、やめさせたのだ。

 空野はこれまでに撮ったであろう写真を眺めながらニヤニヤしていた。


「うわぁこんな不審な後輩やだわ」

「む、大事な後輩のことを不審だなんて呼ばないで下さいよ〜」

「俺の中での空野の認識、後輩と犯罪者の比率半々ぐらいだからな」

「加藤先輩だって好きな人の写真を持っていたいと思うでしょ?」

「別にそこまでじゃねーよ」

「とかいって〜待ち受けは陸川先輩なんじゃないですか〜?」

「いや、デフォルトのままだけど」


 俺は携帯のホーム画面を見せた。

 買った時から全くいじっておらず、地球がデカデカと映し出されたシンプルな画面だ。


「うわ……陸川先輩かわいそう」

「ど、どういう意味だコノヤロー」

「普通彼女の画像とかにしませんかこういうの。デフォルトのままって……」

「いいだろ別に」

「ホント加藤先輩のそういうドライなところが素敵ですよね」

「ぉお……お前褒めてんのかけなしてんのかどっちだよ」


 簡単に手のひらで踊らされるからやめれ。

 すぐ許しちゃうだろうが。


「とにかく盗撮はダメ、絶対。ノーモア桐生泥棒」

「そんな映画みたいな……。でも画像として残しておくことも時には素晴らしいこともあるんですよ?」

「ほう、例えば?」

「この前の帰り道、美咲さんを見かけた時のことなんですけど」


 そう言って空野は携帯から4枚の画像を見せてきた。

 1枚目には美咲ちゃんが一人でしゃがみ込んで何かに手を伸ばしている画像が映っていた。


「これは美咲さんが猫ちゃんを見つけて、呼びかけている写真です」

「ほう」


 美咲ちゃん動物好きなのか。

 またしても男子からの評価が上がりそうな状況だな。


「2枚目が猫ちゃんじゃなくて実は茶色のビニール袋だったことに気付いて固まってる美咲さんです」


 美咲ちゃーん!!

 なんという天然っぷり! もはやクラゲと間違えるウミガメと同じ!

 行き場を失った両手が悲しすぎるだろ!


「3枚目が誰かに見られていないかキョロキョロしているシーン」


 ああ…………容易に場面が想像できる。

 何事もなかったように立ち振る舞いたいんだろうなぁ。


「そして4枚目が私に見られているのに気が付いて、赤面しているところです」

「なんでこういうときだけバレんだよ! お前わざと見つかりに行ってるだろ!」


 普段はアサシンのように忍ぶくせに!


「だって可愛くないですか美咲さん! なんかもう見てるだけでキュンとしましたよ!」

「確かにホッコリして可愛いけども。本人の心はキュッとしてるだろうよ」

「やっぱり可愛い人って仕草や行動も可愛いんですよねぇ」


 満足そうに顔を緩ませる空野。

 要はジャーナリストみたいなもんかやってることは。


「こういう記録が残せるとしたら写真も悪くないと思いませんか?」

「こういうのならまぁ……許容できなくはないけど…………ん?」


 フォルダ内の美咲ちゃんの写真の近くを一瞬見て、すぐさま目が止まった。


「空野…………ちょっとそっちの写真……」

「え? あっ!」


 空野がすぐさま携帯を隠そうとしたのを俺は見逃さず、シュバっと携帯を取り上げた。


「ちょっ、加藤先輩! ダメ、ダメですって!」


 そこに写っていたのは、というかフォルダ内にあった写真のほぼ全て、桐生と俺が写っている写真で、全てカメラに目線が合っていない。


 つまりは盗撮。


「せ、先輩のえっち〜……あっ、嘘ですごめんなさい!」


 その後、空野に目の前で画像を全て消させた。

 マジ泣きしながら消していた。

 俺はその日からしばらく、後輩の女の子を泣かせていたやばい奴という噂が流れていた。

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