24.5話 マラソン大会 決着編
マラソン大会は1番目から俺達が走ることになっている。
俺達、主人公引き立て役連合は総勢20名の大所帯。
実に男子の約5分の1を占めている。
もしこれがサバイバルゲームであったなら、団合すぎて間違いなくクソゲーとなるだろう。
「キヨ、お前は今日何位ぐらいを……」
「おっと、俺に話しかけるんじゃねーぜ大将。今日の俺とお前は、敵同士だってことを忘れちゃいけねーぞボーイ」
「何だコイツ。情緒不安定か」
厳しめのツッコミ、ありがとうございます。
それでも俺は一度悪の道に落ちると決めた以上、引き下がるわけにはいかないんだよ。
俺達が1位をとり、桐生を主人公という立場から引きづり下ろしてやる。
「保健室行くか?」
「始まってもないのに不調を訴える奴がいるかよ。それよりも桐生! 今回お前はマラソン大会、本気で走るつもりか?」
「ん? ああ…………サボるつもりでいたが、美咲や葵さんに頑張るように言われちまったからなぁ……不本意だが、多少はやる気を出すさ」
ちっ!
何という鼻につくセリフ!
今が中世なら決闘を申し込んでるぞ。
しからば作戦その1、やる気を削ぐ作戦!
「俺は今回全然やる気ないんだわ。お前もサボろうぜ」
「人の話聞いてないのか。今回はやる気を出すと言っただろう」
失敗!
作戦その1失敗!
しからば作戦その2、飲み物に下剤!
「ところで喉乾かないか? ちょうどここにスポドリがあるわけなんだが……」
「いや、俺は別に」
「なら俺にくれよ加藤。ちょうど喉乾いてたんだ」
「あっ……」
グビグビグビ…………。
カランカラン……。
「ぐあああああああああああ腹がああああああああ!!」
長屋ああああああああああ!!!
何やってんだお前はあああああああ!!!
「急にどうしたんだアイツ……。急いでトイレに行ったな」
「き、緊張しすぎたんじゃねぇの?」
失敗!
作戦その2失敗!
「というわけで万策尽きたわけだが……」
「加藤、ロクな作戦してないなお前」
「それも2つだけて」
そもそも速水に桐生が勝てるわけないんだから、何かしようとしなくても正攻法で勝てるだろ。
「なら後は俺に任せとけ」
「おお、軍師!」
「伊達にメガネかけてないな!」
「いよっ! 伊達メガネ!」
「伊達の独眼竜!」
「だからガチメガネだっつーの! ガチの独眼竜だっつーの!」
「ガチの独眼竜って何だよ……」
そしてスタート直前。
俺達主人公引き立て役連合はひとかたまりになっていた。
軍師の作戦を実行するために、桐生の前を陣取る。
「それでは位置について…………よーい」
パンッ!
「連合諸君! スクラム!!」
スタートの合図と同時に軍師の合図があり、走り出した俺達は横に広がり、まるでラグビーのスクラムのように桐生の行く手を阻んだ。
その隙に陸上部の韋駄天、速水は先頭集団へと躍り出た。
「何だコレ」
「ふっふっふっ……桐生……見たまえこの団結力を……! 悪いが俺の作戦にハマったお前はもう……先頭を走ることは出来ないぞ!!」
「くらあああああああ!!! 何やってんだお前ら!!! 真面目に走らんかあああああ!!」
「ひえっ…………体育の剛林先生……」
「有馬!! 首謀者はお前か!! ちょっとこっち来い!!」
「ち、違うんです! これはみんなで考えたことで…………」
「有馬が考えました」
「僕らはこんなことやめようと言ったのですが……」
「やらないと僕たちのテストの点数をバラすぞと脅され……」
「これから真面目に走ります」
「有馬ああああ!!! 来い!! 説教だ!!!」
「お前らあああああああああ!!!」
ふう…………。
こうして悪は裁かれるのだ……。
その後、普通に走った俺達は順当の順位を取り、速水が見事1位を取った。
何もしなくても桐生に1位は取れないのだ。
しかし…………。
「凄いよ颯くん! 1位にはなれなかったけど、途中まで陸上部の速水君といい勝負してたんだもん! 2位おめでとう!」
「桐生君かっこいいー!」
「きゃー!」
そう。
ちゃっかり2位を取っていたのだ。
他の部活をやっている人を追い抜いて。
なんなんだこいつは。
化け物やでホンマ。
試合に勝って勝負に負けたとはこの事やで。
ちなみに俺は108人中68位だった。
パッとしねぇー。