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第81話合流編9

 ナヲユキとコーキは動いた。最初に動いたのはコーキの方であった。コーキは首から吊り下げていた鈴に手を当てて何か言い始めた。それを、俺が魔導器の解放の解号であるということを理解するには少しの時間を有した。


 「相手の心を惑わし偽りの現実を見せつける相手の心を破壊し尽くし自らは偽りの勝利をし続ける、私の魔導器よ鳴れ魔導器『テレバスター』警鐘!」


 鈴が不気味な紫の色を発した。

 あれがコーキの魔導器『テレバスター』。ただ、ナヲユキの方は驚いている仕草を出していなかった。こちらからはナヲユキは俺に背を向けている状況であるためどんな表情をしているのかよく見ることができないので分からないが、人間は動揺した際には体が動く。しかし、ナヲユキは微動だしなかった。だから、驚いていないのだろう。俺は勝手にそう判断した。


 「……またその小作な魔導器か」


 ナヲユキは発した。

 小作な魔導器。その言葉から俺の考えは確信に変わった。やはり、ナヲユキはコーキの魔導器を知っている。


 「小作か。ただ、これが私の性格だ。この能力こそ私自身である。それもお前も理解しているだろう」


 「ふん。知るかよ。俺は確かに前にお前に散々弄ばれたからな。それがお前の性格だということぐらいは理解しているぜ。だが、それが何だ。今度こそお前を正々堂々と打ち破ってやる」


 「そうか、ならばやってみろ」


 ナヲユキとコーキは言葉を交わす。


 「言われなくてもやってやるぜ! 凍てつく鼓動よ、我の呼び声に従い我を仇なす敵を永却に鎮めよ……魔導器『フロストヘイル』起動っ!」


 ナヲユキは魔導器を解放した。ナヲユキの魔導器はその手に握られていた剣であった。それはとても美しい剣であった。


 「それがお前の魔導器か。あの時はお前とは直接戦わなかったからな。先手必勝とはいいものだ」


 「先手必勝、か。なるほど、だからもうすでに俺に対してあの催眠能力を発動していたのか」


 催眠能力?

 俺はナヲユキのその言葉の意味が分からなかった。何が催眠能力なんだ。俺はコーキの方を向く。すると、そこに先ほどまでいたはずのコーキの姿が一瞬にして霧のように消え去った。

 

 「き、消えた!?」


 コーキがいきなり消えた。どういうことだ。あいつはどこに行ったんだ。


 「ふん。なるほど、やはりお前の催眠能力はうざい。相手の心を操るだけでなく幻まで見せるとは……だが、それがどうした。俺はお前に一度負けたあの日のことを忘れたことは一度もない……こともないぞ」


 ナヲユキが恰好よく言葉を言い放ったが、最後の方は少し蛇足だった気がする。でも、ナヲユキは何も動じていない。戦闘に集中しているようだ。

 ナヲユキは周りを見渡した。そして、何もない空間に向かって右手に握られている剣を思いっきり振った。


 カキン


 甲高い金属音が響いた。

 ナヲユキが剣を振った次の瞬間であった。ナヲユキの剣の先には紫色に光っている丸っこい金属があった。いや、あれは鈴だ。ナオユキの剣は鈴に当たったのだ。鈴だけがその何もない空間に浮かんでいる不気味なものとして姿を現している。しかし、それは少しの間のことであった。すぐに鈴の先にいや、鈴の周りの空間が変化した。鈴を中心に人が姿を現した。その人というのがコーキであった。


 「流石だな、ナヲユキ」


 「気付かないとでも思ったのか」


 「ああ、気付かれるとは思ったが避けられるとはな」


 避ける。その言葉の真意が俺に理解できなかった。ただ、コーキの右手を見てその意味をようやく理解した。コーキの右手に短剣が握られていた。そして、ナヲユキの剣は一見コーキの魔導器である鈴を狙っているように見せて剣の一部は短剣にぶつかっていた。短剣による攻撃をかわしていたつまりは避けていたということのようだ。あの一瞬で鈴に当てるだけでなく短剣にまで当てているとは。俺はナヲユキの力がすごいことを遠くから戦いを見ているだけだが思い知った。


 「ならば、今度は俺の番といくぜ! 氷の地面(コールド・グラウンド)


 「それがどうした! って、ああ?」


 ナヲユキが剣を思いっきり地面に向かって刺した。すると、ナヲユキの剣型魔導器を指したところを中心に地面が凍り始めた。


 「っと、その氷に触れたら私まで凍るというものなんだろ」


 コーキはナヲユキの技の正体をすぐに見破り後方に一時撤退する。


 「距離を取るのは賢明な判断だぜ」


 「なるほど、やはり近くにいたら終わっていたパターンか」


 ナヲユキとタークはにらみ合いを始める。戦闘はどちらが優位ということもなく攻防を続けていた。


 「……」


 「……」


 硬直状態となった。お互いがお互いを理解しているうえでの戦闘だ。よほどのことをしない限りどちらが勝つのかは分からないのだろう。俺はかたずをのんでその戦いの行方を眺めていた。息をするのを忘れるほど緊迫に満ちていた。


 「これじゃあ、らちが明かないか。となれば」


 コーキは鈴に手を当てて先ほどとは比にならないほどの鮮やかなそして、ものすごく不気味な紫色の光を発する。

 鈴の輝きはとてもまぶしいものであった。今、俺がいる場所はあの2人が戦っている場所からまあまあの位置であるのにもかかわらず目を開けているのがつらい。となると、あそこで戦っているナヲユキは相当眩しい光によって視界を奪われているはずだ。これでは、ナヲユキが視界を奪われている間にコーキによって殺されてしまう。

 ナヲユキが死んだらすべてが終わりだ。


 「ナヲユキイイイイイイイ」


 俺はナヲユキの名前を叫ぶ。コーキは光を発するだけで動こうとしない。そして、もう一方のナヲユキも眩しい光の中でびくとも動かないのであった。

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