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第92話ナヲユキとケントの過去編6

 俺とショウはぶつかった。俺達はまず、お互いの魔導器を解放した。もちろん、それは相手を待つなんていうゆとりはない。一瞬のうちに長たらしい解号を唱えなければならない。向こうよりも遅れてしまうとこの勝負負けれしまう恐れがある。解放にも一安心する暇がない。


 「豊かな恵みの大地、死者は生まれることなく私は希望に溢れている水の魂よ魔導器『アトランティスの盾』解放!」


 「風の聖霊よ、わが身を救う神風を巻き起こせ、夷敵を祓わんとす神聖なる力をわが身に与えたまえ魔導器『セイクリッド・ウイング』招来!」


 俺は魔導器の解号により腰に今まで刺さっていた剣を魔力の力による盾に変えてその場に出す。

 一方のショウの方も先ほどまでは剣を持っていたが、魔導器の解号を唱えたことにより魔力を大幅に解放したことで、剣状にとどめていたその形状を大きな扇にへと変える。

 そう、あれがショウの魔導器『セイクリッド・ウイング』だ。

 俺は、今まであの魔導器を何回も見てきたことがある。俺とショウは仲が良かったのでよく一緒に訓練ということで自主的に戦ったこともある。数えている限り50戦やった中で俺の成績は、20勝21敗9引き分けとなっている。わずかにショウには負けているという戦績だ。これはかなりまずいかもしれない。

 この戦いには何としても勝たなければならない。だが、お互いの戦略を知り尽くしている身としてはこの上なくやり辛い。まったく、こういう時に本当に模擬演習をしたことがあだとなるとつくづく思うよ。


 「どうした、よほど後悔しているような顔をしているぞ、ケント?」


 「ああ、今までの模擬演習が仇になってしまったとつくづく思ってな」


 「そうか……ならばその後悔が正しいものだと思い知らせてやる」


 ショウはその言葉を言い終えるとすぐに魔導器である扇を大きく振りかざす。

 こ、これは。

 俺には、この後ショウがどうするのかわかった。今までの戦いの経験から考えるとショウはこの後神風を起こす。

 ショウの魔導器『セイクリッド・ウイング』は帝国建国神話において風の聖霊ウーヌの神聖なる力を宿したといわれる魔導器である。その逸話は本当かウソかどうかは定かではないが、魔導器『セイクリッド・ウイング』の力はとてつもなく強力だ。中でも神風と呼ばれる技は扇を大きく振りかざすことによって根が地面にしっかりと張っている大木さえも吹っ飛ばしてしまうほどの威力を持っている。昔、実際に演習していた時に近くに生えていた大木が吹っ飛んだことを今でも思い出してしまう。

 ……ただ、この状況ではあまり思い出したくはないようなことであるが。


「どうした? 俺の魔導器を見て恐れの退いたか?」


 ショウは俺に対して邪悪な笑みを漏らして問いかける。

 俺は、ショウに対して恐れたわけではない。だが、考えていた時に無意識にも恐ろしさというのを顔に出してしまっていたのであろう。だから、俺はショウの言葉を強く否定する。


 「ははは、そんなわけないだろ。俺は今、どうやっておまえを倒すか必死に考えていたんだよ」


 「なるほど、面白いことを言うようになったな、ケント。お前が俺を倒す? そんなこと果たしてできると思うのかな?」


 「やってみればわかるさ」


 「そうだな」


 ショウのその言葉が最後であり、かつ合図であった。

 その言葉を言い終えると俺達は一瞬で距離を縮めて盾と扇をお互いにぶつけ合う。


 カーン


 甲高い金属音だけが響き渡る。

 俺の盾は普段は金属として所持しているが、魔導器としての能力を解放すると水属性の魔力によってコーチィングされるので実物としては金属のような甲高い音は本来ならばしない。しかし、水というのは意外と水圧が強いとものすごく固いものになりうる。俺の魔導器『アトランティスの盾』は、水の水圧を自由自在に操ることによって防御力の調整をすることができる。

 今の俺はショウの扇の力に合わせた水圧に調整をして戦っている。


 「はあああああ! エアロッ!」


 ショウは、俺のそんな戦法を知っているうえで全力で扇を振りかざす。

 

 「ぐっ」


 ショウは扇を直接攻撃の武器から風の技を発動するための魔導器としての使い方に変える。

 扇を大きく振りかざすときの風圧によって大きな風が起こる。しかも、その風はただの風ではない。一見普通の風のように見えるがその細部には風の中にさらに別の風が無数に存在している。言ってみれば、無数の風をさらにまとう風があるということだ。しかも、外側の風と中側の風にはそれぞれ別の目的がある。外側の風は実際はどうであるかわからないが、わかりやすく言うとすればとがったもので、中側の風は爆弾のようなものすごい爆発力を所持している。外側が相手の防御を破り、そして中側の風が相手に届くと爆発するという仕組みだ。

 ものすごい嫌な技である。

 直接攻撃とは違って風から自分を守ることはほぼ不可能といってもいいだろう。

 さて、どうしたものか。


 「mermaidsong」


 水のバリアを作り出す。

 しかし、このバリアが外側から破壊されていくことは想定しておかないといけない。と、なれば次にとる行動は必然的に防御力を上げるか、回避するかのどちらしかない。

 そして、俺がとる行動はどちらかというと……どちらでもない。

 まだ、ショウには隠している能力はある。この能力は今までに一度も人には見せたことはない。だから、ショウはもちろんナヲユキ、マリリン、リューホ団長すら知らないものだ。

 俺は、もうバリアが壊れるという瞬間にこの魔導器『アトランティスの盾』のもう一つの姿にして真の姿の名前を叫ぶ。


 「変形せよポセイドンの槍!」


 バリアは俺の言葉と同時に壊れた。

 俺は、新たに手にした槍を大きく風に向かって振りかざす」


 「海神の怒り!」


 ドッガーンという大きな音を起こして大きな煙が俺達の周りを覆った。

 風は一瞬にして消え去った。いや、消えたというよりは真っ二つに切ったというのが正しい言葉である。


 「なっ!? こ、これは一体!?」


 ショウは状況が全く理解することができずに困惑しているようであった。

 さあ、状況は変わった。動揺しているうちに俺は戦いを済ませようと容赦なくショウの方へと槍を右にして近づいたのであった。

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