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25話 ババ抜き 準備編

「トランプを持ってきたの」


 唐突に海野先輩が机の上にトランプを置いた。

 部室で特に何もせずにダラダラしていた俺達は、特に断ることもなく、自然に席に着いた。


「内容は?」

「ババ抜きでもしようかしら」

「いいですね。一番無難な奴ですもんね」

「ディーラーは俺にやらせてください」


 海野先輩からトランプを受け取った俺は、中学生の頃に密かに練習していた、トランプの山を2つに分けて交互に重ねていくショットガンシャッフルを行った。


 バララララララララバシャッッ!!


 散らばった。


 初心者あるあるだ。

 イキッたら失敗する奴。


「あ、すいませんすいません、ありがとうございます。あ、すいません」


 仕切り直し。


 バララララバシャッ!!


 さっきよりも早い段階で失敗した。


「加藤君、次その切り方でやったら散らばった数だけ指を切り落としてもらうわよ」


 ひええええええ!!!

 両手両足じゃ足らなくなる!


「…………それでは配ります」


 普通にシャッフルし、4つに配っていく。

 最初の手札が肝心だ。

 ここで如何にカードを減らすことができるかが肝になる。


「ちなみに罰ゲームはどうする?」

「あ、やっぱりあるんだねそういうの」

「なるべく重すぎないものがいいわね……」

「実現可能な奴ですね」

「じゃあ…………負けた奴が勝った3人の言うことを何でも1つ聞くこと」

「重い!」


 実質一番重い罰ゲームじゃねーか!

 よりにもよってそれを選択するなよ!


「「何でも…………」」


 おや、狩人ハントの目をしている2人が。

 獲物は同じなんでしょうな。


「え、とりあえず罰ゲームは桐生が言ったやつで決まり?」

「ええ」

「うん」


 …………これはある意味負けられない戦いになってしまった。

 2人は意地でも桐生を負かしにくるだろう。

 俺が負けたら誰得展開になってしまう。


 こうなったら俺は海野先輩か美咲ちゃんを負かして、合法的に非合法な事を…………!


「俺は残り7枚」

「私は6枚ね」

「私も葵さんに同じです」

「…………俺2枚! めっちゃ有利だぜ!」


 最速であがれるんじゃないか俺!?

 神は俺に微笑んでいる!


「じゃあ最初は…………加藤君が私の所から1枚とっていいわよ」

「いいんですか? じゃあすいません勝っちゃいますね」


 俺は動きを止めた。

 海野先輩が一枚だけを明らかに突出させている。

 これはまさか…………。


「葵さん、早速心理戦か。キヨはどうするよ」

「どうしたの? とっていいわよ」


 いや……これさぁ……。

 たぶんジョーカーだよね。

 心理戦って、桐生が思ってるような内容じゃないよね。


 これがジョーカーなのかどうか探る心理戦じゃなくて、海野先輩のこの行動の意味を考えろってことでしょ?

 こんなん桐生まで回せって言ってるようなものじゃん。


 ほら、神だけじゃなく海野先輩も微笑んでるよ。

 怖すぎ。


「う、うわー海野先輩ジョーカー持ってるってことじゃーん。えーどれ取ろうかなー迷うなー」

「迷う必要ある?」


 くっ!

 何だこのプレッシャー!

 こんなプレッシャーをかけられるトランプはアメリカ大統領ぐらいかと思ってた!


 だけどこんな横暴な要望が通っていいはずがない!

 いつの時代も、テロリストの要求が通ることはありえないんだ!


「ていっ!」

「ありがとう加藤君」


 はいジョーカー。

 ごっつぁんです。


「ジョーカー移動したのか。声出したらダメだろ」

「え〜。じゃあ私が引くかもしれないの?」

「くっ……どうぞ天条さん」


 むむむ……と天条さんがどれを取ろうか悩んでいる。

 個人的にはジョーカーを引いてくれるとありがたいんだが、どうだろうな。


 ……というより長いな。


「天条さん?」

「どれにしよう〜! どれもジョーカーな気がして怖いよ〜!」

「はは。どれ引いても確率は一緒なんだから勘にかけるしかないよ」

「どれか一目でジョーカーじゃないっていうのが分かればなぁ…………もしくは海野先輩みたいな心理戦でもやってくれたらなぁ…………」


 ブルータス!! お前もか!!


 この2人……!

 アイコンタクトだけでチームを組みやがった……!

 なんて陰湿かつ悪質な……!

 我が校のアイドルは腐敗していたというのか!

 BL的な意味ではなく!


「そ……そんなの分かったら勝負にならないじゃないかぁ〜」


 ススス……。


「あ! これかもしれない! これはジョーカーじゃないと思う! ビビッときた!」


 すまん桐生。

 俺個人としてもジョーカーが手元から離れるのはありがたいことなんだ。

 winーwinだったんだ。


「あれ!? ジョーカーだった!」

「だから言ったらダメだろ美咲」


 えらい棒読みですよ美咲ちゃん。

 アイドルでも女優向きではないな。


「よっと……。揃わないか」

「私の番ね…………。揃わないわ」


 進展ないな。

 だけど今度こそはカードを揃えて俺が最初に上がってやる!


「はい、加藤君」


 ……………………待ってくれ。

 カードが1枚突出してるんだけど。

 デジャヴなんだけど。


 嘘だろ?

 ジョーカー回ってきた?

 1ターン目みんなジョーカー引いたの?


 同じカードを渡し合うだけって、何この生産性のないゲーム。


「どうしたの? 加藤君の番よ」


 そして俺はジョーカーを引いた。

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