第1話プロローグ
「私と一緒に来てくれる?」
俺とユーイチの前でこのファン帝国の皇女様──リーザ様はそう言った。
「どういうことですか皇女様?」
俺は皇女様の真意がわからないので質問した。
皇女様はこの国……ファン帝国の第17代皇帝の長女であるとても高貴なお方だ。
そんな彼女が、俺達みたいな帝都の下町でちっぽけな何でも屋をやっているような元騎士の庶民と一緒に旅に出ようという依頼をするということは相当大変に違いない。
俺は何とかして皇女様をこの悪しき国から逃がしてあげたい、だから俺は決断した。
「俺達の力は微力ですが皇女様のためならば俺達は何でもいうことを聞き、どこまでもついていきます」
俺は皇女様に応えた。皇女様は俺の言葉に笑顔で返事をしてくれた。
「ありがとう!」
皇女様はほっとした表情をした。おそらくはとても不安であったのだろう。不安になるほど皇女様は追い詰められていた。そういうこととなる。
しかし何でこんなことになったのだろう。俺はふとそう思う。
この世界の歯車は一体いつから狂ったのだろうか。いや、最初からずれていたのかもしれない。
やつが魔神と呼ばれるものがこの世界に現れたあの時から──
今から、約九百年以上も昔のこと。
後に魔神と呼ばれるモノがこの世に突如として現れた。ただ、魔神の正体はわかっていない。人間であったのか。魔物であったのか。はたまた龍であったのか。
ただ、これら魔神は人々に「魔術」と呼ばれる力を与えることから人々に敬われるようになる。そして貧しかった人々の生活は前よりもはるかに豊かになっていった。
誰もがこの繁栄がいつまでもいつまでも続いていくものだと思っていた。しかしそのような繁栄も長くは続かなかった……。
魔神らはその存在を潜めてしまったからだ。なにがあったのかはわからない。当時の歴史について書かれた書物は「ノルランド神話」と呼ばれる神話だけである。しかし、この歴史書には詳しいことは書かれていない。もしかしたら最初から魔神は存在していなかったかもしれない。しかし、正確にわかっていることはこの時「魔術」が世界に生まれたということである。
その後、人による「魔術」の研究が進められ『魔導器』という「魔術」を内装した秘具が開発された。これにより万人が「魔術」をいつでもどこでも使えるようになった。 その『魔導器』という道具が発明されてしまったのが今回の事件の発端であるのだ。
では、そろそろ俺ナヲユキがどうして皇女様と一緒に旅をすることになったのかを語るとしよう。それにはまず皇女様が逃亡してきた過程から話す必要がある。