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魔剣使われに告ぐ   作者: 杉下 徹
2.撹拌と罅
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2-10

 基本的に、剣使の戦闘に必要なものは少ない。超常の剣が一本、あとは着の身着のままといった軽装が普通だ。超常の剣の中には、鎧の類で防げるようなものは少なく、それならば着心地を優先して集中力を少しでも高めようという剣使が多い。

 とは言え、純粋な剣使ではない俺はどうしても、戦闘の際に投剣や煙玉といった小細工を用意する癖が抜けない。そうでなくとも遠征のための身支度は必要であり、買い出しはやはり避けては通れなかった。

「せめてクーリアがいれば……」

 両手に荷物を掲げながら、ふと愚痴が零れる。

 決して夜も更けてからの外出が心細いとか、荷物持ちをさせるつもりだったとかいうわけではなく、単純に二人の方が買い物も楽しかっただろうというだけの事。ナナロ達が明日のどの時間に出発するかは聞かされていないため、間に合わなくてはいけないとクーリアには別途参加の報告に向かってもらっていた。

「……ここも、ひさしぶりだな」

 だからというわけではないが、というよりも自分でも何故なのかは良くわかっていない内に、足が勝手に本来必要のない寄り道を辿っていた。

 ルークス剣術場。

 かつては栄華を誇ったという剣士養成機関であり、剣士の衰退と共に抜け殻と化していった成れの果て。俺の知る限り、ここはそういった場所で。そして今も、剣術場はまったく俺の記憶通りの様相を呈していた。

「シモン……?」

 月明かりに照らされ、複雑な表情を浮かべた少女の顔が明確に視界に映る。

 サラ・ケトラトス。

 俺の知る剣術場の風景に、その少女の姿は決して欠かせないものだった。だから、今こうして彼女がこの場所にいた事に、それほど驚きはなかった。

「どうして、ここに?」

「理由が……俺にもよくわからない」

 理由がないと来てはいけないのか、と言いかけて言葉を濁す。それでは誤解を生む。サラの表情を一瞬だけ晴れさせ、すぐにそれ以上に曇らせてしまう。

「そう。まぁ、理由はなんでもいいわ」

 投擲。一直線に放られたそれを、緩やかに荷物を落としながら掴む。

「ここに来たからには、相手してもらうから」

 俺に放ったものと同じ模擬剣を構え、サラは目を細めた。


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