第19話最強の男編1
何でも屋において。
「ナヲユキとケント大丈夫かな?」
「皇女様、心配しなくても大丈夫だよ。ナヲユキ兄もケントさんも強いから。……それよりこの状況をどうにかしないと」
俺ユーイチの前にいるのは皇女様だけではない。騎士団の連中もいる。しかも、真ん中にいるコーキと名乗った奴はなかなかできる。どうしてこのような状況になったというと。
ナオユキ兄とケントさんがマドー城に向けて出発した後のこと。俺は、皇女様にこれから先のことについて尋ねた。
「皇女様はこれから先、ナオト皇子を探すと言っていましたが何かあてでもあるのですか?」
「うぅーん。いいやないかな。ただ戦地巡礼を言い訳にして旅に出たしか知らないんだよね」
「そうですか……」
皇女様は何も知らないらしい。ナオト皇子の情報については全くの不足にいたっている。皇女様が知らない以上誰に聞いてもこれ以上の情報は手に入らないだろう。しかし、何かナオト皇子の行方を示す大事な痕跡が一つでもあればいいけど。
「ところでユーイチ。こちらから少し聞きたいことがあるけど」
「えっ、何ですか?」
「ナヲユキの騎士団時代のことなんだけど」
「それならいくらでも話しますよ。ナヲユキ兄は上級団員筆頭に就いていた騎士であるんですよ。その時についた二つ名は──」
そこまで言おうとしたところにバンッ! という大きな音がドアからした。
「誰だっ!」
俺は叫んだ。しかし、ドアから入ってきたのは驚くべき者たちだった。
「皇女様がいたぞっ。さすがコーキ様からの情報だ」
「何ですあなた達。私の情報を信じていなかったのですか。この情報はここにいるユーイチの兄であるナヲユキから直接読み取ったものなのですから間違えるはずはありませんよ」
「騎士団!」
俺たちの前に現れたのは騎士だった。
そして今に戻る。
「では皇女様を取り換えさせてもらいましょう」
俺はナヲユキ兄と………兄さんと皇女様を守ると約束したんだ。だからこそコーキに奪われるわけにはいかない………。
「はぁー、魔導器解――――――」
ぐにゃり。セカイが揺れた。なんだこれは。皇女様、大丈夫?
(私は最初から魔導器を解放していたのですよ。ナヲユキの弟よ。お前の兄は私に敗れた。しかし、お前に対して使った技はナヲユキに使った技とは全くの別物だ、安心しろ。お前は安心して皇女が我々に連れて行かれるまでそこで寝ていろっ。では、さようなら。あなたとはもう二度と会うことがないでしょう)
おいっ。待てよ。くそぉぉー、俺は何もする事ができないのかナヲユキ兄いや、兄さん。あの時みたいに兄さんがいないと何もできないのか。俺は何も変わっていないのか。
(ユーイチ、諦めるな。諦めたらそこで全てが終わりだぞっ。これでも俺の弟なのかっ)
この声は兄さん?
(お前ならできる、いいか魔導器に集中しろっ)
わかったよ、兄さん。俺やってみるよ。もうあの出来事の二の舞だけはしたくないんだ。
はぁぁぁー。集中を高め……………………………………放つ。
シャインビート!
目の前が光る。そして、光った後に大きな爆発音がした。そして、目の前は何でも屋。
「なっ! なんだと、お前みたいなカスにこの『テレバスター』の催眠空間ザ・ナイトを破壊するなんて」
「皇女様を返せぇ」
皇女様は騎士に捕まっていた。何としてでも奴らから逃げなくてはいけない。
「無駄な抵抗はやめろっ」
騎士たちは剣や短刀を構えていたが、そんなこと関係ない。俺のやることは一つだ。
「放せよっ、皇女様を放せぇぇぇぇ」
「ふん、いいかげんに諦めろよ」
ばたん。俺は騎士に向かって突進しているところをコーキによって転ばされてしまいそのままコーキは俺の足を踏みつけた。
「うぁぁぁぁぁ、いてぇ。くっ諦めるか……」
あきらめない。この騎士をコーキの足を握っている手は何があっても離さない。
「ハァァァハハハ。私に逆らうとどうなるかわかったか。ただの凡人が逆らうとどうなるかをな。死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「!」
「ユーイチィィィィユーイチィィィィィィィィィー」
ああ、これはもう死んだな。皇女様そんなに泣かないでくださいよ。俺、兄さんにケントさんに起こられてしまいますから。諦めずにやっても結局俺はこの程度しか力がないのか。
そうして、俺は目をつぶり死を覚悟した。
今回はユーイチ視点といきます。