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第52話ナヲユキの過去編9

 俺が中等団員となってから1年の月日が経過した。


 「……ユキ、ナヲユキ! いい加減に起きろ!」


 「うぅ~ん」


 「おい、いつまで寝ているんだよっ! 早くしないと遅刻するぞ。中等団員筆頭さんよ」


 俺が心地良く睡眠していたというのに同室のケントが妨害してきた。ただ、遅刻というのは流石にまずいものを感じるので急いで上等団員の服装に中等団員筆頭の証であるワッペンを胸に取り付ける。この作業にもだいぶ慣れてきた。

 さて、俺はこの1年の間に力を隠すことをやめて全力で挑んできた。その結果、周りからの評価は180度変わり徐々に俺を認める者が増えてきた。それと同じく俺は出世を始め中等団員になって3か月で上等団員にそして、2か月前には晴れて中等団員を従える立場となる中等団員筆頭に就任した。昔の俺とはだいぶ変わった人生を歩むことができている。

 ちなみに蛇足であるかもしれないがここにいるケントは騎士団の副団長に就任した。騎士団のナンバー2になるとはすごいことだ。本当にこの腐った帝国の騎士団においては……。

 俺はここ最近思い始めていたことがあった。それがこの帝国という国についてだ。魔術大戦を始めたことだけでなく今帝国の中では様々な思惑が動いている。4か月前にあった事件なんかがそうだ。それは自分の利益しか考えていない貴族が敵対貴族を俺達騎士団を利用して失脚させたことだ。その時、俺は初めてこの国とは何なのかと考えるようになった。


 「早く行くぞ」


 ケントが急かしてくるので考えるのはここまでとしておく。俺はケントに言われた通りに急いで騎士団の本部へと向かっていった。


 ──────


 その日の仕事はそこまで多くなかったため昼前には仕事はすべて片付いた。仕事が終わったら向かう場所として騎士団の宿舎の自分の部屋ぐらいしかない。それ以外には行くところなんてない。残念な自分だ。

 まあ、そんな自分を嘆いても仕方ないのでさっさと部屋へと戻る。部屋へと戻る途中にミサ筆頭に会った。ミサ筆頭は未だ下等団員筆頭の座に就いていた。つまりは俺の方が立場が上へとなっていた。恐れ多いことである。


 「あっ、ミサ筆頭。久しぶりです」


 俺は挨拶をきちんとする。俺がミサ筆頭を呼ぶと背中を向けていたミサ筆頭は振り返ってこっちの方へと顔を向ける。


 「久しぶり。元気にしていたか? それともうお前の方が立場が上だから筆頭何て呼ばなくていいのに」


 ミサ筆頭は少し不満そうだった。顔の表情を見ただけで分かった。そんなに筆頭呼ばわりされるのが嫌なのかな。俺はとりあえず機嫌を良くすることを考える。


 「ええ、元気してました。どうです、この後一緒に町にでも行きませんか?」


 俺は久しぶりに2人で町に行くことを提案する。ミサ筆頭は俺の提案が意外だったのか驚いていた。


 「ふん。やるようになったな。いいよ、行こう」


 ミサ筆頭は昔のように元気にふるまっていた。俺はその様子を見て人というのは長い時を経ても変わることはないのだなあと感慨深く思っていた。そして、俺達は町へと足を踏み入れたのだった。


 そう、それがこの物語の結末。悲劇の日のスタートだった。だが、この時の俺はまだ事の結末を理解することなどできてはいなかった。

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