第25話始まりの山編3
「死ねぇぇぇ、もう許さねぇぇ、ほかの人を開放してあげろぉぉぉ」
思わず叫んで、その男に剣で殺しにかかった…………しかし、そこで後ろから何者かに足をかけられてしまい邪魔さた俺は、体が地面に伏せられてしまった。後ろを振り向くと、そこにいたのは………。
ナルノリだった。
「ナ、ナルノリ……お前っ」
「ククク何ですか? ターク。私をそのようなカスの名前で呼ぶのではない。私の真の名はタカタク。AHO連合国殺人教団のボスである。といってもなまぁ、それを知ったことでお前はもうここで死ぬのだがな」
っ! 俺はここで死ぬのか。
「一つ聞きたいことがある」
俺は、死にぎわだが一つ聞きたいことがあったので断られることを覚悟に聞いた。
「フン。まぁ、一つぐらいなら答えてやろう。さぁ何だ? 聞きたいことは?」
……これは意外だな。
「素直に答えてくれるとは思っていなかった。で、質問というのは本物のナルノリは一体どこにいる。いつから入れ替わったんだ」
「まぁ、焦るな。最初からというと嘘だが本間のナルノリは駅弁を買いに行ったときに駅で殺した。あいつとてつもなく弱かったぜ。しかも、その後のお前をだます演技をしないといけなかったのが大変だったぜ。まったくナルノリもあの文献さえ読まなければ消されなかったのにな」
なるほど、あの駅弁を買った後は全部タカタクだったのか。くそっ、なぜこんな奴に騙されていたんだ。俺はとても自分が歯がゆい。俺は、この状況をひっくり返すため地面に倒れたままの状態で自分の持っていた魔導器に手をかけた。
「はぁ~」
カキン。
俺は魔導器を解放しようとしたが次の瞬間、タカタクの手によって止められてしまった。カキンという甲高い音は俺の魔導器が壊された音だ。その結果、俺の魔導器は無残にもバラバラになってしまった。
「ハハァハハハ。もうお前には何もできない。さぁ、私達AHOが掲げる理想の世界への高貴な生贄として世界に我らに貢献するんだ!」
くそっ、お前になんか負けてたまるかっ、と声に出そうとしたが、声が出ない。このまま俺は死ぬのか? いや、死んでたまるか。俺は絶対にナオトさんをさがすんだっ!
「こんなところで死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は、最後の力を振り絞って叫んだ。そして怒りにまかせてタカタクに殴りにかかろうとした………しかし、片手で俺は止められた。
「クッハハハハハ。仕方ない。もうお前は用済みだ。生贄でもない何でもないただのゴミだ、だからこそここで死ねぇぇぇ」
タカタクは、銃を持ち俺を殺そうとした。そして、俺に向けて引き金に指をかけたとたんバンッという音がした。多分発砲したのだろう。でも、何だろう意識が徐々に遠くなっていくな。そうか、俺は死んだのか、せめてもう一度ナオトさんに会いたかったなと思いながら俺は死んだ…………………いや、死んではいなかった。徐々に意識が戻ってきた。目を恐る恐る開いてみると目の前には銃を持っているタカタクがいた。しかし、当のタカタクはとても驚いた顔をしていた。俺は、タカタクが向いている方を見てみると22,3ぐらいのトレジャーハンターの服装をした男がいた。
『ナルノリ』がいたのだ。
「「ナっ、ナルノリっ!」」
俺とタカタクは一緒にその名を叫んでしまっていた。俺は、生きていてうれしかったという喜びの元出てきた言葉、タカタクは殺したはずのお前がなぜ生きているんだという怒りが元で出てきた言葉だ。
「お前、なぜ生きているんだっ! あの時私が殺したはずじゃ」
タカタクは自分の目の前にいる者がとても信じられない、というような目でナルノリをにらんでいる。黙っていたナルノリがようやく言葉を発した。
タカタクは自分の目の前にいる者がとても信じられない、というような目でナルノリをにらんでいる。黙っていたナルノリがようやく言葉を発した。
「いやぁー、あの時は死んだと思ったよ。この聖なる石がなければね」
「馬鹿なっ! 聖なる石、聖なる石だと! あの石は神話上にしか出てこない幻の石ではないかっ、そのような物が存在するわけがな………」
タカタクの言葉が途中で途切れた。なぜなら、ナルノリがその聖なる石なるものを取り出したからだ。それは、金色にとてもきれいに輝いていた。おそらくは世界中にあるどの宝石よりもきれいだろう。ただその時、俺は無意識にある言葉を呟いていた。
「オーディーン…………」
オーディーン。どういう意味かは分からない、しかしどこか懐かしい言葉だ。
あの石はもしかしたら俺の過去と関わりがあるのではないかと思った。俺が自分のことを考えている間にもナルノリとタカタクの戦いが始まろうとしていた。それでも両者は動かないで話を続けた。
「神話、神話ねぇ~。それはノルランド神話のことかな? タカタク」
俺は、ナルノリが発したノルランドという言葉に反応した。ノルランド、神話。俺は知っているノルランドという国を。はっ、今俺は何でノルランドが国だということを知っているんだ? 一体ノルランドとはなんなんだ。
「ふん。そうさ、ノルランド神話の話さ。その昔この地にノルランド公国という国が存在した。ノルランド公国は小さいながら豊かで平和な国であった。だが、周りには3つの超大国によって囲まれていて、いつ戦争になるか不安でもあった。そんな中、3つの超大国がそれぞれ戦争を始めようとする。当時の公国の伯爵であったアダム五世は、国のためを思い自殺をしようとする。しかしその時、空から7匹の竜が現れた。7匹の竜の名は、アポカテクイル、ヴァルナ、ヘスティア、ヴァーユ、ヘル、テルースそしてこれら6匹の竜を統べるものオーディーン。竜らはアダムに対して魔法というすべての魔導器のにより発動する魔術の元となるものを属性の魔法を教えた。アポカテクイルは雷属性、ヴァルナは水属性、ヘスティアは炎属性、ヴァーユは風属性、ヘルは氷属性、テルースは土属性をそれぞれ教えたと書かれていた」
タカタクはノルランド神話に書かれていたという事象を話した。ナルノリはずっと黙って聞いていた。俺は、魔導器にそのような歴史があるとは知らず驚嘆が隠せずにはいられなかった。しかも、極めつけは竜だ。竜とは伝説上の生き物に過ぎずそのような存在がいるはずがない。信じたくない。だが、ナルノリはすべてを真実のように受け止めていた。まるで、本当にあったことのように。
「流石だなタカタク、まさかそこまで調べているとはなっ。で、オーディーンは何を教えたか知っているのかな?」
ナルノリとタカタクはお互いをにらみながら話を続けていた。
「オーディーンは、補助系能力全て教えたと文献には書いてあったぞ」
タカタクは、淡々と語った。しかし、その回答に対してナルノリは笑みを漏らした。そして、口を開いた。
「タカタクよ、それは残念だが嘘だっ」
嘘だと。今の話のどこに嘘があるんだ。少なくとも俺には分からなかった。6属性以外で残っている魔術といえば補助系しかない。タカタクも納得しておらずナルノリに向かってどなった。
「何が嘘なんだ! ナルノリ! 私は間違えたことは言ってないぞっ」
タカタクは怒っていた。その怒号は俺の耳のも響いた。
「うるせぇ」
少し、本音が漏れてしまった。
しかし、そんなことは、まったく聞いていなかったようだ。ナルノリとタカタクの2人は、会話を続けた。
「正確に言うとお前は間違えてはいない。だが、1つ違うところがある。それはオーディーンは補助系以外にももう1つ教えたものがある。それが、失われた7つ目の属性」
「「7つ目の属性っ!?」」
俺は、タカタクと一緒に叫んでいた。なんで、こんな奴といきピッタリなんだよ、吐き気がする。だが、俺のショックは余所にナルノリに対してタカタクは質問攻めを始めた。
「何だ、その7つ目の属性とは一体っ」
ナルノリがタカタクにまあまあ慌てるなと言ってから話し始めた。
「七つ目の属性、その名は無属性という。そして無属性の特徴は、全ての属性に属さない種類の魔術、そして六属性全ての魔術を使え2つ以上の属性を複合させることができることだ」
何だと。2つ以上の属性を複合させることができる!? そんなことが本当にあるのか? ただ、それはタカタクも感じたらしくナルノリに怒鳴り込んだ。
「バカなっ! 複数の属性を同時にだと、全ての魔導器は一つ一属性だぞっ、そんなことがあってたまるかっ」
ナルノリはタカタクの様子を見て笑っていた。滑稽だなと言いたいのだろう。
「それが存在しちゃうんだよねぇ~。現にタカタク、お前が狙っている魔導器『イヴ』は、無属性の魔導器だぞ」
へっ!? 『イヴ』は無属性だったのか。俺が心の中で思ったことをタカタクは次の瞬間発していた。
「なっ、『イヴ』は無属性だったのかっ。ふん。こうなればますます私の物にしなければならないな」
タカタクは余計『イヴ』を欲するようになってしまった。このままではAHOによってこの世界が壊されてしまう。
「そんなことができると思っているのかい?」
ナルノリが戦う気になった。何としてでもタカタクを止めなければならない。
「あぁ、私にはできると思っているさ」
タカタクの返答に対してナルノリはふと笑いそして表情を変えた。
「やってやろうか」
「いいじゃねぇか上等だ」
ナルノリとタカタクの両者がついに動き始めた。
「数千年の時を経て古の人より受け継がれしこの力を現代に見せつける時が来た魔導器『アンティークシューター』再臨っ!」
「世界を混沌に変えるべく、世界の希望のすべてを滅せよ魔導器『ザ・ラストライフライト』発火っ!」
ナルノリとタカタクの両者は、お互いに魔導器を解放した。ナルノリの魔導器は両足に履いている靴型の物であった。その靴は見たこともない装飾が施されていた。その一方で俺にはとても懐かしく感じたものでもあった。片や、タカタクの魔導器は銃型であった。おそらくいや、確実にあの銃口からは銃弾が放たれるだろう。
「「はあー」」
お互いが動き始めた。先に攻撃を仕掛けたのはナルノリであった。いきなり、もうスピードでタカタクの前に移動した。
「キック、キック、キィーク」
ナルノリはそのままのスピードを生かして三連続でキックしたが、タカタクはそれをすべて避けた。そのままナルノリとの位置を取ったタカタクはナルノリに銃口を向けて放った。
「フレアガン」
バンという音がしたかと思うとタカタクの『ザ・ラストライフライト』の銃口から強烈な銃弾が放たれていた。銃弾はものすごい速さでナルノリに向かっていった。
「がっ」
ナルノリはキックをした後の着地の途中に狙われそのまま避けることができずに直接背中に銃弾を食らいダメージを受けた。
「おやおや避けることもできないのですか? あなたはものすごいカスですねぇ、ではもう一発フレアガンっ」
バンという音が再び俺の耳に響いた。ナルノリは今度は何もしていないはずだが避けることができずに撃たれた。どうしたんだ? 何であの攻撃を避けられないんだ? 俺はナルノリには何か作戦があるのかと思ったがそうに見えなくなってきた。
「っが!? ゲプ。タ、タークッ!」
ナルノリが突然俺の名前を叫んだ。
「お前は先に『イヴ』のある場所に行けっ! ここは僕がどうにかして時間稼ぎをする」
「……し、しかし──────」
その体じゃもう避けることができないだろうと言おうとしたがナルノリが遮って言った。
「いいから先に行けっ!」
くっ、こうなったら仕方ないか。
「………すまない、ナルノリ」
俺は、ナルノリに言われたとおりに先に『イヴ』をどうにかすることにした。とりあえずは、始まりの山の頂上を目指してそばの道に向かって走り出した。
「任せたよ、ターク」
「なるほどそう来たか。なら、お前たちあいつを追って捕えろっ。抵抗するなら殺しても構わない」
「「わ、分かりました」」
「だいぶ焦っているなタカタクよ。そこまでして欲しいのか?」
「ふん。誰が焦るものか。焦らなくてもあれは時期に私の物だ。それよりいいのか先にあいつを行かせて? このままだとお前は結局似ぬことになるのだから大した時間稼ぎにはならないぞ。現にお前は私の攻撃をろくに避けることができないじゃないか」
「ははは。なんで、僕がタークを先に行かせたかわかるか? 僕の本気はあまり人に見せたくはないからな」
「ふはははは。さっきまでの戦いぶりから本気とはよく言ったものだ。本当に本気なんか出せるのかお前に」
「見せてやるさっ! アンティークシューター第二形態っ(セカンドフォルム)!」
「こ、これは一体?」
いよいよ、始まりの山編も佳境に入ります。