第12話ケント編4
少ししてからケントは再び話し始めた。
「俺は……俺は本当は夢の限界に気づいていた。あなた、いや皇女様が言うとおり今は真の平和ではない。しかし、帝国を変えようとすることで皇女様が、騎士団の仲間が、町、いや帝国の国民といった多くの人が傷ついてしまう。俺は、もう誰一人傷つかせたくないんだ」
ケントの声は徐々にに小さくなっていき、床に泣き伏せた。
「…………ケント…………」
皇女様も、ケントの矛盾している思いに気づいていたらしい。
しばらくケントは泣いていた。
そして、皇女様は一言だけ言った。
「私と一緒に行こう、ケント」
そのたった一言しか言わなかった。多分それが皇女様なりの優しさ何だろう。やはり、皇女様は優しいお方だ。
一方のケントはというと、
「こんな、こんな俺でもよいのですか?」
「いや違うよ。ケントじゃないといけないんだよ」
「………ありがとうございます。俺はどこまでも皇女様の護衛させていただきます」
「うん。一緒に行こう」
皇女様は優しくうなずいた。
コケーコッ。
鶏が鳴いた。
外を見ると夜が明けて日が差し始めていた。
「全く寝ることができなかった」
ため息と皮肉混じりに俺はしゃべった。
「皇女様もケントもお互い納得いったか?」
「うん。大丈夫だよ」
「ああ、俺も大丈夫だ」
どうやら二人とも納得してくれたようだ。よかった。これで、ようやく旅に出ることができる。そこでユーイチが一言しゃべった。
「じゃあ旅に出よう!」
「お前が言うな!」
…………。全く勝手なことを言って。でも、重かった空気はもう完全に消えていた。皇女様もケントもユーイチもそして俺も笑っていた。
「皇女様が言ってください。出発の合図を」
俺が皇女様に言うと頷いてくれた。
「うん。いいよ。じゃあユーイチ」
「はいはい」
ユーイチは相変わらず皇女様を相手にしているのに「はい」を2回連続していう変なあいさつを言った。
「ケント」
「はい。皇女様」
ケントはというと騎士団の副団長らしく、片膝をついた正式な騎士のあいさつをした。
「ナヲユキ」
「はい。一緒に行きましょう」
俺も今の自分の気持ちを込めた礼儀をあいさつをした。
「行こう! 連合国へ!」
「「「オオオ~」」」
俺達の叫び声が店中に響いた。そして今日が俺達の冒険が始まる日…………………………………………のはずだった。
次回より予定では第2章に入ります。
しかし、家にはたくさんのラノベが………。読まないと。