第21話連合国編1
いよいよ新章です。
今から4年前───魔術大戦終戦の翌月のこと。
連合国内のとある遺跡にて。
「俺は一体誰なんだ? そしてここは一体?」
俺の周りには大きな遺跡群があった。一つ一つに竜の絵が描かれていてどうやら神聖な場所らしい。
「なんか懐かしいような気がする。しかし……」
一瞬その絵を見てそう思ってしまった。自分でもよく分からない、しかし懐かしく感じる。何か自分の記憶の欠如の原因が分かればいいのだが、まったくヒントとなるものがない。
「誰だっ! そこにいるのは」
「!」
俺の後ろから突如として声が聞こえたので振り返ってみると年が30歳前後と見える背の高い男がいた。
「お前は誰だっ!」
「お、俺は……」
そこで口を濁してしまう、自分の名前が分からないからだ。しかし、その男はそうとは知らずに自分の名前を名乗った。
「私はナオト。旅人だ」
──────
「うぅーん」
そこで夢から目覚めた。なんて、懐かしい夢を見たんだ。4年前に俺はナオトさんに助けられ、一緒に旅をしてきた。
「最近見ていなかったから忘れていたと思っていたぜ。4年前にナオトさんと初めて出会ったときの記憶」
最近、というか2年前から旅を止めて一つの町で暮らし始めたので久しぶりにもの思いにふけていると部屋のドアが開いた。
「ターク、おはよう。もう仕事の時間だから出かけるぞ。朝飯はしっかり食っておけよ。じゃあ行ってくるよ」
ナオトさんはそう言いドアを閉めた。
俺は目をつぶりあの夢の続きを見た。
あの後、俺はナオトさんから名をもらった。それがこのタークという名だ。意味は俺がいた遺跡群の名前がターク遺跡だったからだそうだ。
なんで名前をくれたかというと………。
「私はナオト。旅人だ。こちらは名乗ったぞ。お前の名前を教えてくれないか」
「俺は………………………………自分が誰だか分からない。どうしてここにいるんだっ。教えてくれよあんたっ」
「なるほど記憶がないのか。お前の家はどこだ? 家族はいるか?」
「分からない。何もかも分からない。俺はどこに住んでいたのかも、俺の家族のことも全く思い出せない。気づいたらここにいた」
「そうか、では私がお前の家族の代わりになってあげるよ」
「本来ですか」
「ああ本当だ。一緒に旅をしよう」
「それならお願いします」
俺は素直にお願いした。何でこんなにも即答できたのかわからない。だが、何かを考えたのは確かだ。
「でも、まずお前の名前を決めないと。何か少しでも名前について覚えていないか。ほんの少しでもいいから」
「そんなこと言われても……………全く覚えていることがなくて」
本当に覚えていることがないんだ。
「じゃあなんて名前を付ければ………………………………あっ! そうだ」
ナオトさんは何か思い付いたらしく自分が背負っていたバッグの中にある地図を取り出した。そして、その地図を広げ…………。
「よっしぃ決めた。お前の名前はタークだターク。この遺跡群の本来の名前は不明だがターク遺跡という別名があるんだ。このターク遺跡にいたからタークという名でどうだ?」
「タ、ターク」
「気に入らなかったか? 何なら自分で名前を決めてもいいの――――――」
「違うんです。こんなにも素敵な名前をもらってとても嬉しい……」
本当に嬉しい。涙が出そうな………。
「涙が出てる?」
少し昔のことに思いふけているとなぜか涙が出てきた。
「今日は何かと昔のことを思い出すな」
俺の口元は緩んでいて自然と笑っていた。
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