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22話 桐生のクリスマス

 学校が終わると、キヨは誰よりも早く教室を出て行った。

 理由は知っている。

 アイツが付き合っている陸川と共に過ごすためだ。


 陸川と付き合ってからのアイツはどこか人が変わったように感じる。

 今までキヨは何かを手に入れるために躍起になっていて、空回りしていることが多かった。

 彼女で始まり、彼女で終わる。


 アイツが幸せなら俺も嬉しい限りだ。


「さて…………俺も行くとするか」


 俺は俺で別件がある。

 天文部の2人と出かける約束をしていた。

 元々、美咲と葵先輩の2人は別々に俺を遊びに誘ってきていたが、どちらかを選べば片方が除け者にされるため、その段階で俺は天文部で出掛けることを提案した。


 2人は俺の話を聞いて、ある程度すんなりとその提案を受け入れていた。

 もしかすれば、最初からこの流れになることを予想していたのかもしれない。


「あ! はやてくん!」

「待たせたな」

「私は今来たところだから構わないけれど、美咲は待ってる間色んな男の子から声をかけられていたわよ」

「ちょ、ちょっと葵さん! 言うようなことじゃないですよねそれ!」

「あら、美咲は人気があると言いたかったのだけど」

「違うよ颯くん! ちゃんと皆んなには用事があるからって断ったから!」

「クスクス」


 美咲は顔を真っ赤にしてわたわたと否定している。

 何をそんなに焦って否定することがあるのだろうか。

 人気があるのは役得だ。

 誇ってもいいことだと俺は思う。


「葵先輩、あんまり美咲をからかってやるなよ」

「ゴメンなさい。反応が面白いからつい……」

「もうっ! ヒドイですよ葵さん」


 とはいえ、美咲も本気で怒っているわけではない。

 これが彼女らのコミニュケーションの取り方なのだろう。


「あれ、そういえばキヨは?」

「あいつは今日は別行動だ。用事があるからな」

「こんな日に用事というのも、勘ぐってしまうわね」

「え〜キヨがですか〜? もしそうだったら流石に私も気付きますよ〜」


 そのまさかなわけなんだが。

 まぁわざわざ言う事でもあるまいし、その内2人も気が付くだろう。


「じゃあ、買い物に行くか」

「プレゼント交換のためだね?」

「何を買おうかしら」

「…………そうだ。一つ言い忘れていた。駅でもう1人合流する予定なんだが、構わないか?」

「もう1人? 全然いいよ!」

「そうね。プレゼント交換も人数が多い方が楽しいし」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「「「…………………………」」」


 三人で睨み合っている。

 やはりこの三人は相性が悪かったか。


「何でお二人がいるんですか?」

「あら、それはこっちのセリフだけれども」

「確か土屋さん……だよね」


 合流したもう1人とは、俺の幼馴染の土屋つちや柚希ゆきだ。

 美咲と葵先輩から連絡が来たのと同じタイミングで柚希からも連絡が来ていた。

 本当は柚希の連絡は断ろうとしていたが、電話をした際にあまりにも楽しそうに話を進めていたため、断るに断れなくなってしまった。

 勘弁してほしいものだ。


「颯! 私、他にひとがいるなんて聞いてないよ!」

「言ってないからな」

「2人きりかと思ったのに!」

「別に4人だろうが構わないだろ。人数が多い方が俺は楽しめると思う。そう思っただけだ」

「〜〜〜っ! 私は2人の方が楽しめゴニョゴニョ…………」


 何と言っているのかは聞き取れなかったが、不服に思っているのは間違いないだろう。

 やれやれ、柚希にも困らされたものだ。


「…………はぁ、土屋さん、私は全然構わないわよ。こんな日ですもの。ケンカ腰なんかじゃなくて、一緒に楽しみましょう」

「そうだよ! これからプレゼント交換とかする予定だから、土屋さんも一緒に見て回ろっ!」


 葵先輩と美咲は流石だと思う。

 やはりその状況に対応する力はずば抜けて高い。


「う〜…………」

「柚希、意地を張るところじゃない。いいから俺達についてこいよ」

「…………分かったわよ。でも2人共いいですか! 颯を喜ばすことができるのは私なんですから!」

「ふふ、それは負けてられないわね」

「よーしっ! 頑張るよー!」


 何の話をしているのやら。

 プレゼント交換ならランダムだから誰のものが手に渡るかは分からないというのに。


 こうして俺達は各々のプレゼントを探しに4人で行動した。

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