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俺はどうしても主人公にはなれない  作者: もぐのすけ
二年生 新入部員編
57/73

55話 考察

 翌日、俺は空野と初めて会った。

 写真の通り可愛いらしい後輩といった感じだったが、やはり俺の記憶に彼女と接触した覚えはない。

 また、彼女にもおかしな様子は見られなかった。


 だが、葵さんだけでなくキヨまでもが俺に空野について聞いてきた。


 二人は何をそこまで心配しているんだ?

 俺の知らないところで何をしてるんだ?


 葵さんが美咲に聞かれないようにしたのは、まだ調査中の段階だから話さないようにしたのか、美咲も当事者の一人なのか。

 もし前者であるのなら、美咲は直ぐに話を信じてしまうほど純粋だから話が拗れてしまう、という可能性を考慮してだろう。


 つまりは葵さんの気遣いだろうな。


 後者である場合は言わずもがな。

 当事者に話を聞かせるわけにはいかない、と。

 でも後者の可能性はほぼ0と言ってもいいだろう。

 今回の当事者はどうやら俺のようだからな。


 じゃあそもそも二人は空野の何を問題視しているのか。

 結局焦点はそこになる。


 二人は俺に空野を痴漢被害から助けたかと聞いてきた。

 それは空野からそう聞いたから、俺に確認しにきたのだろう。


 でも事実は違う。

 俺はそんな現場に遭遇したことはないし、空野を見たこともない。


 なぜ空野はそんな嘘をついたのか?

 いや、もしかしたら勘違いという線も捨て切れはしないから決めつけはよくない。

 人の記憶は必ずしも完璧じゃないからな。


 なら空野が嘘を付いたと仮定して考える。


 そもそも空野が天文部に入部した理由は、俺に会うためだと葵さんは言っていた。

 その理由は俺が空野を痴漢被害から助けたから。


 その理由が嘘である場合、空野がこの部活に入った本当の理由は何になるのか。

 …………俺に近づくため?

 いやバカか。

 何で自分でこんな恥ずかしいことを考えなきゃならねーんだ。

 そんな嘘なんぞつく必要がないだろ。


 …………入学初日からこの部活に入部希望をするということは、入学前から俺達の誰かのことを知っていた可能性は高いな。

 一番可能性が高いのは俺のことだろうが……美咲のところのバイト先か…………中学時代……?


 そうか……。

 空野の出身校はどこになるんだ。


 俺達の一個下にもし空野がいたんだとしたら。


 確認する必要があるな。


 俺達と同じ中学で、一個下の後輩と言えばーーーーーー。



「急に押しかけて悪いな」

「大丈夫です。桐生さんには兄がお世話になってますから」


 俺はキヨの家にいる妹の愛ちゃんに会いに来ていた。

 もし空野が俺達と同じ中学出身なら、同じ中学出身で同学年である愛ちゃんなら空野のことを知っているかとも思ったのだ。


「それにしても、まさか愛ちゃんも鷹山高校に通学することになるとはな」

「何だかんだいって、ウチから一番近いですからね。あ、別に兄がいるからとかそういうことではないので」

「そこまで聞いてないけどな」


 キヨの奴も良好な関係を作れているようだな。

 一時期はどうなるかと思ったが、なによりだ。


「そのうち、俺達で入学祝いをしてやるから待っててくれ」

「い、いーですよそんな。恥ずかしいですし……」

「そう言うなって。それでだな、今日愛ちゃんに聞きたかったのは、空野という子を知っているかどうかについてなんだ」

「空野……ですか?」

「愛ちゃんと同学年で、同じ中学にいたかもしれないんだ」

「空野…………あ〜いたような気がしますね。一度もクラスが被らなかったから……ちょっと待ってて下さい」


 そう言って愛ちゃんは2階に上がって自分の部屋へと戻っていった。

 俺達の中学は毎年クラスが多く、確か7クラスはあったはずだ。

 流石に一度も同じクラスに被ったことのない人までは覚えていないようだ。


 しばらくすると愛ちゃんが二階から降りてきた。


「卒業アルバム、ありました! 全クラスが載ってるので、もしかしたらこの中にいるかもしれません」

「なるほど」


 卒業アルバムか。

 それは名案だな。


 俺は愛ちゃんからアルバムを借りて、中をペラペラとめくっていった。

 1組…………2組…………3組…………4組…………。


「…………いた」


 5組だ。

 5組のところに空野日向が写っている。

 やはり空野は俺達と同じ出身校だったのか。


「この子ですか? あ〜確かに見たことは何回かありますね」

「彼女のことで何か知ってるか?」

「いやぁ……見たことあるだけで話したことはないですね…………あ、でもこの子と同じクラスにいる子と同じ部活だったので仲良いですよ?」

「本当か? そしたら連絡を取って会ってもらうことはお願いできるか?」

「全然大丈夫だと思います。桐生さんって、私達の学年でも有名でしたから、喜ぶと思いますよ」


 有名になるようなことなんてした覚えはないが、連絡を取ってもらえるのなら大助かりだ。

 その子に空野がどんな奴なのか聞ければ、真相にグッと近付ける気がするな。


「ちなみになんだが、今日俺が聞きにきたことはキヨには内緒にしておいてくれ」

「いいですけど……どうしてですか?」

「あいつよりも先に調べ物を終わらせて、驚かせたいのさ」

「競争かなんかですかね? 分かりました」

「ありがとう」

キヨと愛の入学当日の絡みも書きたいですね。

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