表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/149

第131話エピソード・リーザ

久しぶりに2日連続投稿。

 「ぐがああああああああああああああああああああ」


 空からおぞましい声が聞こえた。

 みんなが戦っている戦場の方向を向く。そこには、竜がいた。竜は、神話の中にだけでてくる伝説上の生物だ。そんな恐ろしい存在がいるなんて誰が想像したのだろう。


 「こ、怖い。み、みんな大丈夫だよね」


 私は、心配だった。みんな戦っている。この戦いの原因を作ったのは私だ。みんな私のせいで戦っているんだ。そんな私はこのサリ城の中でぬくぬくと安全にいる。本当にそれでいいのだろうか。みんなが戦っているのにここにいていいのかな、不安になってくる。


 「リーザ姫。あなたはここにいるだけでいいんですよ」


 「……ユーさん」


 私の近くにはユーさんがいた。リョータの家庭教師をしている見たいだけだけどこの人からはどこか不思議な雰囲気を感じる。

 いったい何者なのだろう。少なくとも敵ではないことは確かなんだけど……まあ、それも私の勘で言っているだけど。


 「別に私は何も思ってないわ」


 「そうですか? 今にでも戦場に飛び出しそうな顔色してましたよ」


 「……意地悪ですね」


 「ええ、私はSですから。あなたもなかなかいじりがいのある方ですね」


 「そういう言い方はどうかと思うわよ」


 「別に私が満足できればいいのでそんなのどうでもいいですよ。それにあなたも私との会話を楽しんでますよね」


 ……ひねくれて言ってみたが、やはりユーにはばれていたみたいだ。この人はやっぱりすごい。敵ではないが、私の心の内をすべて見抜いているみたいで怖い。


 「まったく、で私はどうすればいいと思うの?」


 「そうね。少なくとも今のあなたはここにいるのが一番だと思うわよ。あなたが戦場に出たところでお荷物ですし、それにリョータ王子に悪いですしね」


 「リョータが? それはどういうこと?」


 「……それ冗談で言っているの?」


 「…………」


 「無言っていうことは肯定と取りたいところだけどこの場合は逆ね。あなたは気づいているようね」


 ユーには嘘が通じない。しゃべらなければいいと思ったが、どちらにせよ私の心の内などすぐにばれてしまうものだった。

 私、嘘をつくのが下手なのかな。

 自分に自信が若干なくなってきた。


 「さて、あなたの気持ちが落ち込んだところで本題に入りますか」


 「本題?」


 ユーは一体何を言っているのか? 本題って何だろう。

 私の顔にはクエスチョンマークが浮かんだ。


 「ええ、本題。あなたは戦場に今からでも行きたい?」


 「えっ!?」


 ユーの提案は思ってもいなかったことだった。それにさっき、私が行ったところでお荷物になるって言っていたのにどういう風の吹き回しなんだろう。私はユーの考えが分からなかった。ユーは一体私に何を求めているのだろうか。

 いや、私になんて答えてほしいのだろう。


 「私はあなたの覚悟を知りたいの。だから、素直に言って。あなたは戦場に行きたいの? 行きたくないの?」


 「……それは……」


 ユーに言われて真剣に考える。私は、みんなに迷惑をかけた責任を負う必要がある。それなのに、このサリ城で悠々と過ごしていていいのか。私だけ安全地帯にいていいのか。私の皇女しての債務を果たさないといけないのではないのか。私が私であるために行かなくてはいけない。

 でも、怖い。戦場は恐ろしい。

 何かあったら殺されるのかもしれない。もしかしたら、殺される前に犯されるのかもしれない。戦場とはそんなものであると教わってきた。いつか上に立つのだから知っておきなさい。そう、お父様に先代皇帝に聞かされてきた。今、思えばあれは私を皇帝にするつもりでいたのかもしれない。次期皇帝という言葉がずっと前からあったのかもしれない。でも、そんなのは関係ない。私は私。私の名前はリーザ。決して皇帝になんかならない。私は皇帝じゃない。

 私はみんなの味方でいたい。みんなに守られるだけの存在では痛くない。だから、私は戦う。


 「私は戦場に行く。しっかりこの目でみんなが戦っている姿を見たい。私だけこんな場所に残っていたくはない!」


 私は素直に話す。怒られてもいい。でも、戦いたくはないけど少なくともみんなのそばにいなくてはいけないと思った。


 「本当にそれでいいの?」


 「ええ、いいわよ。これは私の決めたことだから」


 私ははっきりと返答する。この言葉に二言はない。これは私の覚悟の言葉なんだから。


 「分かった。あなたの覚悟をしっかり理解したわよ。だから、あなたを戦場まで送ってあげる。それでいいよね」


 「ええ、ありがとう。まさか認めてくれるなんて思ってもいなかったわ」


 「逆よ。むしろ正反対の答えを出していたら軽蔑していたわよ。あなたは所詮その程度の覚悟と器しかないんだって。でも、そう答えなかった。あなたはしっかりとした人よ。合格だから、みんなのことちゃんと見てあげてね」


 「うん!」


 私はユーの言葉に対して思いっきりの笑顔で答えた。

 みんながいる戦場までユーが転移系魔導器で連れて行ってくれるみたいだった。でも、その准部に若干手魔導らしいから少し待っていてと言われた。

 みんな。無事でいてね。

 私はみんなが戦っている戦場へと祈りを込めた──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ