第9話ケント編1
いよいよ新しい内容となっていきます。
「……というわけでヨシキは殺されてしまったの」
王女様はヨシキのことを話してくれた。
そうだったのか。しっかし、あのヨシキが皇帝の殺害計画を企てるなど考えることができない。おそらく、誰かにはめられたに違いない。
「王女様。ヨシキは単なるバカです」
王女様が落ち込んでいるので俺はどうにかして王女様を元気づけようと試みる。
「あっ! それなら私も十分わかっているよ。でも、ヨシキの暗殺の原因がすべてあの魔術大戦であると思うの。そこにすべての真相がある。そう考えると私も皇室の人間として責任をどうしても感じてしまうんだよ」
魔術大戦
かつて起きた戦争のことだ。この時、帝国は魔術の術式を内装することで魔術を自由に扱うことができる魔導器を開発していた。しかし、当時の技術力では魔導器の威力もそして作ることができる数も限られていた。帝国はより強い魔導器を多く手に入れるために周辺国が所持している魔導器を狙い、しんりょくを始めた。それに対抗した周辺国は1国1国は小国であったが互いに同盟し、その同盟は発展的解消をし「連合国」を設立し、戦い激しさを増した。
その結果、大地は赤く染まり、いつまでもいつまでも決着がつくようなことはなかった。
しかし、王女様の父である皇帝が病に倒れたことにより休戦条約が成立し、そして4年の時がたったのが現状だ。
ただ、魔術大戦についてはどうも教育的にもぼやかしが入っていて実態というのがわかっていない。それが、俺の感想である。
「じゃあ、魔術大戦って帝国の中のだれが決めて始めたんですか?」
「うん。そもそも帝国から始めたといわれているけど、当時の帝国の筆頭大臣はヨシキであったけど、ヨシキは戦争反対派。となると、ほかに戦争を始めた張本人がいるとなるの。お父様も本来戦争は好きではなかったからね。その真の黒幕が最も罪は重いはずよ」
王女様の手が震えている。当時の自分が何もできなかったことがよほど悔しかったのだろう。自分の周りの人間が戦争反対派だったのに誰かによって戦争に巻き込まれたことがよほど許せないのだろう。
「で、ヨシキは戦争反対派の急先鋒だったの。だから、戦争が負けの方向に進んでいくなか、余計なことをさせたくなかった黒幕はヨシキとリキチャンという2人の大臣を策略にはめて殺したんだと思う。私は彼のダメさを知っていたからね。彼がお父様を殺そうなど考えるなんてありえないんだけど……」
なろほど、そういえば俺が騎士団にいたころはヨシキが大臣だったけどあれからだいぶ経っているからな。
道理で今の大臣のことを知らなかったわけだ。
「それで、ヨシキの後任になった大臣たちは私を皇帝にしようとしているのはさっき言ったとおりだよ。私はね、皇帝に何かにはなりたくはないの。この帝国から逃げ出したい。だから、私と一緒に旅をしてくれないかな? 私1人じゃ、無理だと思う。でも、あなたたちがいればどうにかなると思うの。それじゃあ、ダメかな?」
「お、王女様」
王女様がそんなに大変だったなんて知らなかった、俺は、王女様のことを助けたい。王女様を帝国から逃げ出して連合国に行けば……いや、その前に旅に出ているといわれている王女様の兄であるナオト様を見つけなければ。俺は……
俺は王女様のことを助けたい。覚悟はできている。
「王女様、俺達はあなたと一緒に旅に出る覚悟はできています。あなたが本当によろしいというのであれば、たとえ火の中水の中嵐の中でもついていきます」
「俺達!? それって俺も行くのかよっ!」
俺が格好良く決めたというのにユーイチの奴がいちゃもんをつけ声を荒げる。
「ユーイチ、お前は一緒に行きたくはないのか?」
俺はその反論いちゃもんに対して質問をする。
で、ユーイチはというと、
「行きたくないんじゃない。だけど、俺の許可なく話が進んでいくことに納得がいかなかっただけだしっ」
ユーイチがいちゃもんをつけた理由は何となく理解していた。俺に食って掛かりたかっただけの話だ。
「じゃあ、もちろん行くよな。ユーイチも」
「もっちろん」
「じゃあ、決まりだな」
かくして、俺とユーイチは王女様を守りながら帝国からの脱出をする旅を始めることとなった。
そうなると、しばらくの間は下町に帰ってくることはできないな。いや、最悪の場合は帰ってこられないことも。よくよく考えてみると王女様の国外逃亡を手助けするとか国家反逆罪の一種じゃないか。これは、覚悟が本当に必要なことだ。出発する前にしっかりお隣の人、パン屋のおばさん、常連の皆さんに挨拶をしておかないとない。いや、今後のことを考えておくと迷惑になるからそれはやめたほうがいいか。それに時間もない。残念な話だがあきらめないといけないのか。
でも、今までありがとう。
せめてそんな風の感謝の言葉だけでも伝えておきたかった。
俺は、感謝の気持ちで胸の中がいっぱいになりつつも感傷に浸る暇はなかった。何でも屋を閉じる準備を着々とつづけた。そして、同時に旅の準備も始めた。
しかし、いつになったら戦闘に入れるのだろうか・・・