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俺はどうしても主人公にはなれない  作者: もぐのすけ
二年生 新入部員編
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59話 答え合わせ

「空野は俺とキヨが写っている写真を選び抜き、その中からさらにトリミングしてもおかしくない画像を選び抜いて、これらの写真を作った…………!」

「まわりくどいことを考えたものね。そこまでする必要があるのかしら?」

「ストーカーしている対象を逸らす目的もあると思うが、自らそれをアピールするのもおかしい。別に本来の目的がありそうなものだけどな…………」

「あっ」


 何かに気が付いたかのように、葵さんが声を漏らした。


「どうした?」

「いえ、何も…………。そうか、空野さんは元々私に取り入るつもりでこの写真をごにょごにょ…………」


 葵さんは自分の中で納得したかのように何かを呟いていたが、詳しくは聞き取れなかった。


 それはさておき、ここまで分かっていることを整理するか。

 まず空野が言った、入部希望について。

 空野は俺に痴漢に遭っているところを助けられ、偶然この学校で俺を見かけたことから入部希望したという話だが、これは全くの嘘。

 そもそも俺に痴漢から空野を助けた記憶はない。

 なぜかキヨと葵さんは俺なら似たようなことに多く遭遇しているはずだから忘れている可能性がある、みたいなことを言っていたが、いくらなんでも痴漢の場面に遭遇したことがあれば覚えている。


 話は逸れたが、空野が本当に好きなのはキヨ。

 そしてこれは中学時代から続いており、朝早くに登校したキヨと接触していることからストーカー行為も継続中。

 写真の件についても本来の目的はともかく、葵さんに渡すつもりで事前に作ってきたのは間違いない。


 判明してるのはこれぐらいか。


「気になるのは、なんで空野は俺に気があるフリをして入部してきたのかだな。最初から誰かをストーカーしているなんて言わないほうがいいと思うが」

「あら、簡単なことじゃない。気づいてなかったのね」


 葵さんが意外という表情をした。


「分かるのか?」

「空野さんはきっと、加藤君に彼女がいることを知っているのよ。これがもし普通に入部してきたただの後輩の女の子だったら、いくら加藤君でも陸川さんに罪悪感を感じて一歩引くはずだけど、あえて自分は颯に好意があると加藤君に分からせておけば、どれだけ近づいてアピールしても加藤君は『空野さんは桐生のことが好きだから別に大丈夫か』と言って警戒心を低く設定するはずよ。彼女持ちの加藤君に近いてイチャイチャするには、それが最もセーフティじゃないかしら」


 …………おみそれいったな。

 まさかそこまで空野の気持ちを読み取れるとは、男の俺じゃ考えも及ばなかった。

 要は俺を隠れ蓑にしていたわけだ。


「キヨに彼女がいることを知っているのなら、もちろんその相手が誰かも分かっているはずだよな?」

「そうでしょうね」


 思考が再び俺たちを沈黙させた。


 中学時代の空野は、キヨが陸川と付き合い始めたことで身を引いたとクマが話していた。

 そしておそらく、キヨが陸川に振られて(実際には振られていない)こっぴどく落ち込んで別れたことも知っているはず。

 自分の恋敵とも言えるそんな相手が再び自分の好きな相手と付き合っていると知ったとき、彼女は何を考えるのだろうか。


 復讐?

 例えば刃物で刺したりとか。

 いや、彼女の性格からして直接的な危険行為には及ばないだろう。

 空野はストーカー行為のせいからか変人の類に見られがちだが、それさえ除けば小動物のように小柄でおとなしく、気の利いた可愛らしい後輩だ。

 誰かを傷つけるような子には見えない。

 もしくは俺の見る目がないだけかもしれないが…………。


「…………葵さんなら、最終的に何を目的として動く?」


 この件に関して、俺よりも葵さんの方が答えに導く力を持っているはずだ。

 俺では空野の心の内を計り知れない。

 空野はキヨとどうなりたいのか。


「そうね…………私ならまず陸川さんと加藤君を不仲にさせようとするわね。」

「どうやって?」

「例えば何かしらの手段を用いて、自分の正体がバレないように陸川さんを脅して加藤君と連絡が取れないようにする。そうして加藤君の不安を煽っているところに、自分がまるで理解者のように近づき言葉巧みに篭絡させて、いつの間にか隣のポジションを奪い取る、というのが一例として考えられるわね」


 葵さんの具体的なその案に俺は思わず固まってしまった。

 まるですべてのピースが形よくハマっていくように、全ての事柄の点と点が線で繋がった。


「キヨは最近…………陸川と連絡が取れないと嘆いていた」

「そのまさかじゃない!」

「兆候は既にあったわけか…………葵さん、一つお願いがあるんだが」

「あなたのためなら、なんでもするわよ」

「いや、キヨのために頼む」


 俺は物的証拠を得るためにも、葵さんに空野を二重ストーカーするようにお願いした。

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