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第11話ケント編3

 その人物というのは───


 「ナヲユキ! 皇女様を見なかったかっ!」


ケントでした。会いたいと思った瞬間会えてしまうなんて神様どんだけすごいんだよ。まぁ俺は神様を信じてないけどな。

一方ケントはというと、

 

 「皇女様を探すのが大変だったよ」


 「そうだったのか、大変だったなケント」


 ケントは皇女様を探しているときの回想を話始めた。

 今から約30分前。

 

 「しかし、あそこには…だが行ってみる試しはある」


 俺、ケントは皇女様を探している途中に皇女様が行きそうな場所が一つだけ思い浮かんだ。その場所は、かつて俺と共に騎士団に入団しその才能は騎士団一とまで言われたことのある親友ナヲユキが下町で開いている『何でも屋』という場所だ。俺は、皇女様にその店の話をしたことがある。


 「ケント。何か面白い噂とかないの?」


 「そうですね皇女様。あっ、最近下町に俺の親友が開いたお店がすごいみたいなんです」


 「そうなの? どんなお店?」


 「ええ~と。確かお店の名前は『何でも屋』とかいいまして仕事内容はお助けやらいろんなことを何でもやる店らしいです」


 このような会話をした覚えがある。たぶん皇女様はこの話しを思い出してナヲユキのもとに行ったのだろう。とにかく俺も行ってみよう。

 ジリリリリリリリリ。

 『電話』の鳴る音がした。おそらくは騎士団員からの連絡だろう。


 「ケントだ。皇女様はみつかったのか?」


 「すいません副団長。帝都最上部マドー城、上層部モンチ以上の地域では皇女リーザを発見することができませんでした」


 だろうな。俺は心の中でそう思った。やはり、下町が最有力だ。ここはあえて騎士たちに誤った情報を与えて皇女様から離すか。ただ、それではまるで俺が反逆者だ。だが、今は皇女様の真意を知っておきたい。


 「いや、たぶんあの方はこの町には詳しくないはずだ。誰か協力者がいるはずだ。先ほど捜索した地域の一般人または貴族の家の中で潜んでいる可能性も無きにしも非ずだ。一応、もう一度確認しておけっ」


 「はいっ」


 会話が終わった。これでしばらくの間は騎士団員から連絡はこないだろうし、下町にまで来ることはないだろう。こうして俺は、ナヲユキのもとへと向かった。

 

「で、皇女様がまさか本当にいますとは。早く帰らないと大臣に怒られますよ」


「いやだよ! 私はもうあんな場所には帰りたくはないの!」


「どうしてですか? あなたは皇帝の空位状態の今、皇帝になるべき方なのですよ。帝国の平和維持のためお願いします」


「い・や・だ・よ! 絶対に嫌!」


「ダメです。きてもらいますよ!」


皇女様とケントが言い争っている。ここは俺が仲介に入って何とかしないとな。俺はユーイチと目を合わせてみるとユーイチは頷いていた。OKということだと考えていいな。じゃあ俺が止めるとするか。


「あんな城のどこが良いのよっ」


「あれほど立派な城など世界にひとつとてありませんよっ」


「皇女様、ケントここは一回俺の顔にめんじ───」


「「アナタ(ナヲユキ)は黙ってて!」」


 秒殺されてしまった。なぜ、ここだけ息が合うのだろうか。仕方なく、争いが終わるのを待っているとするか。そう考え退散すると、また言い争いが始まった。


「あなたは、旅に出てどうしたいのですか?」


「私は、行方不明になっている兄様を探したい! かつて魔術大戦を始めたこの悪の帝国から逃げ出したい! 逃げ出したい! この2つが私の願いよ!」


「っ!」


「何よ、何も言い返せないの」


皇女様の優勢だな。ケントが何も言い返せなくなっている。やっと言い争いが終わるのか。


「確かに、帝国は十三年前に魔術大戦と言われるようになった戦争を開戦しました。確かにそれは悪いことですよ。しかし、今は平和となりました。この平和を守り続けることが大事なのですよっ」


「ケントは何も分かっていないよっ! これが平和! 嘘言ってるんじゃないよ! この世界は偽りなのよ。ノルランド神話的に言うと世界の歯車は狂っているんだよ。あなたも知っているじゃない? 帝国が近々第二次魔術大戦を開戦しようとしていることを。連合国を完膚なきまでに叩き潰そうとしていることを、またあの悪夢を甦らせようとしているんだよっ!」


「知っていますよ。でも、あなたが皇帝になればそれも止まることが出来ますよっ」


また、白熱してきたよこの2人の言い争い。いつになったら終わるのだろう。 まったく眠いよ。


「ケント。止めたくとも止められないよ。奴らは私を傀儡同様に思いのまま扱おうとしているんだよっ」


「それは……俺が守ってあげますよ」


「そんなことを言うのだったらねケント。あの時、あなたが話してくれた騎士団から帝国を変えると言っていたのは何? これがその答えなの?」


「あなたが皇帝になれば、俺もいろいろと動きやすいのですよっ」


「全部ウソじゃない! 私が皇帝になれば動きやすい。本当にそう思っているの?」


「それは……………………………」


「答えられないの?」


「俺は……俺は……」


 皇女様の問いかけに突然ケントは答えることをやめた。否、答えられなかった。

ケント編も次回で完結予定。

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