第47話ナヲユキの過去編4
ドッガーン
爆発音がした。アジトの中でだ。一体何が起こったんだ。俺達はそっと中をのぞいてみた。すると、そこで見たものと言うのは。
「あ、ああ」
無残にも殺された騎士。つまりは俺達の仲間の変わり果てた姿であった。爆発が起こったの方にいた騎士は跡形もなくなっている。そのすぐそばには武装化した闇商人がいた。つまりは、俺達の作戦は最初からばれていたのか。だからこんなことに、くそっ。
「どうするダララ?」
仲間の1人がダララにこれからの行動を仰ぐ。俺達は闇商人を捕えなければならない。だから、戦うしか道がないんだ。それはここにいる5人全員が理解していた。だが、動き出そうとするやつは1人もいなかった。俺も含めてだ。
「私達は騎士だぞ。任務は果たすものだ。死なんか恐れていてはこの鍛えた筋肉美が何にもならない。私は行くぞ」
ダララは行くと言った。他の3人もそれに追従する。そこに俺が待ったをかける。
「ちょっと、待てよ。今行ったところで俺らは何にもできない。ここはミサ筆頭を待っておくべきじゃないか」
こんなのやっても無駄死にだ。俺はそう言う。
ダララは俺の言葉に対して返答する。
「私達は騎士だ。騎士ならば騎士なりのプライドと言うのがある。ここで悪事を見逃すわけにはいかないだろ。嫌ならナヲユキは待っていろ。じゃあ、行くぞ」
「「「おう」」」
俺の必死の説得にも応じなかったダララ含めた4人は闇商人と戦いに向かってしまった。俺は1人ぽつんと残されてしまった。
「くっそ」
俺には何ができたんだ。あの時、何と言えばよかったんだ。俺には力がない。ここで向かったところで邪魔になるだけだ。じゃあ、ここで待ってろと言うのか。それも嫌だ。ならば、俺はどうすれば……。
(なんじゃ、お前は戦わないのか。我が力を持っているというのに)
「!?」
どこからか声が聞こえた。
「誰だ!」
俺は叫ぶ。闇商人が近くにいる危険があるかもしれないと言うのにだ。それほど切迫していた。
(そう声を荒げるな。我はお前の力とも言っておこうか)
その声はおかしなことを言った。
「俺の、力?」
(左様。お前の力じゃ。お前はまだ本気を出していない。それはまだ力を理解していないからだ。お前の腰に差してある刀を見てみろ)
俺は声に言われた通りに刀を見てみた。この刀は俺の家の倉庫の奥に眠っていたものだ。ただの刀だと思いいつも普通に練習として使ったり模擬戦の時に使っている愛刀だ。
(その刀は真の姿ではない。いいか。その刀は魔導器だ。我が今真の力を解放してやる。ただ、その力を使うかどうかはお前次第だ。我は何も言わない)
その声が言うと俺の腰に差してあった刀は突然宙に浮かんだあと光り輝いた。
「まぶしっ!」
その光はまぶしすぎて直接見ることができなくなっていた。
光が収まったのはそれから少し経ってからだ。俺の目の前にゆっくりと浮かんでいた刀は降りてきた。
「こ、これは!?」
俺は刀を見るとその姿形が変わっていたことに気が付いた。刀身は白く、柄は青い。それは冷たさと言うのを表現しているようであった。
そして、降りてきた刀に触れた瞬間にこの魔導器の情報が一気に頭の中に入ってきた。まるで今までこいつのことを知っていたかのように。
「これが、俺の力」
俺は自信を持った。こいつとならいける。そう確信した。
「俺は戦う。こいつと共に。だからダララ、みんな無事でいてくれよな」
俺はダララ達が向かった方へ急いで走っていった。
「どうか間に合ってくれ」
俺はダララ達が向かった方向に全力で走っていた。周りには騎士たちに死体が転がっている。50人いた騎士の内半分はやられたみたいだ。死体の中には俺のよく知った顔もある。正直目を背けたくなうことだ。だがこれが現実。立ち向かわなければならないことなんだ。
「くくく、死になさい」
「!」
俺は走ることに夢中になっていて横から現れた闇商人に気付かなかった。奴は今にも重い斧を振り落とそうとしていた。しかし、今の俺にはわかった。これは外れる。
ガッゴーン
斧が地面に突き刺さる。俺は傷1つついていない。
「悪いが本気を出す」
今の俺には魔導器の有無ではなく模擬戦じゃない、つまりは人殺しが許されていて相手も殺しに来ているという状況だ。俺が力をセーブする理由がなくなる。だから本気を出す。単純な理由だ。
俺は刀を抜く。ただ、この程度の敵には魔導器は発動しない。俺は手に持った刀を闇商人に向かって振る。
「はあああああ」
闇商人の武器は斧だ。斧というのは攻撃のスピードが遅い。ためが長い武器だ。そんな武器で防御などできない。俺が刀を振るったのを見た闇商人は必死に斧で防御をしようと振り上げるがまったく俺の動きに追いつかずに一瞬で胸を貫かれた。
「これぐらいか」
俺はその闇商人に見向きもせずに再びダララ達を探しに走り出した。
──────
少しして。俺はようやくダララ達を発見した。しかし状況は最悪と言ってもいい具合だった。
「はぁはぁはぁ」
ダララは体中から血を流していた。確実に出血が多すぎて命に関わる。他の3人の内2人はすでに横になっていた。その2人の体は全く動いていない。もう1人はダララと同じように虫の息だ。このままだと完全に全滅をするという状況であった。
「……まだだ、まだ、戦える……」
そんな瀕死の状況なのにダララは立ち上がってなお闇商人に立ち向かおうとしている。2人の周りには15人の闇商人が囲んでいた。完全に追い詰められている。
「まだだ」
もう1人の騎士も立ち上がる。彼も諦めていないようだ。
「死ねええええ」
闇商人が一斉に襲い掛かる。
俺には見ていられなかった。俺の前では仲間は1人も殺させはしない。勝手に体が動いていた。
「はああああ」
刀を持ち俺は闇商人たちに突撃した。
「貴様はだrグハッ」
「グハッ」
「おい、こいつをどうにグハッ」
俺は次々と群がってくる闇商人をあざ笑うかのように全て急所の胸を突き刺す。俺の刀は血に染まっていた。俺は夢中に戦っていた。俺の目の前に出てくる奴すべてが敵だ。敵は殺してやる。
「ナヲユ、キ?」
その光景をダララは信じられないように見ていた。それもそのはずだ。下等騎士団最弱の俺がこんな戦いをしているのだから疑ってもしょうがない。
「はああああ」
そんな中俺は刃向ってくる闇商人1人1人を殺していく。確実にだ。残りの数もあと4人というところまでいった。俺はまだ刃向って襲い掛かってくる闇商人2人を見向きもせずに剣をすらりと避けてから一撃体に切り付けて殺す。ただ、それだけの動作で十分であった。
「動くな」
突然命令をされる。目の前ではまだ生き残っている闇商人2人が最後の抵抗としてダララともう1人の騎士を人質としている。
「動いたらこいつの命はないぞ」
俺はそうと言われてしまうと何もできない。おとなしくその場で止まっていた。ミサ筆頭の援軍が来ることを信じて。
しかし、状況は変化しない。2人を人質にしているのでどちらか片方が動かない俺をいいことに殺そうとすればもう片方の人質が解放されて反撃されてしまう。なので、お互い何もせずにただいたずらに時間だけが過ぎていった。
「……」
額から冷や汗が流れる。この状況をどうにかしたい、でもどうにもできない。どうすればいいのか。こんな時ケントならどうしただろう。
「仕方ない。殺すぞ」
「何考えているんだ!」
少しの時間の経過すると闇商人の1人が刀を手に持ちダララじゃない方の騎士の胸に向かって刀を突き刺した。
「やめろおおおお」
俺の言葉はむなしく。彼は胸を貫かれて即死であった。
「お前ら何をしているのかわかっているのか!」
俺は闇商人に向かって叫ぶ。闇商人は俺に向かって言う。
「まだ動くなよ。今度はこいつがどうなるのかいや、もう殺してしまおう」
そう言うとダララに向かって刀を突き刺そうとした。
「やめろおおおおおおお」
俺は動いた。もちろん、ダララが殺されるのを止めるためだ。俺が動き出すのと同時にもう1人の闇商人が俺の前に立ちふさがる。その手にはもちろん刀を持っている。
「邪魔だああああああ」
俺はその闇商人を目にもくれずに走ってダララのもとへと向かった。闇商人が俺に向かって刀を振り下ろしたのでそれを刀で受け止めるとそのまま反撃に出た。
「どけえええええ」
俺の刀は胸ではなく上半身を斜めに切るように刺した。ただ、俺の力が強かったのか闇商人は一撃でその場に倒れ込んだ。
「くそ、だが遅い」
俺はダララのもとへあと一歩だった。あと一歩だったのにダララは胸を貫かれてしまった。
俺は完全に殺意を覚えた。
「この野郎おおおおおおおおお」
俺は闇商人に向かって刀で刺した、胸を刺した。首を切った。全身を刀で叩いて叩きまくった。それほどこいつが憎かった。俺の意識は完全に狂気と化していたのだ。
「……や、やめろよ。ナヲユキ」
そこにダララの声が聞こえた。その声はとても弱弱しかった。
「ダララ!」
俺はダララのもとに駆け寄る。ダララの胸からは大量の血が出血していた。俺は何とかしようと近くに人がいないか探しに行こうとする。すると、ダララに手を握られて止められた。
「ま、待て。ナヲユキ。お前に、言いたいことがある」
「それ以上しゃべるなよ。今から人を呼んでくるから」
俺は再び立ち上がろうとするものの手を握られる。
「わ、私はもう、長くはない。この胸の出血の多さから、わかるだろう。だから、最後に言っておきたいことが、あるんだ」
「もういい、もういいから」
俺はもうしゃべるなと言う。まだ、生きる望みを捨ててはいけないぞと。
「お前は強い。弱くなんかない。誰かが、お前を馬鹿にしても、私だけは、信じているか……」
「おいっ! ダララ、ダララ!」
ダララは途中で言葉を言うのをやめた。いな、意識がなくなった。俺は必死に彼の名前を呼ぶが目を覚まさない。心臓の音を聞く。しかし音がしない。
ダララは死んだ。
ただ、その現実を受け入れるのには時間がかかった。




