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祖竜事変記(旧題RPGーこれが僕らの冒険譚)  作者: 騎士星水波
第3章始まりの章ー連合国サイドー
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第33話大佐編2

 その男は───


 「そうか、では私がお前の家族の代わりになってあげるよ」


 「お前のためなら何だってしてやるよ」


 「お前の名前はタークだ」


 「いってきます」


 俺の頭の中ではたくさんの言葉が思い浮かんできた。どれもこれも懐かしい言葉だ。

 そして、今俺の目の前に現れた男は俺のよく知る人だ。その人の姿はどんどん大きくなってきた。遠くからまだ小さかった姿がだんだんと大きくなってきた。その男は左右にいる兵士たちによって作られた道を歩いている。俺のよく知る人物。そして、そして俺が探していたただ1人の家族だ。その男の名は………。


 「ダリア連合国大佐、同国第2部隊部隊長ナオトだ。ターク久しぶり。迷惑をかけてしまってすまないな。これが今までお前にも黙っていた仕事なんだ。本当にすまない」


 ナオトさんが生きていた。それだけで俺はよかった。俺に本当のことを黙っていたなんて本当に小さなことだ。俺は謝らないで下さいよと言おうとしたが口から出た言葉はというと。


 「ナオトさん本当にずっと探していたんですからすまないどころじゃありませんよ」


 憎み口だった。こんなこと言うつもりはなかったのだが、言ってしまった。それだけ俺は心配したんだ。


 「まあ、再会してすぐで済まないがこれから至急ヴィオネのサリ城に来てはくれないか。この国の王子がタークに会いたがっているんだ。そして、ナルノリ博士はどうして逃げようとしているんですか?」


 ギクッ。

 後ろからそんな感じの音が聞こえた気がした。後ろに振り向くとそこで見たものは逃げようとしているナルノリの姿であった。


 「いやぁ、タークに会いたがっているんだろう? リョータ王子は?」


 「そんなことはないぞ。むしろ、お前に会いたがっているぞ。どうしてそこまで旅に出ようとして出ていき家庭教師の仕事をしないんだ? とも言っていたがな」


 ナルノリはその言葉を聞くと一拍深呼吸して言った。


 「……旅に出ます」


 ナオトさんはそれを聞くと笑顔で言った。


 「アッキ。こいつを捕まえておけっ」


 それは非情の言葉であった。


 「はいっ」


 部下は上司には逆らえない。アッキはナオトさんの命令通りに動き出す。


 「僕は罪人じゃないよー」


 ナルノリはすぐさま逃げようとするものの、そこは兵士達の方が上手であり問答無用で捕まってしまいそのまま兵士たちに運ばれていくナルノリであった。


 「じゃあ、私たちも行くぞ、いいなターク」


 「わかりました、ナオトさん」


 俺たちは、始まりの山を下りた。そこには、ダリア連合国が所有する大型飛行船が着陸していた。俺達はその飛行船に乗り込みそのまま王子がいるというヴィオネに行くこととなった。

 俺たちが飛行船に乗ってから少し経った。最初は揺れがひどいものであったがだいぶ気流にうまく乗ったのか安定してきた。それに伴って俺たちは会話を始めた。


 「ナオトさん」


 「うん? 何だターク」


 「いつから大佐という役職というか位に就いていたのですか?」


 俺は飛行船に乗り込んだ後のフリーな時間になってナオトさんに対して質問をぶつけていた。


 「うぅーん。まぁ大佐という位は3か月前、第2部隊部隊長になったのは1年前、そんでもって連合国軍に入ったのは3年前だ。意外と短いだろう。まぁ、全部私の実力でやったものなのだぞ」


 どうだすごいだろうと付け足すナオトさん。

 その姿は俺にとっては新鮮なものであった。


 「本当にすごいですね。自分の自慢話は普段はしないのに今日はよく話しますね」


 「うっ、うん。まぁ、私もいろいろと話したくても話せなかったからな」


 ナオトさんの表情はまるでいたずらがばれた子供のようなものであった。それだけ、「しまった」と言っていないのにそのような感情が読み取れた。


「まぁ確かに俺に対して何も話してくれませんでしたからね」


 本当に何も、と悲しくつぶやいた。たぶん今の俺の表情はとても悲しく見えるだろう。そんな俺の気持ちを察してくれたのかナオトさんは本当に申し訳なさそうに声をかけてくる。


 「だから、騙してて本当にすまなかったと思ってるからよ」


 俺は、ナオトさんのことを許している一方で変なプライドなのかわからないが許したくないと思っている気持ちも存在している。

 ただ、実をいうと今ナオトさんに再会した時から泣きそうで泣くのを必死にこらえている。もうだめだ。今にも涙があふれそうだ。

 どうしようと思い、俺は話題を無理やり変える。


 「ちなみにどんなことしてたのですか?」


 俺は、いなくなった後のナオトさんが何をしていたのか気になったので質問してみた。


 「ああ、まずはヴィオネに行って定例の会談に参加していたんだよ。そしたら急な仕事ができてしまって帝国との国境付近にまで行くことになり連絡ができなかったんだ」


 帝国との国境? と俺は疑問に思ったことを口にしたがあまり詳しいことは話せないと言われてしまい結局わかったことはあまりなかった。ただ、仕事が忙しいということだけがわかっただけだったのだ。それに軍の仕事であるから一般人にはそんな簡単には話せないという事情もあることを理解した。

 そう言えば……俺は話をずらしてナオトさんの部隊長という地位について聞いてみることにした。


 「ナオトさんは部隊長だと言ってましたけどそれってどれくらいすごいのですか?」


 今度は部隊長という役職について聞いてみることとした。


 「ああ、すごいぞ。ダリア連合国の全兵士の中から7人しか選ばれない名誉ある役職だからな。それぞれ第一部隊、第二部隊、第三部隊、第四部隊、第五部隊、第六部隊、第七部隊の7つの部隊の長であるんだ。ちなみにその下は副部隊長、副部隊長代行などと続いていく。大佐とはこれらの役職とは別の官位といったものだ。ちなみにそこで縛られているナルノリもすごいやつなんだぞ」


 そうナオトさんが言うと、テーブルの椅子に縄で縛られているナルノリは必死に抵抗した。


 「や、やめろよ。言うんじゃねぇーよ。やめてください、やめてぇぇぇぇ」


 なんかものすごく言うなと言って騒いでいる。ここまでされているとどうしても気になってしまう。やっぱり人間は不思議だ。

 ナオトさんはその様子を見るととても満足そうな顔をして話し始めた。声色もとても生き生きしている。今まで聞いたことのない声のようだった。


 「ナルノリはな。さっきの話であったように考古学の博士として王子の家庭教師をしていた。それ以外にも同時に連合国軍の兵士でもあったんだ。まぁ、本人はあまり仕事をしたくないと言い張っていたのだが大佐になってもあまり戦績は変わらなかったがそれでも先代第三部隊部隊長を務めていた強者だよ」


 「! 部隊長………第三部隊」


 ナルノリはそんなにもすごいやつだったのか。ナルノリのほうを向くとふてくされてぼっそと一言二言話し始めた。


 「かつての話だ。僕は、今はただのトレジャーハンターなんだ。兵士ではない」


 ナルノリは、もう兵士なんかやりたくはないと言っている。


 「たぶん、タークお前への用というのはダリア連合国軍に入れという話じゃないか」


 ナオトさんはナルノリの話をスルーして俺に話し始めた。ナルノリが外野では無視するなと言っている。


 「へっ?」


 さすがに驚いてしまった。どうしてそんなことになったんだ。


 「どうして俺なんかに?」


 疑問が出てきた。俺なんかに兵士にする必要性はあるのか。俺は戦力になるような人間だとは理解していない。ただ、ナオトさんの近くで戦うことができるなら何でもできると思うがそれでも並並のことしかできない。こんな俺に何を期待しているんだ。


 「そうか、ターク。おまえはまだこの国の現状を理解していないんだな」


 「げ、現状?」


 ナオトさんは俺に対して今、ダリア連合国が置かれている厳しい現状を語り始めた。


 「そうか、ターク。おまえはまだこの国の現状を理解していないんだな」


 「げ、現状?」


 ナオトさんは俺に対して今、ダリア連合国が置かれている厳しい現状を語り始めた。


 「お前の知っている通り我らダリア連合国は隣国ファン帝国による侵略からの抵抗で小国が連合して生まれた国だ。建国してまだ10年。とても若い国だ。ここ最近、ファン帝国が再び戦争をしようとしているとの話を聞く。空位であるはずの皇帝の座には皇女に即位させ上層部は傀儡同様に操ろうとしているそうだ。お前はこれをどう思う?」


 ナオトさんは俺に訪ねてきた。もちろん、俺が答える答えは1つに決まっていた。


 「俺は絶対に許せません。戦争はいけないことです。そして、皇女はかわいそうです。しかし、それとこれと俺の軍入りの話と何か関係があるんですか?」


 俺は尋ねた。ナオトさんはそれを聞くと呆れたようにため息をした。


 「はぁぁぁ~。まだ気づかないのか。仕方ない教えてあげるよ。つまりはだな今、ファン帝国と正面から戦争をしたところで我々は圧倒的な戦力の差から到底勝つことができない。だから強い者に軍に入ってもらえるように説得しているんだ。それで今回はタークに白羽の矢が刺さったというわけだ」


 「なるほど、わかりました。ナオトさん」


 要するに戦争でこの国が勝つためにしているというわけで今回は俺に白羽の矢がたったというわけか。ただ、俺は強くない。ナオトさんであったなら誰からも強い者として支持されるのに俺は何のとりえもない。強くないと少なくとも自分では自覚している。俺なんかよりもっと軍に入るべき人はいると思っている。

 だけれども、俺はこの国が好きだ。ナオトさんがいるこの国がとても好きだ。それなら俺がするべきことは………。


 「わかりました。俺はダリア連国軍に入ります。俺はこの国が好きなのであまり強くありませんが守って見せます」


 俺の回答に対してナオトさんは一言。


 「そうか………頼もしいな」


 その言葉の後に周りからは「おおー」という歓喜が聞こえてくる。そんなに喜ばれることだったのだろうかと思ってしまった。

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