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14話 アルバイト

「お願いします!」


 アルバイト先のカフェで、俺は店長に対して90度に腰を折り、過去類を見ないほど綺麗な姿勢で頼み事をしていた。

 何故かって?

 昨日の案件のせいだよ。


「急にキッチンがやりたいって言われてもね〜加藤君やったことないでしょ?」

「覚えます! 今日一日で覚えます! というより今日だけでいいんです!」

「今日だけ!? そうは言っても中は島崎君と藤原さんがいるし、ホールの加藤君が外れると人がいなくなっちゃんだよ」

「じゃあ靴舐めます!」

「日本語通じてる!? 急にどうしたのホント! 別の日にまた中の仕事は教えてあげるからさ」

「結構です!」

「断られた!! おじさん、加藤君が何したいのか分からない! とりあえず今日はホールで頼むよ」


 ダメかクソー!

 裏で食べ物作ってりゃあいつらの前に顔出さずに済んだのに!

 友人が来るから接客やりたくないです、なんてダサいこと言いたくないし、そんな理由で配置換えにはならねーだろうしなぁ。

 うわー働きたくなーい!

 ニート宣言とかそういうことではなく!!



 ーーー30分後ーーー


 カランコロンカラン。

 キャッキャッウフフと魔王一行がご到着。

 桐生、美咲ちゃん、海野先輩の御三家だ。


「い……いらっしゃいませ〜……」

「あ! キヨだ! 本当に働いてる〜!」


 そりゃ働いてますよ。

 それを見にきたんでしょーが。


「あちらのお席に……」

「キヨ」

「何だよ」

「笑顔が足りない」


 ぐああああああああこのヤロォォォォ!!

 バイトしたことない奴が接客をかたるなや!!

 お前なんぞ苦笑いで充分じゃ!!


「あ……あちらの席におかけくださ〜い」

「加藤君、親の仇を前にしてるかのような顔になってるわよ」


 こいつぁ失礼。

 よく嘘がつけない素直な子って言われてますから。

 すぐ顔に出てしまうんです。


「ご注文が決まりましたらお伺いしますので」

「もう決まってる」

「ちっ」

「この店員、今舌打ちしたんだけど」

「しておりませんよ。ご注文をお伺いします」

「キヨのオススメで」

「はあ!?」

「あ、それいいね〜! 私もそれにする!」

「それじゃあ私も同じのにしようかしら」


 うぜええええええ!!

 思春期に絡んでくるオカンよりうぜええええええ!!

 メニューに書いてあるものから選ばんかいお前ら!


「か……かしこまりました〜。…………しばらくお待ち下さい」


 俺は引きつらせた笑顔を彼らに向けながら戻っていった。


「注文入りまーす」

「どうぞー」

「ブルーマウンテン3つ」

「はいよー」


 俺のおすすめって言ってたからな、一番高いコーヒー頼んでやったわ。

 精々会計時に驚くといいさ。

 はっはっは。


「あなた達は!?」


 おや?

 桐生達がいる所が騒がしく……。

 うわ、まじか!

 桐生の奴どんだけ引き寄せるんだよ!


 声を上げた人物の正体は、前に修羅場を作り出してくれた張本人、桐生の幼馴染の土屋つちや柚希ゆきであった。

 友達と2人で来ているようだったが、何でここでエンカウントするかな。


「お久しぶり、土屋さん」


 おお……揉めてるようには見えないけど、なんかバトってる。

 海野先輩が……なんか言って、土屋が…………言い返して、美咲ちゃんは…………あたふたしてる。

 近寄りたくね〜。

 桐生何してんだお前は。

 我関せずじゃなくてお前絡みの案件なんだぞ。


「加藤君」

「はい?」

「これ、5番さんにブルマン3つね」

「このタイミングで!?」

「え、なんかタイミング悪かった?」


 ええ……せっかく遠巻きに見てるだけだったのに、あんな渦中に飛び込みたくね〜。

 でも仕事だもんな。

 サッと置いてサッと帰ろう。

 よし、行くぜ。


「お待たせしました、ブルーマウンテン3つです」

「いいですよ! じゃあどっちがはやてを殺せるか勝負ですね!?」

「ええ、そうしましょ」


 何の話してんのおおおおおお!?

 何がどうなったらいてる人を殺す話になるんだよ!!

 アレか? 愛と憎しみは表裏一体ってか!?


「殺すなんて物騒な言い方やめてよ2人とも。料理対決で颯くんを唸らせることが出来るかでしょ?」

「颯の胃袋を掴んで殺すって意味では一緒だと思うけど」

「そんな物理的な意味じゃないでしょ!」


 あ……あーなるほど料理対決ね。

 急にデスゲーム始まるのかと思ってビビったわ俺。


「じゃあ早速今から私の家に行って勝負しましょう!」

「望むところよ」


 ええ……ちょっと待ってくれ。

 今コーヒー持って来たところなんだけど……。

 元々は俺の働いてる所を観察しに来たんじゃなかったんか。

 そりゃ来るなとは言ったけれども。


「悪いキヨ。もっとゆっくりしたかったんだが……」

「せめてコーヒーぐらいは飲んでってくれよ」

「そうだな」


 そうして3人+2人は店を後にした。

 サッと行ってサッと帰ったのは彼らのほうだった。


 べ、別に寂しいなんて思ってねーし!

 仲間外れにされたなんて思ってねーし!!

 羨ましいとは思いました!!!


「加藤君! 藤原さんが休憩に入ってる間、中の仕事教えてあげるよ!」

「遠慮します!」

「何で!?」

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[一言] 店長さん…(´・ω・`)
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