第111話大戦黒幕編7
約1か月ぶりの更新で本当にすみません。
俺達の進撃はついに始まった。
始まりはどちらが撃った銃声なのかどうかははっきりとわからない。だが、確かに言えることはその一発の銃声が元となって戦闘が一気に加速し始まったことだけだ。
「「おおおおおおおおおおお」」
兵士達が一斉に王都に向かって走り出す。
「「おおおおおおおおおおおおおおお」」
その一方で王都側からも王国軍の兵士達が俺達を殺そうと一気に駆け抜けてくる。
「はあ」
「やあ」
「ぐはっ」
戦場はすぐに混沌と化した。敵味方誰が誰なのかわからない状態の混戦が始まった。俺は、その様子を少し離れた丘陵地で見ていた。
「隊長。わが軍は少々押されています」
「……そうか」
伝令係の言葉をあっさりとスルーする。何も考えていないように見えるかもしれないが実は俺もしっかりと考えることは考えている。
「俺が行くしかないのか」
これ以上犠牲者を増やすわけにもいかない。と、なればここからの戦いにおいて重要となってくるのは数ではなくて質になるかもしれない。
魔導器。
この言葉がここになって出てくる。
あの兵器の恐ろしさを以前叩きつけられた。見せつけられた。あの兵器の存在だけでこの戦いの行方が変化してしまうということを学んだ。学んだということはそれを活かさなければならないということだ。では、いつそのことを活かすのか。
今しかない。
「伝令。頼みたいことがある」
まだ待機していた伝令係の者に俺は声をかける。
「はっ。何でございましょうか」
「魔導器持ちの兵士達に連絡してくれ。今から一斉に攻撃を始めると」
「了解しました」
伝令係は俺の命令に頷くとそのまま各自に連絡するために行動を開始する。
そして、俺の方も行動を開始する。
魔導器。
俺もその力に魅せられた。その力さえあればなんにでも勝てるような気がする。しかし、それが間違いだということにも俺は気が付いた。
魔導器を扱う以前に必要なものがある。それは魔力ではないが、体力、技術そして一般の格闘術。基本的な動きが一番大事だということだ。
一般兵士にはそれが欠けている。そんな欠けている状態で戦ったところで俺に勝てると思うなよ。
俺は自分の右手に持つランサーを解放する。
「我こそが世界の王我こそが世界の神我こそが世界そのもの創造せよ破壊せよ魔導器『THEWORLD』顕現っ!」
これが俺の魔導器だ。魔導器『THEWORLD』。世界という名称がついている恐ろしい代物だ。破壊力抜群だ。
この力で俺は帝国を倒す。
「さあ、行くぜ」
俺は丘陵地を跡にして戦場へと向かう。
「やああああ」
「ぎゃあああああ」
「はああああああああ」
「ていやああああ」
戦場に近づくごとに兵士達の入り乱れた声が耳の中に入ってくる。
戦場の中では人は人ではなくなる。
俺は今から何人の人を殺すのであろうか。そんなことをつい考えそうになり辞める。戦争とはこういうものだと割り切らないといけない。
俺は、近くにいた帝国方の名もなき兵士に向かって全力でランサーを突き刺す。体の中心には丸い穴ができていた。俺のランサーには赤い液体がねばりついている。
戦争とは残酷だ。
だからこそ、早く終わらせるんだ。そう、俺が。
名もなく兵士達がほかにも大量にいる。
俺はそいつらに向かって魔導器の技を発動する。
すまないが、ここで死んでくれ。
俺は懺悔して、そして攻撃をする。
「絶対落雷」
俺はランサーの先端を天に向ける。つまりはランサーを縦に持ったということだ。そして、縦向きにしたランサーの先端から空に向かって青っぽいきれいな光がまっすぐに放たれる。そして、その光が天まで行くと突如として雲一つとしてない青空だった空にどんよりとした黒っぽい色の雲が発生し、天候が怪しくなってきた。そして、ゴロゴロゴロと雷の音が発生していく。
そして、最後には……
ビシャーン
落雷が発生する。
敵の集団のちょうど中央付近に雷が落ちる。
「ぎゃあああああああ」
「ぐわああああああああああ」
「ぴやああああああああああ」
落雷と同時に敵の悲鳴が上がる。
雷が直撃したんだ。生きていられるはずがない。
すまない。名も知らない兵士達よ。お前たちには家族もいるかもしれない。でも、俺にだって守るべきものがある。だからそのために俺の正義のために死んでくれ。ここは俺の通り道だ。誰にも邪魔されるわけにはいかないんだ。
「はあはあはあ」
俺の息が若干上がる。
魔導器の大技を発動した後はとても体力的に来る。いくら体力があったとしても足りないほどだ。
だが、体力なんか知ったこっちゃない。俺はやるんだ。何としても帝国を倒すんだ。
「ほお、だいぶ疲れているようだな。さぞやあの大技に力を持って行かれたということか」
「っ!?」
突然声がかけられた。
後ろを振り返る。
俺の後ろの光景というのは落雷によって感電死した兵士の死体の山のはずだ。死体以外があるはずのない光景のはずだ。そう、そのはずだ。
しかし、俺の後ろの光景は確かに死体の山で埋まっている光景であった。しかし、それ以外に生きている人が1人だけいた。そう、生者が1人いた。
青色の髪、長身、顔はとてもイケメンでありどこかの貴族の御曹司とでもいえばいいだろうか。とにかくオーラから只者ではないということが分かった。
「き、貴様どうやって生き残った!」
俺は叫ぶ。
「そんなに叫ぶなよ。お前も気づいて入るんだろ。俺がどうやって生き残ったかということを」
この自信満々の男の言いようから察することができる。おそらく、こいつがどうやって生き残ったかというと、
「魔導器、か」
「そうだ。俺もお前と同じように魔導器の使い手だ。なかなか手ごわい相手だろ。さあ、勝負と行こうじゃないか」
男はそう言う。
こいつと戦うことはどうやら避けられそうにはないようだ。
俺はランサーを再び強く握りしめる。
本気の殺し合いが今始まろうとしていた。




