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prologue
「どうでもいいんだよ、そんな事」
優先順位。
自分の中で再優先の事柄はすでに決まっていて。それに比べれば、例え他者にとってそれがどれほど重要であろうと、そんなものは欠片ほどの意味も持たない。
「どうでもいい? 君は、あれがどれほどの『剣』だと!」
相対的価値。
「同じ事を何度も言わせるなって」
つまり、無意味だ。
「力だとか価値だとか、そういうのは比べて競うためのもので、それだけだ」
魔剣『不可断』を緩く中段に構える。
それは、意思表示。
「来てみろよ、略奪者。ご自慢の剣の力、今使わないでいつ使うんだ」
「……くっ。いいさ、それなら僕だって、君の事などどうでも――」
そして、見せかけの詐欺。
今の俺には、剣を振るう必要なんてものはないのだから。
「じゃあな、聖剣使い」
崩れ落ちる敵対者の身体を視界から消し、記憶からも消して前に進む。
全力を尽くした戦いも、剣士の誇りも、所詮は戯れ言。
たった一つの再優先の前には、一瞥する価値もない事だ。