第41話ダンロード編6
ノゾムは魔導器の解号を唱え始めた。
「では、私も魔導器を使用しますか。消し去れ『マジック・ボム』発破!」
ノゾムは魔導器を発動したがそれは俺を疑わせるものであった。ふつう、魔導器というのは解号はとても長いものだ。それは魔導器の力が強いことから制御するためにわざと長く指定されているのだ。それなのにノゾムの魔導器の解号は短い、さらにその上に魔導器の本体がない、いや見えない。奴は本当に発動したのか疑いたくなってしまう。
「どうした恐れたか? 私のこの魔導器に」
「ふん。そんなわけあるか。いいぜ、この展開も悪くはない。いけぇ、戦破氷刀──」
俺はノゾムに向かって走っていった。しかし、次の瞬間には。
ドッガーン
「がはっ」
どこから受けたのかわからないが爆弾を食らった。爆弾、だと。一体どこから? ノゾムの方を見てみると愉快そうに笑っているだけで手には何も持っていなかった。
「フハハハハハ。どうした、どうした口ほどでもないな。なあ、孤独の氷剣士さんよ。その名はただの飾りか、もっともっと見せてくれよお前の本気を、それっ」
ドッガーン
「グハッ。また爆発?」
俺は再びどこからか爆弾を食らう。回避も防御も何もできていない。
「それっそれっそれっ」
ドンドンドン
「ぐはっ。ぐはっ。がっ」
爆弾によって吹き飛ばされて地面に倒れこむ。俺は完全にノゾムに踊らされている。爆弾を食らい続けた俺の口からは赤い液体が流れている。口からだけではない体中あちこちから赤い液体─血が流れている。
「ハハハハハ弱い、弱すぎる」
ノゾムによって俺の体は本当にボロボロとなっていた。これはかなりやばい。俺は思ったが、ノゾムの魔導器の本体がわからない以上『フロストヘイル』で攻撃をすることもできない。完全に俺は万事休すだ。
だが、
「はぁーはぁはぁ」
息が切れかけているがまだ体は動く。ボロボロでもまだ体は動く。それだけで十分だ。俺は通れた状態から体を起こそうとする。
「どうしたもう終わりか?」
ノゾムは言ってくる。俺の様子からしてもう無理だと決めつけたのだろう。だが、悪いな。まだ、まだ俺には諦めるわけには負けるわけにはいかないんだ。あの事件の時にもう負けないと誓ったんだ。
「くっ、まだだ。まだ俺は諦めない」
俺は立ち上がる。必死に力を振り絞って立ち上がる。
「諦めが悪いな。もう諦めてしまえば楽になれるのに所詮は単なるバカであったか」
……。ノゾムに言われたい放題であった。しかし、事実反論することができない。ならば、どうすればいいか。この窮地を脱出するには奴に魔導器の正体を見抜かなければならない。
俺は気持ちを改めて集中する。
「守護氷連陣!」
ドカン
爆発する音がした。しかし今回は『フロストヘイル』の防御技である守護氷連陣によって完全に守りきることができた。俺は無傷だ。何となく理解した。奴の魔導器は透明なだけで存在はしている。だから俺の周りに結界でも張っておけばどうにかなる。これはいい情報だ。
「1回止めたぐらいで調子にのるなっ!」
ノゾムはわめいている。
「一度あることは二度三度と続くものだ。何ならもう1回止めてやろうか」
俺はノゾムに対してさらに追い詰めるべく手に持つ魔導器をきつく握りしめて攻撃へと打って出た。俺は一気にノゾムとの距離を0にまで近づく。
「アイシング・フォール!」
空中に氷をでかい氷を生み出しそれをノゾムめがけて落とした。
ドスン
微妙に鈍い音がした。たぶん、ノゾムは氷の下敷きとなったのだろう。しかし、すぐにでかい氷が爆発する。爆発した氷の下から出てきたノゾムの顔は恐ろしく怒ったものであった。
「そんなわけあるかぁぁぁぁ。もう許さねぇぇぞぉぉぉぉ~。私の『マジック・ボム』の』最後の切り札……核」
ノゾムが技名を言うと爆発音よりも先に世界は真っ白に染まったかのように壊れたと一瞬思われた。
ドッガーン