第3話城下町編2
いよいよ主人公が登場し物語は加速します。
帝都ヴァリオン。この帝国・・・ファン帝国の帝都である大都市である。 町は帝国の政府がおいてあるマドー城を囲んだ形に作られている。 最上部がマドー城であり、上部が貴族階級、中部が騎士、そして下部、最下部が平民や庶民と呼ばれる人々が住んでいる。
かつては繁栄していたが戦争によって繁栄していたころの面影はうっすらと消え始めてしまっていた。そして、ヴァリオンの最も下層にあたる最下層部に位置している下町において。そこでは、『何でも屋』という下町の人なら誰でも知っている小さなお店があった。
その店を開いた青年ナヲユキは下町育ちで騎士団副団長のケントの幼なじみである。
そして、今日も弟のユーイチと共に仕事に取り組んでいた。
「ありがとうございました。また、きてくださいっ!」
「いつも、ありがとね。またお邪魔するよ」
ガチャン。ドアが閉まった。
「しっかし、ありがたいねレナさんにはよくここにきてもらってくれて。レナさんがここの店をほかの人に紹介していなければ今頃どうなっていたことか」
ユーイチは嬉しそうに言った。それに対して俺は深く考えずに思ったことをありのままに答える。
「それだけ、俺らが信頼されるようになったんだな」
つい数ヶ月前まで全く信頼されずに、客が来なかった頃とは全く違う。今のすがすがしさがずっと続けば最高だとこの頃よく考えてしまう。
「あっ! ユーイチ。もう店を閉める時間だぞ」
「アハハハ……。すっかり閉めること忘れていたよ」
「まったく。これで何度目だ。集中するのはいいが、もっと周りを見ろよっ」
「はい、はい」
「はいは一回っ」
「はいっ、はいはいはいはいはいはいはいはいはい」
「……」
あれ? おかしいな。はいは一回って言ったよな俺。何で十回も言ったんだ?さてと、スルーしたほうがよさそうだし・・・。
俺は明日の準備に取りかかった。
「…………」
「…………」
えっーと。ネジはどこだ。
「バカー」
突然ユーイチが叫んだ。
「なんだよ」
「なんで無視するんだよ。はいは一回じゃないか。俺は十回言ったぞ」
「ネジはネジどこだ」
「だから、無視するなぁぁぁぁぁ」
「いいじゃん。もうその話は終わりで。そこまで掘り下げるようなことじゃないだろ」
今更、その話をする気にならねえし。何かもっと気が引ける話にしないと。何かいいスクープなかったかな。
おっとそういえばレナさんがさっき何か話してくれたような……そうだあの話ならユーイチにも興味を持たせることができるに違いない。
こうして俺は、ユーイチに先ほどレナさんからきいたある噂について話し始めた。
「ユーイチ知っているか、例の噂?」
ユーイチはきょとんとしていた。どうやらわかっていないみたいだ。ならば注意をひきつけることもたやすいだろう。
「例の噂って?」
「もちろん・・・」
俺は一拍おいて話し始めた。例のうわさを話し始めた。
「皇女リーザ様の逃亡の話だよ」