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異世界で黒猫君とマッタリ行きたい  作者: こみあ
第8章 ナンシー
201/406

78 反省会13:あゆみ3

「で、俺たちが庄屋の家に到着してみれば高位貴族は全員叩きのめされてて、ナンシー公はまるで抜け殻の様な状態で転がってた訳だ」


 キールさんはそう言って簡潔に話を締めくくった。それを受けてハビアさんが立ち上がって話し始める。


「あー、それはですね。俺ら、ネロさんと一緒に縛り上げた白服と黒服を庄屋の家に運び込んで族長の指示で見張ってたんすよ。そしたら俺らのところにそのピラピラ服の集団がやってきて突然俺たちに襲い掛かってきたんで、あれは『正当防衛』ってヤツっス」


 ハビアさんが頭を掻きながら続ける。


「しっかし思っていた以上に手ごたえがないんでびっくりしたっすよ。敵かどうかもよく分からなかったんでなるべく手加減したんスけど、なんかご老人は弱ってたのか一発で逝っちまって。本当に申し訳ないっス」

「いや、ハビア、それはお前のせいじゃない」


 謝罪したハビアさんをキールさんがすぐに首を振って否定した。


「ナンシー公はもうかなり前に死亡していたのだろう。残った死体を簡単に見分したが以前『ウイスキーの街』を襲った連中と同じ状態だった」


 キールさんを補足するようにエミールさんが話し始める。


「ええ。父は既に僕の事もキーロン陛下の事も分からない様子でした。今回の件を思い返せば一体いつからあの状態にされていたのか……」


 暗い顔で考えにふけるエミールさんを横目にアルディさんが先を続けた。


「とにかく庄屋の家でハビアさんと落ち合った我々は急いで縛り上げられていた司教たちの服を脱がして回ってたんです。ですから我々が神殿に着いた時には既にネロ君たちの戦闘はほぼ決着が着いていました」


 そう言って言葉を切ったアルディさんの後を引き取る様にキールさんが私に顔を向けた。


「それじゃああゆみ、結局なんであんなことになったのか説明してくれ」


 またも部屋にいた全員がこちらを振り向き、そして私はあの神殿で起きた出来事をもう一度みんなに説明し始めた。





 ──神殿前生垣の裏にて(あゆみの回想)──


 教会裏の庭園をぬけると神殿の手前には背の高いバラの生垣が目隠しに植えられ、その上に神殿の最頂部だけがのぞいていた。


「おい、卑怯だぞ!」


 生垣に近づいた所で少し先から黒猫君の声が響いてきたのが耳に入った。叫んでる内容はともかく黒猫君の元気な声に私はついホッと安堵のため息と共に頬が緩んでしまった。

 ああ、良かった。黒猫君は無事だったみたいだ。

 そのまま目隠しの役割をしているバラの垣根まで来たところで剣を片手に先導してくれていたヴィクさんがピタリと止まってしまった。

 どうしたのかと私が先を促そうとするとヴィクさんが人差し指を自分の唇に当てて私の顔を見た。私を抱えたシモンさんも私を覗き込んでフルフルと首を振る。

 何事かと私が見返すとシモンさんが垣根に空いた隙間まで進み出る。横からヴィクさんの指差す方をみて私は一瞬で凍り付いた。


「ヒッ!」


 勝手に口から漏れ出した声をすぐにヴィクさんの手が覆って抑えてくれる。


「あゆみ我慢して」


 ヴィクさんがギリギリ聞こえる程度の小声でそう呟くけど。

 私はまだ目の前の光景に目を奪われてまともな反応が返せなかった。


 隙間から見えたのは神殿のすぐ前で向かい合ってる二組の集団。

 手前で私たちに背を向けてるのが黒猫君とバッカス、それに数人の狼人族の人たち。


 それと向かい合って自分の身長程もある剣を構えてるのは沢山の獣人の頭を被った子どもたち。

 うんうん、違う。分かってる。あれは被ってるんじゃなくてすげ替えられちゃってるんだ……


 あの時嗅いだ腐臭が記憶から蘇ってくる。今は距離があるからまだ届かないはずなのに吐き気が胃をせり上がってきた。

 それを手に爪を立てて一生懸命我慢する。

 神殿の前に立ち並ぶ美しい石柱の前には数人の司教と一緒にガルマさんが立っていてその様子をつまらなそうに冷たい瞳で見つめていた。

 ガルマさんは一人制服の襟を掴んで戦闘の様子を静かに見守っている。その後ろに立っている二人の司教はやつれて顔色も悪く、彼らが持っている鎖には以前遠視で見た残りの子供たちが繋がれていた。

 

 ガルマさんが小さく「つぎ」っというだけで剣を構えて一列に座っている中から一人の獣人頭の子どもたちがフラリと立ち上がり、身体を陽炎の様に左右に揺らしてから黒猫君たちに一直線に突っ込んでくる。それはもう、盲目的に。

 真っ直ぐ前に構えられた剣はまるでその子と黒猫君の間に張った糸で引っ張ってるんじゃないかってくらい真っすぐに黒猫君に向いていて、獣人頭の子供はわき目もふらずに走ってくる。

 黒猫君はその剣をスッと横に避けてその子供の小さな体を躊躇いなく投げ飛ばした。飛ばされた身体はすごく嫌な音を立てて地面に激突し、ボトリと首が落ちた。ここからじゃよく見えないけど黒猫君の辛そうな舌打ちが聞こえた気がした。

 そんなことはお構いなしにガルマさんが次つぎと他の子を送り出す。

 バッカスたちも同様に投げ飛ばすんだけど、投げ飛ばされる子どもたちはみんなまるっきり受け身を取らない。だから簡単に頭から落ちたり先に落ちた手が変な方向に折れたりして……それでもしばらくガタガタと壊れたオモチャみたいに動いてから止まってしまう。

 もう既に死んでるって分かっててもそれ以上見てるのが辛くて私は目を反らしてしまった。

 でもそこにガルマさんの冷たい声が響いた。


「なぜ避けるんですか? 本当に貴方が先ほどの若い兵士が言っていたように神の使者なのでしたら助けてあげればよろしいでしょう。そんなに壊し続けていると次の人形を作らなければ足りなくなってしまうじゃないですか」


 使い捨ての様に次々と目の前に並ぶ獣人頭の子供たちを送っていたガルマさんが冷ややかな笑みを浮かべて後ろにいる子供たちを振り返る。ガルマさんの後ろに鎖で繋がれた子供たちがそれを聞いて一斉に怯え上がった。


「やめろ!」


 黒猫君の叫びに意地悪な笑顔でガルマさんが黒猫君に振り返る。


「それでは無抵抗で攻撃を受け入れてみますか? 神の使者なのならば剣が勝手に避けてくれるかもしれませんよ」

「くそっ!」


 文句を吐きながらも黒猫君は次に襲い掛かってきた子供の攻撃をさっき同様スッと横に避けたけどそれ以上手が出せない。避けられちゃった子供はまるで目標を見失ったようにしばらくそこに立ち止まってからバッカスに狙いを定めて走り出す。


「あゆみ駄目だ、君が飛び出していったらネロ殿が危ない」


 思わずシモンさんの腕の中で宙をもがいた私をシモンさんの腕が押さえつけ、ヴィクさんが私の耳元でそう呟く。言われてみればその通りでこの状況で私が出て行っても人質にでもされるのが落ちだった。

 そんな私を抱えたままシモンさんが少し後ろに下がって小声で話し始めた。


「あゆみさんよく聞いてください。我々が今出て行ってもネロさんたちのお役には立てません。たとえヴィクさんが一人戦闘に参加したとしても今の状況を劇的に変えることは出来ないでしょう。それよりもあちらを見てください」


 そう言ってシモンさんが指さしたのは生垣の一番左端。黒猫君たちが戦闘を行ってる広場をぐるっと回って丁度神殿の入り口辺りまで続いていた。


「あの垣根の裏を抜ければ戦闘中の司教たちには見られずに神殿に入れます。神殿内の宝玉を取り返せばあの司教の使っている魔術も止める事が出来るでしょう」


 シモンさんが黒猫君に気を取られそうになる私をひきつけるように早口にまくしたてた。


「ですがまたこちらも時間がないのです。あそこを見てください」


 そう言ってシモンさんが指さす先を見ると何故か今抜けてきた教会の周囲から間違いなく蒸気の様なものが立ち上がり始めていた。


「今は時間がありません。この戦闘はネロさんたちに任せて私たちにしか出来ない事を先に片付けましょう」


 そう言われても今正に目の前で繰り広げられている戦闘が気になってすぐには頷けない。でも私の了承など待たずに私を抱えたシモンさんはヴィクさんを促してそのまま垣根の左端へと走り始めた。



 シモンさんの言葉通り垣根の後ろには何とか人が一人通れる程度の隙間があって私達はガルマさん達に気づかれる事なく無事神殿の横まで抜けられてしまった。

 今そこで戦闘が起きてるのに。

 その気持ちがどうしても拭いきれない。

 こちら側からだと黒猫君やバッカスの様子がよく見える。みんなそこら中傷だらけで、黒猫君はなぜか真っ白の長ランたなびかせてて、みんな凄く辛そうな顔で攻撃してくる子供たちを見てて。

 そんな私の気持ちなど勘酌なしに私を抱えたシモンさんが音もたてずに石柱の裏を抜けて神殿に入った。すぐ後ろからヴィクさんが警戒しながら付いてきてくれてる。

 子供たちも全て引き出され誰もいなくなった神殿内は外の喧騒が嘘のようにひどく静まり返っていた。

 がらんとした空間の中央にポツンと取り残された石造りの大きな祭壇が目に入る。天辺と横が赤黒く染まったそれにギョッとして私はすぐに目を反らした。


「宝玉はあそこです」


 そんな私を他所に私を抱えたシモンさんが今まで見た事もない程興奮を宿した目でさっきの祭壇のすぐ後ろに続く階段の上を見あげてる。


「あそこにそれを取りに行くんですか?」

「はい。あゆみさんならばあの部屋に入る事も可能です」


 何とか祭壇を気にしない様にしながら問いかけた私にシモンさんが即答した。

 そのまま天辺の段まで軽々と私を抱えたままシモンさんが上り切る。ヴィクさんもすぐ後ろをついて来ていた。

 階段を上まで登りきるとそこは本当に私たち三人がやっと立っていられるほどの狭い踊り場があり、その先には天井にくっつく様な形で真っ暗な入り口が開いていた。

 正方形に壁を切り取ったかのようなその入り口の先は真っ暗で何も見えない。入り口自体は人が並んで二人余裕で通れるほどの幅があった。

 そこでシモンさんに降ろされた私は杖に掴まりながら二人を振り向くとヴィクさんが私の横を抜けた。

 当たり前のように先に部屋に入ろうとするヴィクさんの肩をシモンさんが掴んで引き留める。


「すみませんがこの先にはあゆみさんしか入れません」

「何をいってる?」


 怪訝そうにそう問いただしたヴィクさんはシモンさんが止める間もなくその入り口に足を踏み入れた。途端、ヴィクさんがまた目の前に立っている。

 あ。メリッサさんの魔法と一緒!

 そっか、ここは結界が張ってあるんだ。

 思いがけず同じ場所に飛び出したヴィクさんが狐につままれたような顔で私たちを見た。


「ヴィクさん、この先にあるのは宝玉だけです。いえ、宝玉しか(・・)入れない場所なのです。ですから通常宝玉と同等かそれ以上の魔力をお持ちの転移者の方々だけがこの中に入る資格をお持ちなのです」


 そこで言葉を切ったシモンさんは暫くの間私の顔をジッと見つめ、そして大きなため息を吐いた。


「あゆみさん。ここまで来て私にはまだもう一つお話していない事が残っています」


 シモンさんの言葉にヴィクさんの瞳が警戒の色を強める。

 それを受け止めてシモンさんは少し辛そうに、でも淡々と説明を始めた。


「この部屋はここのすべての施設に魔力を供給するための『動力庫』です。ここにはある一定以上の魔力が無い者が入る事は出来ません。そして中途半端に魔力がある者が入ると今度は本当に必要な量が溜まるまで出てくることが出来なくなります。ですからもしあゆみさんの魔力が転移者として十分に無かった場合、中に入る事は出来ても出てこれなくなる可能性が少なからずあります」


 そこで一瞬辛そうに顔を歪め、でもすぐにいつもの冷静な顔を取り繕ってシモンさんが続けた。


「でもあゆみさん、教会と神殿の爆発はあなたがここに入らなければ収まりません。今下で行われている凄惨な戦いも同じです。ただもしあゆみさんがこの中に入って宝玉を救い出す事が出来れば、間違いなくそのどちらも無事に収束するでしょう」

「そんな卑怯な!」


 シモンさんのすぐ横にいたヴィクさんが私の目の前でシモンさんにつかみかかった。


「ヴィクさん、止めて、今そんな時間ない!」


 ヴィクさんが怒るのも無理はないし、私だってシモンさんに言いたい事が幾つかあった。でもそれよりも私は黒猫君たちの事で頭がいっぱいだった。

 私の制止にヴィクさんが押さえきれない怒りを滲ませた瞳で私を振り向く。

 私はなんとかヴィクさんを安心させようと、大きく息を吸って力いっぱい口元を歪めて小さな微笑みをつくってみた。


「ヴィクさんごめんなさい。でも私中に入ってみる。黒猫君たちを放っておけないの」


 弱弱しいながらもしっかりとした私の言葉を聞いたヴィクさんは、小さく唸りながらも悔しそうな顔でシモンさんを掴むその手を離した。

 多分ヴィクさんなら分かってくれると思う。私が今何よりもしなければいけない事もしたい事も。

 だから私はヴィクさんをしっかりと見つめて先を続けた。


「待っててね、ヴィクさん。私、ちゃんと戻ってくるから」


 私はそれだけ言い置いてその入り口を抜けた。





「それで結局私は問題なく『動力庫』の中から宝玉を保護してその小部屋を出る事ができました。シモンさん曰くそれで直ぐに魔力の供給が止まったそうです。爆発が回避された事が分かった私たちは同じ神殿の下の階の奥に治療院があるのを発見しました。そこでシモンさんがまだ息のあった数人をすぐさまその場で治療しました」


 私が早口にそう告げるとキールさんが少し厳しい顔で私とシモンさんを見比べた。だけど私はそのまま先を続ける。


「それが終わって、ヴィクさんとシモンさんと一緒に様子を見に外に出たんです。そこでキールさん達と黒猫君たちがそろってシモンさん達を取り押さえてて。その目の前で獣人頭の子供たちがみんなバラバラになっちゃってて。私あまりの光景に完全に固まっちゃって。何も考えられないで。そのままそこで立ち止まっちゃって」


 緊張と恐怖で私の言葉がそこで途切れた。

 

「あの時、ガルマを取り押さえてたのは俺だ。あいつらの長ランを脱がせて丁度気が抜けた瞬間だった。あれは俺の責任だ」


 私を慰めるかのように黒猫君が暗い声でそう言ったけど。

 私はあの時自分の目の前で繰り広げられた光景を思い出した。


 私が部屋に入れば事態は収束する──


 そう言ったシモンさんの言葉を私は半分しか理解していなかった。

 私が部屋に入った事であの部屋からの魔力の供給が止まったとシモンさんは言っていた。

 私はそれがこれ以上獣人頭の子供たちがガルマさんに操られなくなるって事だと勝手に思い込んでいた。

 でも実際には。

 魔力の供給が止まった結果、獣人頭の子供たちは全てバラバラに解体されてしまっていた。

 あの子たちの首を繋げていたのはちゃんとした復元魔法じゃなくて、ここの魔力に頼った中途半端な物だったらしい。一度死んだ生き物の身体を使った復元魔法は非常に魔力がいるってそう言えばテリースさんも以前言っていた。元々両方が死んだ者同士をくっつけるなんて復元魔法では不可能なはずなのだそうだ。

 それを目の当たりにした私は突き付けられた現実の余りのひどさにその場で完全に凍り付いた。


 その時、私のその様子を目にして一瞬ひるんだ黒猫君の隙をついて、黒猫君に後ろ手にされながらもこちらを睨んでいたガルマさんが突然動いたのが目の端に映った。

 途端、黒猫君の身体が飛び上がって後ろに倒れた。

 そのまま私に真っすぐ走ってきたガルマさんはその手に何も持ってなかったのに。

 動けない私の目の前に、ヴィクさんが飛び込んで剣をかまえて。

 それを見たガルマさんが手を振り上げた。

 途端、その手から何か飛び出して。


「ヴィクさん!!!」


 近距離でガルマさんとぶつかったヴィクさんの身体が私の目の前でまるで映画の様にゆっくりと横に崩れ落ちた。

 私よりも大きく頑丈なヴィクさんの身体が地面にぶつかって緩く波打つ。

 ヴィクさんが倒れて、動かない、動かない、動かない──


「嫌ぁ! 絶対に嫌ぁあああ!」


 目の横ではその場で膝をついて同様に倒れ込んだガルマさんが見えていた。その胸には突き抜けたヴィクさんの剣が突き出してる。

 真っ赤な血が周りに流れ出してたけど、私の目はヴィクさんしか見えてなかった。

 私はほとんど倒れ込む勢いで目の前のヴィクさんに飛びついた。

 ヴィクさんの身体を触った自分の手が何かヌルリと滑って。

 広げてみるとそこにべったりと赤い血がついてて。

 そんなに出てっちゃったら駄目、って無茶な事考えながら。

 一体どこからこんなに出てるのと彼方此方を触って。

 恐怖で回らない頭のせいで、ヴィクさんの右手が無くなってるのに気づくのに暫くかかったけどあれは多分実はほんの数十秒。

 そこからドクドクと絶え間なく血が吹き出してて。

 ヴィクさんの目が何も見てなくて。

 ヴィクさんの唇が開いてて。

 ヴィクさんをゆすってもヴィクさんが答えてくれなくて。

 ヴィクさんの腕を持つ私の手がガタガタ震えて、えっと、止血しなくちゃって思うんだけど全然できなくて。


「あゆみさんどいてください」


 私は走り寄ったシモンさんにひょいっと横に押しやられた。


「脈はまだあります。誰かすぐに止血の用意を! 紐を……そこの狼人族のあなた、その鎧の紐を下さい。失血が多すぎます。魔力提供を……」

「私がします!」


 シモンさんの声は私には魔法みたいに聞こえた。

 ヴィクさんを救える。

 パット君の時みたいに。

 ヴィクさんが生きてくれるかもしれない。

 私がヴィクさんを救えるかもしれない。

 私はそんな単純な思い一つで飛びついて、ヴィクさんの残った片手を掴んで思いっきり魔力を流しだした。


「あゆみ止めろ! そんなことして何が起きるか──」


 黒猫君が止める声はよく聞こえなかった。

 私は自分ができる事が見つかって。

 もうそれしか考えてなかった。

 まさか私がヴィクさんに魔力を送るだけでこんな事になるなんて。




「こんな事になるなんて本当に思っても見なかったんです」


 私はそう言って話を締めくくった。


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