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28話 お見舞い 準備編

 桐生が風邪を引いた。


 停学を食らった桐生だが、体調を崩して学校を休むというのは初めてのことだった。


『生きてるか?』

『熱は下がった。明日には学校行くつもりだ』

『おー良かったじゃん。待ってるぜ』

『(=゜ω゜)ノ』


 そう、桐生は意外と可愛い顔文字を使ってくるのだ。

 絶対使わなさそうに見えて使うというギャップ。


 とりあえずは大丈夫そうだな。

 特に心配する必要もなさそうだ。




「お見舞いに行こう」


 予想通りの展開である。

 桐生が部活に来ない理由を聞かれ、うっかり風邪だと言ったら海野先輩が食いついた。


「きっと苦しがっているに違いない」

「そうですよね! 私達が看病してあげないとですよね!」


 美咲ちゃんも食いついた。

 針だけでも魚はかかるんだなぁ。


「じゃあ……今日の部活動ははやてのお見舞いということで異論はないわね?」

「さんせー!」

「異論ありです!」

「それじゃあ行こうか」

「俺の意見は!?」

「異論があるか確認しただけよ」

「そんなベタな!」


 どちらにせよ俺が海野先輩を説き伏せることができるはずもなく、俺達は桐生の家へと向かった。


 ちなみに連絡はしてない。

 いわゆるサプライズというやつだ。


「そういえば前に桐生を殺す計画を練ってましたよね」

「キヨ急にどうしたの!?」

「あなたが何を言っているのか分からないわ」

「すいませんハショり過ぎました。手料理対決の結果ってどうなったんですか?」


 前に3人が俺のバイト先に来た時に、桐生の幼馴染の土屋つちや柚希ゆきを含めて手料理対決をするといって消えていったときのことだ。


「あれか〜。結局、葵さんが勝ったよ。ほとんど満場一致って感じだったけどね」

「私の勝ちというか…………貴方達2人が勝手に負けただけだと思うわよ」

「どういうことですか?」

「土屋さんが作った料理は独創的というか何というか…………最後の一手間が、ね」

「隠し味とか言ってマスタードとか入れてたもんね…………。颯の顔色が見たことない色になってたよ。絶対食べたくないよね」


 マスタードを何に入れたんだ。

 ホットドッグでないことは確かだが。


「美咲も人のこと言えないわよ」

「天条さんも何かあったんですか?」

「美咲が作ったもの…………終始煙が出ていたのよ」

「実験でもしてたのか!?」

「湯気だってば〜」

「いえ……湯気じゃなかったわ。機械が故障した時に出る煙と同じだったもの」

「たまたま失敗しただけだもん!」


 まさか美咲ちゃんが錬金術師だったとは……。

 これもギャップになるのか……?


「おっとここか」


 気付けば桐生の家の前まで来ていた。


 家というかマンションの一室だが。


「ここが颯の……」

「オートロックだから、こっからインターホン鳴らさないとダメなんですよね」

「オートロックって凄いねぇ…………」


「302……っと」


 ピーンポーン。


 ……………………ガチャ。


『はい?』

「こんにちわ加藤です」

『加藤君? 久しぶりね〜』

「桐生のお見舞いに来ました。他に2人います」

『あらあらありがとね〜。今開けるから入ってちょうだい』


 自動ドアが開き、エレベーターに乗って3階の桐生の家のインターホンを再度鳴らすと、桐生のお母さんが

 出てきた。


「は〜いいらっしゃ〜い…………って可愛い女の子が2人も〜。加藤君も隅に置けないじゃない」


 隅に置けないのはあなたの息子ですよ。


「2人とも桐生のお客さんですから」

「「こんにちわ」」

「どうぞ入って。颯の部屋は加藤君が分かるよね?」

「はい、大丈夫です」


 桐生のお母さんへの挨拶をそこそこに、入って左手にある桐生の部屋へと向かった。


「じゃあ2人とも、桐生が病人であるということをくれぐれも忘れないように」

「看病するために来たのだからもちろんよ」

「静かにすればいいんだよね!」


 心配すぎる……。

 この2人が桐生の部屋に入って興奮しないわけがない。


 俺がうまく立ち回らなきゃ。


 …………なんで俺が桐生の介護してるみたいになるんだ。


「じゃあ……」


 コンコン。


 ノックを2回。


「どうぞ」


 ガチャリ。


「おっす桐生! 見舞いに来ーーーーーー」


 ドアを開けるとベッドで寝ている桐生と、その隣に付き添うように座っている女の子が。


 というか幼馴染の土屋柚希だった。


「な、何であんた達がここに!?」

「………………葵さん、私達って何をお見舞いしに来たんでしたっけ」

「飛び蹴りかしら」

「違ぇよ!!」


 何この人達!

 何一つ言いつけ守れてねぇ!

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