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39話 隙あらば対策

 天体観測当日、授業が終わると同時に桐生から部室に行こうと誘われ、ホッとした。

 ここ最近、部活に顔を出さなかったため、今回はドタキャンされるんじゃないかと思っていた。


 あ、ドタキャンしまくってたのは夏の俺か。


「天気もいいみたいだから、星が綺麗に見えるといいな」

「そうだな。少しばかり、俺も予習はしてきた」


 予習?

 どんな星がみえるのかだったり?


「そのせいで部活休んでたりとか?」


 俺が意地悪く聞いた。


「いや、それはまた別件だ」


 じゃあ何で休んでたんだよ、と聞こうとしてやめた。

 あまり他人の内情に関わりすぎると、ロクなことにはならない。

 他人の事をアレコレ詮索したがる人とかいるが、俺からしたら考えられないな。


 本当にその人の事を思って一歩踏み出すのなら良いと思うけど、ただの興味本位で心のパーソナルエリアに踏み込むものじゃない。

 それに、桐生は本当に困った時には自分から話しに来る。

 だから俺は、桐生が話しに来るまで待ってればいいんだ。



 ※



「やっほ! 二人とも、今から部室に行くの?」


 快活な挨拶と共に美咲ちゃんと出会った。

 彼女はいつもの如く、天使のような笑顔を振りまいていた。


「そうだよ。天条さんも?」

「うん! 楽しみだねぇ天体観測!」


 どうやら美咲ちゃんも部室に向かう途中だったみたいだ。


 美咲ちゃんの言葉に頷きながら3人で部室へと向かうと、海野先輩が既に部室で待機していた。

 望遠鏡を磨きながら、入ってきた俺達に対してクールな笑みを向けた。


「やぁ、待っていたよ」

「早いな葵さん」


 海野先輩は桐生の姿を見ると、花を咲かせたような笑顔になった。

 先程の凛とした姿はどこへ行ってしまったのだろうか。


「あら、今日はちゃんと来てくれたようね」

「少しばかり立て込んでいたんだ。来れなかったことは申し訳ないと思っているさ」


 そう言って桐生が頭を下げる。

 もちろん海野先輩も本気で嫌味を言っているわけではない。

 むしろ、安堵の言葉だろう。

 そのあたり、桐生も理解しているからこそ、すぐに頭を下げられる。


「は、颯くん。私も、待ってたんだよ!」

「ん? ああ、悪かった」


 美咲ちゃんが負けじと声を張る。

 対抗意識は未だ健在のようだ。


 こうなると、日帰りとはいえ前回の泊まりのような流れになりそうな気がするな。

 流石に、今回は俺に心のゆとりがあるから除け者にされようが、大したダメージは負わない。

 それでも多少は傷付くが…………。


 3人が、もし良い雰囲気になるようであれば、俺はひっそりと姿を消すことにしよう。

 そして、里美に電話して傷付いた心を癒してもらうんだ。


 うん、そうしよう。


 俺が一人で納得している頃、海野先輩と美咲ちゃんの火花が散り終わり、屋上へと向かう準備を始めていた。


「もう行くんですか? まだ4時ですよ?」

「冬は暗くなるのが早いもの。後1、2時間もすれば星が見えるようになるわよ」


 なるほどごもっとも。


「でも外は寒いですよ〜」


 美咲ちゃんが身を震わせるマネをした。

 カーディガンの萌え袖可愛い。


「桐生が長めのマフラーを持ってるよ」

「貸せばいいのか?」

「え、そしたら颯くんが風邪引いちゃうよ」

「一緒に入ればいいじゃん」


 俺の言葉に、桐生の眉がピクリと動いた。

 渋っている顔というよりも、困っている顔だ。


「そ、それは流石に悪いよ〜」


 と言いながらも、美咲ちゃんの顔はまんざらでもない。

 借りるよりも一緒に巻く方が悪いというのは、どういう意味だ。

 海野先輩に悪いという意味か。


「あら、大丈夫よ。こんなこともあろうかと、コートを2つ持ってきているもの」

「……そうですか」


 こんなことってどんなこと想像してたんだ……。

 桐生封じか?

 準備が良すぎるよ。

 美咲ちゃんが凹んでるじゃないか。


「防寒対策はバッチリか」

「寒いのは苦手なの」


 そう言いながら茶色のコートを着る海野先輩。

 海野先輩にはコートのような、大人びた服装がよく似合う。

 綺麗だ。

 美咲ちゃんとは、女性としての魅力のベクトルが違う。

 アイドルとモデルのような違いだな。


「それじゃあ行きましょうか」


 毎日手入れをしている望遠鏡を手にした海野先輩を筆頭に、俺達は屋上へと向かった。

40話は後ほど更新予定です。

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