第5話ヨシキ活躍編1
新編突入です。
今から5年前。まだ帝国が魔術大戦中の頃。
帝国歴308年。
状況は確実に不利な中俺、筆頭大臣ヨシキは皇帝の側近として意見を言っていた。
「陛下、もう戦争をやめてください。南部戦線の敗北は時間的問題です。これ以上続ければ被害は拡大するだけです」
「はっはは。面白い提案だなヨシキよ。我が帝国は建国してから約300年。私まで17代皇帝が続いている中、一度も戦争で敗北をしたことがないぞ。この国は朕がいるかぎり負けるわけはない。だから何も恐れることはないのだ」
「くっ」
この皇帝、自信過剰でたまに殴りたくなるぜ。しかし、本当に殴ったら弱に俺が殺されるので思うのは心の中だけにしておこう。
「分かりました。軍部の方にはこのあと連絡しておきます」
それだけ言って俺は、皇帝の政務室から出ようとしたところ。
「ヨシキ。ちょっと待て」
皇帝に呼び止められた。一体何か用があるのだろうか。
「なんですか?皇帝閣下」
俺は、とりあえず返事をしておいた。
「実はだな、ナオトのやつの話なんだが・・・」
「えぇ~と。ナオト皇子がどうかしましたか?」
珍しくあの自信過剰の皇帝にしては歯切れが悪い。
「あいつが戦争に参加すると言ってきかないんだ。あいつは時期皇帝として育ててきた大切なやつなんだ。頼む。どうにか戦争に参加しないように説得をしてくれないか?」
「・・・」
なんだそんなことなのか。……と思ったことは口にしないでおこう。さて、どうするかこの皇帝はナオト皇子を大切に思っているからな。説得をしないと俺の命が無くなってしまう。しかし、ナオト皇子はというとあの人は頑固だからな一度決めたことはそうそう変えることがないから説得するのは大変なんだよな。
「どうしたのか? ヨシキやってはくれないのか?」
どうしよう。しかし、どっちにしろ地獄しかないなら受け入れるか。
「わかりました。ナオト皇子を一応説得してみます。しかし、皇帝閣下あなたも知っている通りナオト皇子は一度決めたらそう簡単には引き下がってくれないと思うので手ごわいと思います。それでもいいでしょうか?」
「ウム、あいつは頑固だから仕方ない。しかし説得してできるところまではやるんだぞ」
「わかりました。やってみましょう。それでは失礼します」
こう言って俺は、皇帝の執務室から出て行った。そのあと俺が向かった先はもちろんナオト皇子の私室であった。
ナオト皇子の私室の前につくとちょうどナオト皇子が部屋から出てきたところだった。ナオト皇子は俺に気付くと声をかけてきた。
「ヨシキ筆頭大臣。私に何か用があるのでしょうか?」
「ええ、まあ立ち話はなんですから座って話をしましょうか。あっでも今から用がありますか? それなら後日改めて伺いますが?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。あまりにも暇だったので城の外にでも散歩しに行こうかと思いましてちょうど部屋の外にでたらヨシキ筆頭大臣がいただけですから」
「じゃあ、部屋の中にでも入って話でもしますか」
ということで、俺はさっきの経緯をナオト皇子に話した。
「……ということなんですが」
「そうでありましたか。いかにも父が考えていそうなことですね。すいません。いつも父のわがままに付き合ってもらって、大変ですよね」
「いえいえそんなことありません。なんだかんだ言って私が好きで付き合っているだけですから。それと俺は筆頭大臣だとはいえ身分の低い人間なので呼び捨てでお願いします」
「わかりました。ヨシキ。私は戦争に参加するといいましたが本当の目的は別にあるのです」
「目的、ですか」
どうやら、ナオト皇子にはある目的があるらしい。
「ヨシキ。そもそもこの戦争はどうして始まった」
「えっ! それは・・・」
突然聞かれてびっくりした。
魔術大戦。
この戦争の名前は何時からか、このように呼ばれるようになった。
事の発端は俺らファン帝国が近隣諸国の魔導器を狙い侵略を始めたことからだ。
魔導器とは、魔術の術式を内装することで魔術を自由に扱うことができる武器だ。
しかし、帝国はたくさんの魔導器を持っていて自分らで作ることもできるがそれより強い魔導器を求めるようになってしまった。その結果行き着いた結果が強力な魔導器を作る技術を持っている隣国を侵略することだった。一方、侵略されはじめた国も対抗するため、「連合国」を設立し今日まで激しい戦いを繰り広げている。
「帝国が魔導器を狙い隣国に侵攻したことが発端ですよね」
俺は答えた。
「ああそうだよ。つまりそこには義はないんだ。私はなヨシキ、この戦争をやめさせたいと思っている。ヨシキも戦争反対派として最後まで戦争に反対した人間だからわかるだろう。私が戦争に参加することで父は私を送り出さないため戦争をやめてくれると思うんだ」
確かに。ナオト皇子の言っていることはあっている。あの皇帝ならナオト皇子が戦争に出るぐらいだったら戦争をやめるに違いない。俺も戦争反対派として賛同できる。
「わかりました。俺も戦争反対派として賛成です。しかし、もう一つ手を打っておきます」
「もう一つの手、だと。それはなんだ」
「まあ、後にわかりますよ。それでは失礼します」
こういうと、俺はナオト皇子の私室から出て皇帝に明日報告するとして家に帰った。
新キャラが何人か登場してきました。後でキャラクター紹介みたいなものでまとめたいと思います。