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契約者は侵害する! ~天国の任務編~

作者: るなふぃあ

注意:このお話は本当なら先にテーマ『丸』についても議論し合っているのですが……そちらの方はとある大賞に応募しちゃったので載せることができません。

つまり、その話し合いの翌日のお話となっていますので……キャラ紹介とか一切ありません。

 今日も今日とて天国のとある部屋にて―――

「今日は『おっけ~』について話し合いたいと思いますっ!」

 天使ルナがホワイトボードに『おっけ~』と書きながら、自信満々な顔でそう言ってきた。

「ルナ、どうして『おっけ~』なんだ?」

 文字にすごく違和感がある。普通だったら『OK』か、『オッケー』のどちらかだと思うんだけど……どうして平仮名なんだ?

「えっと、それはですね」

「うん」

「私にもよくわからないんですよっ! キリッ」

「即答かよ!? 少しは考える仕草を見せろよ!」

 さすがにイラっとくるぞ。考えるということを覚えろと言いたい。

「でもわからないものはわからないんですから、考えるだけ無駄というものじゃないですか、キリッ」

「そんなことねえよ! 考えたら何か思い出したり、わかったりするかもしれないだろ!? それに『キリッ』とか口で言わなくていいからな!?」

 普通なら三回目で注意するところだけど、俺の場合は二回までだ。三回目はない。

「三回目は言わせてくれないんですね……」

「やっぱり言うつもりだったのかよ!?」

「……キリッ」

「だから言わんでいいわ!」

 キリッなんて口でいう奴……初めて見たぞ。チャットとか掲示板の書き込みとかなら見たことあるけど……現実で言うのってどうなんだろう……。

「トノサマ。現実でこうして口にするのもありだと思います。……だってその方がわかりやすいじゃないですか」

「いやまぁ、そうかもしれないけど」

 雰囲気とか表情とかでそういうのは伝わると思うぞ。だからわざわざ口で言う必要は―――

「無いということありません。こうしてわざわざ口にして、トノサマが会話文を書くだけで済むようにしてあげたんですから。だから感謝してくださ―――か、感謝しなさいよね!?」

「なんでツンデレ口調!?」

「え? だってトノサマはツンデレが好きなんじゃないんですか?」

「いつ言ったんだよそんなこと! ……別に嫌いじゃないけど、好きでもねえよ」

 マンガやアニメなどで見るツンデレは微笑ましかったりするけどさ……現実のツンデレって面倒くさいんだろう?

「そうなんですよ、面倒くさいんですよ。トノサマはツンデレですからね」

「なん、だと!?」

 さらりと衝撃の事実を言われてしまった―――って事実? いやいやいやいや、事実じゃないはずだ。俺がツンデレなわけがない!

「略して『俺ツン!』ですね、トノサマ」

「略さんでいいわ! どこのタイトルのパクリだ、どこの」

「え、それはもちろん―――」

「言わなくていいからな!?」

 はぁ、はぁ……開始数分で息切れしそうになったじゃないか。……いや、それよりも話を戻そうか。

「あのさ、ルナ……いい加減考えてから議題を挙げろよな」

 結局『わからない』って自分で言ってたんだから、理由もなくただ挙げた――ただの思い付きだったということだ。……昨日注意したばっかりじゃねえか。ていうか、毎日注意してるし。

「む……トノサマ。何か誤解しているようですが――今回は私が議題を考えたわけじゃないんですよ」

「え、そうなのか? ……んじゃあ誰が考えたんだ?」

 ルナ以外になるのなら……俺はもちろん違うし、ルナの友達―――なわけないよな、うんうん。

「どうしてそこで納得するんですか! 私にだって友達の一人や二人―――」

「いるっていうのか?」

「え、ええ! いますとも!」

 そういう割には、ルナの顔に徐々に焦りが見え始めている。……ははぁん、やっぱりそういうことか。

「な、何がそういうことなんですか!」

「え? 言ってもいいのか? じゃあ訊くけどさ……その友達の名前はなんなんだ? ちなみにティグリスはなしな」

 ティグリスというのは地獄で出会ったルナの同期の天使のことだ。関係は友達というよりもライバルに近い。

「ぅ……」

 先にそう言われたためか、小さく唸るルナ。おそらく思いついた天使の名前がそれだけだったのだろう。

 ……ふむ、これくらいにしておこうか。

「やっぱりこの話題は止めておこう」

「トノサマ?」

 さすがに可哀想になるからな、ルナが。いくら俺が普段から弄る立場だったとしてもルナの気持ちは考えている。

「と、トノサ――」

 自分の口から『どうせ私にはいないですよッ』なんて開き直られても面倒だし、逆に落ち込まれても面倒だからな。

「ッ……。め、面倒って、今『面倒』って言いましたよね!?」

「うん? そりゃそうだけど……」

 面倒以外のなにものでもないだろう。

「ぜ、全然私の気持ちなんて考えてないじゃないですか! さっき私が一瞬抱いた感動を返してください!」

「しゃーないなぁ……ほら。これでいいか?」

 ポケットに入れてあった一口チョコレートを取り出し、ルナの口に放り込んでやる。

「んぐんぐ……お、美味しいですね、このチョコレ――って、食べ物を頂いても許しませんからね!?」

「ちっ……」

 食べ物に釣られなかったか。

「当たり前です! 私を食べ物で釣ろうなんざ一〇〇年早いです」

 と、言いながらもこちらに手のひらを差し出してくるルナ。言っているセリフに対して行動が矛盾しているため、全く説得力がない。

 ……まぁいい、とりあえずあと五個くらいで機嫌は直るか?

「ほら」

 再びポケットに手を入れて一口チョコレートを取り出し、ルナの手のひらに乗せてやる。

「んぐんぐ……ん」

「ほら」

「んぐんぐ……ん」

「ほら」

「んぐんぐ……ん」

「ほら―――って何回続けるんだよ!」

「え、あと一つくれるんじゃないんですか?」

「やらねぇよ! ていうか、ちゃっかり数えてんじゃねぇよ!」

 ちなみにもう一口チョコレートは、ポケットの中に一つも入っていない。おやつがてらに食べようと思っていたのに……全部ルナに費やしてしまったじゃないか。

「なっ!? あと一つないとはどういうことですか! さっき五つあげるって言ったじゃないですか!」

「言ってねえよ、思っただけだろそれは! それにどんだけ卑しいんだよお前は!」

「卑しくなんかありません。私は上品に咀嚼べています」

「そういう意味で言ったんじゃねえええええ」

 これだからルナは。文句の一つや二つを言ってやりたいが……とりあえずこのことは置いておこう。そろそろ始めないとやばいしな……。

「そうですよトノサマ! 議題を挙げてからすでに五分近く進んでいます!」

「誰のせいだと思ってるんだ、誰の」

「トノサマのせいに決まっています」

「俺のせいかよ!?」

「はい、そうです。だから……ん」

「『だから……ん』じゃねえよ! もうチョコレートはないからな!?」

 これはさっきも言ったはずだ。なのに手のひらを差し出してくるとはどういうことか! だからどんだけ卑しいんだよお前は。

「卑しくないと言ったじゃないですか。このようにして上品に咀嚼べて――」

「もうそれはいいってばあああああああ」

 一体何回続けるつもりなんだろうか……、やばいんだろ時間!? まだ五分しか経っていないけど―――このままの調子だと雑談だけで終わっちまうじゃねえか。

「ということでルナ。話を戻そう」

「チョコレートをくれるんですね!?」

「そこに戻るんじゃねえよ! もっと前だ、もっと前」

「もっと前……ですか?」

「あぁ、そうだ。誰に議題を与えられたのかってところだ」

「…………」

「『おっけ~』、『おっけ~』についてだよ! ルナが提案したんじゃないんだったら誰なんだってところだよ!」

「あ~、そういえばそんなことありましたね~」

「…………」

 凄いのんびりした口調で言われた。……なんか今日のルナはいつにもましてひどいような気がする。

「で、結局誰に議題を与えられたんだ?」

「えっと……」

「えっと?」

「誰でしたっけ?」

「そんな大事なことも忘れちまったのかよおおおおおおお」

 ひどい、いくらなんでもひどすぎる。俺たちに議題を与えてきた人を忘れてしまうとはどういうことか。……もう今日は解散した方がいいんじゃないかなあ。昨日の素晴らしいルナはどこへ行ったのやら……。

「昨日の私が素晴らしい、ですか」

「あぁ、かなり素晴らしかったと思うぞ」

 内容をしっかり覚えていたし、理解力もあったし、最後にはきちんとまとめをできたし……今までのルナの中で一番素晴らしかったんじゃないだろうか。

「へ~、そんなに凄かったんですか。それでしたら………シャキーン! 戻りました昨日に」

「戻らねえよ! そんなんで戻ったらびっくりだよ! ていうかお前本当に大丈夫か? 変な物でも食ったんじゃねえのか?」

 ちょっと心配になってきたぞ。いくら天国が天使たちに平和を保たれているとはいえ、怪しげな食べ物があってもおかしくはない。もちろん俺は見たことも聞いたこともないのだが――

「失礼ですねトノサマ。私はいつも通りですよ!」

「そうか、そういうことか。……昨日変な物を食べたんだな。だからあんだけ冴えてたんだよきっと」

 今思い返せばそうだった。これが常態だった。昨日のルナが凄すぎたせいで、今日はやけにおかしく感じるのか……。

「変な物なんて食べていません。それに――昨日の私に戻りましたからすでに完璧です」

「どこがだよどこが! じゃあ誰に与えられたのか思い出したって言うのか!?」

「もちろんです。『おっけ~』という議題は『お父様』に与えられました、キリッ」

「微妙に戻ってるぅぅぅぅぅぅ!?」

 『キリッ』なんていう発言をするところは除くが、まさかさっきの『シャキーン!』で昨日のルナに戻るなんて……。いやまぁ、もちろんうれしいことなんだけど、うれしいことなんだけどさぁ……絶対におかしいだろそれ!

「別におかしくはないと思います。……それではトノサマ。早速議題に取り掛かりましょう。『おっけ~』についてです」

「お、おう。そうだな……」

 一気に殊勝な態度を取り始めるから驚いた。やっぱり戻っているというのか、昨日のルナに……。

「だから戻ったと言ったじゃないですか。……ほら、始めますよトノサマ。トノサマが話を脱線させようとしてどうするんですか!」

「お、おう……悪いな」

 そうだ、俺が話を脱線させようとしてどうする……って、ルナが胸中を読み取らなければこんなことにならないんじゃ―――

「てへぺろっ」

「『てへぺろっ』じゃねえよ! やっぱり戻ってないだろおまえ」

「……キリッ」

「もういいよそれは! どんだけ引っ張るんだよっ!」

 ツッコミを入れるのもそろそろ疲れてきたぞ。

「じゃあ止めればいいじゃないですか」

「誰のせいだよ、誰の」

「トノサマのせいに決まっています」

「俺のせいかよ!? ――って、何回続けるつもりなんだよ、このやり取り! 永遠ループじゃねえか!」

「そうですよ?」

「…………」

 どうやらルナの術中にハマっていたらしい。ダメだダメだ。このままだと練習時にやってしまった失敗を繰り返してしまう。

「……それじゃあ気を取り直して。『おっけ~』について議論し合うんだけど……、お父様に与えられたってさっき言ったよな?」

「ええ。言いましたよ」

「ということは、だ。わざわざ平仮名にして『おっけ~』という字にしてるんだからさ、それに何らかの意図があるはずだと思うんだ」

 お父様はルナとは違ってしっかりしているからな。だからただ単に『おっけ~』にしたということはないはずだ。

「私と違ってしっかりしているという部分に異論はありますが……まぁ、いいでしょう。確かにトノサマの言う通り何らかの意図があるような気がしますね」

「だろ? つまり、それについて考えていけば複数ある答えの一つにはたどり着けるんじゃないかなと思って」

 答えは一つだけじゃない。複数あるのは間違いないはず。もちろんその答えは絶対に正しいとかそういうんじゃないけども。

「じゃあ、わざわざ平仮名にしてるんだからさ。何か『OK』や『オッケー』とは違うところ――感じ方とかがあると思うんだけど……ルナは『おっけ~』は他のやつと何か違いがあるとか感じたか?」

「んー、そうですね……」

 ルナが考え始めたので、俺も一緒に頭を悩まし始める。『おっけ~』ねぇ……『OK』や『オッケー』と伝わるイメージの違いがあるとすれば―――

「あ、トノサマ」

「ん?」

「私が感じたのは『ゆる~い』という感じですよ」

「『ゆる~い』か……。確かにそうかもな」

 他の二つと比べたら『~』がある時点で緩いイメージになると思う。平仮名っていう点もそうかもな。明らかに英語やカタカナで書くよりも柔らかいというか幼いというか……そんなイメージになると思う。

「一応俺の考えも言っておこうかな。まず『OK』っていうのはさ、なんだかこう――『シャキーン』としたようなイメージはないかな?」

 さっきのルナでもないけどさ……、任務とかで使いそうな『了解』とか、『承知した』とか、そんな感じ。『お堅い』って表現したらいいのかな? とりあえず『おっけ~』のような緩さはない。

「そう、ですね……。『おっけ~』には明らかに『了解!』みたいな感じはありませんよね」

「だろう? んで、もう一つの『オッケー』の方なんだけどさ……、これは友達同士で使うようなイメージでいいんじゃないかなぁと」

「友達同士……ですか」

「あぁ、そうだ。例えば俺がルナに何か頼みごとをした時にさ、ルナが『いいよ』っていう返事をするときになんて言う?」

「それはもちろん『わかりました』って言いますけど」

「いや、そうじゃなくて。……俺が訊きたいのは、『OK』か『オッケー』か『おっけ~』のどれを俺に対して使うかってことだよ」

「ん~、それならば私は―――『オッケー』じゃないですかね?」

「どうして?」

「それは……やっぱりトノサマが先ほど言ったような感じじゃないですかね。『OK』はなんだか任務の時みたいな感じがしますし、『オッケー』だと軽いノリといいますか……むー、何と言ったらいいんでしょうか……」

「難しいよなそこは」

感じ方についてだから『何となく』というようなことが多いはずだ。俺もそうだし……。それに初めから『ここでこう感じるから私はこのようにして用いている』みたいに言う人がいたら、それはそれで―――

「変態ですね」

「それを言うなよ! 確かに一瞬そう思ってしまったけども」

 失礼だろういくらなんでも。そこは『凄い』とか『大したものだ』とかそう言うべきなんじゃないかな……うん。

「それじゃあ……初めの方に戻ってみようか。平仮名にすることでなんか感じ方が変わるって言ったよな?」

「ええ、そうでしたね」

「だからさ、とりあえずカタカナか英語のものをあえて平仮名で言ってみるのはどうだろうか。もしくはあえて平仮名にした方がいいようなものとかもあるかもしれないし……」

 今回の議題のように『OK』や『オッケー』をあえて『おっけ~』と言い替えるように。この場合はどこがどうよくなったとかそういうことは不明だが、伝わり方は間違いなく変わったはず。

「それはなかなか面白そうですね、トノサマ」

「だろ?」

 こうすればルナも飽きてこないだろうし、わざわざ平仮名に言い替えているという点において何か重要なことがわかるかもしれない。

 そしてルナと共に頭を悩ますこと数十秒。

「はいはい、トノサマ!」

「ん? 早速何か思いついたのか?」

「はい! 『トノサマ』を『とのさ~ま』にしたら面白くなると思います!」

「どうしてそうなる!? ちなみに面白さは求めてないからな!?」

「いえいえ、トノサマ。面白さは重要ですよ。ですから『トノサマ』を『とのさ~ま』にしたら―――」

「したら?」

「すっごくマヌケそうになるじゃないですか!」

「なんで嬉しそうなんだよおおおおおお。そんなに俺をバカにしたいのかお前は!?」

「はい!」

「…………」

 俺をバカにして一体何の得があるのだろうか。さっぱりわからない。さっぱりわからないが……これで一つわかったことがある。

「ルナ、使い方が重要だということが今判明したな」

「え? そうなんですか?」

「あぁ。もし外で『とのさ~ま』なんて俺が呼ばれてみろ。絶対に『こいつバカなのかな』なんて思われるに違いない」

「そうでしょうか。とのさ~まの気のせいだと思いますよ?」

「えー、そうかなぁ……」

 やっぱり俺の偏見なのかなぁ―――って

「さりげなく使うんじゃねえ!」

「ではでは、とのさ~ま」

「だから使うんじゃねえってば!」

「とのさ~ま……くすっ」

「呼んで面白がっているよな絶対!」

「そ、そんなことないですよ? とのさ~ま……くふっ」

「…………」

 もう放っておいた方がいいのかもしれない。……さてさて、『とのさ~ま』以外の平仮名にしてイメージが変わる何かでも考えてみるか……。

「あっ、トノサマ」

「どうした?」

「『アイスクリーム』を『あいすくり~む』にするのはどうでしょうか」

「絶対溶けてるよなそれ!」

「『チョコレート』を『ちょこれ~と』はどうでしょうか」

「完全にどろっどろじゃねえか!」

「つまり『トノサマ』を『とのさ~ま』にすることで――」

「溶けないからな俺は!?」

 食べ物と同類扱いされるとはいったいどういうことか。まさかルナは俺を非常食とかそういうものと勘違いしてるんじゃ……ない、よな……?

「え、非常食じゃなかったんですか?」

「勘違いされてたあああああああああ」

「くすくすっ、冗談ですよ、冗談」

「……ッ」

 まさかルナに弄られるとは……。いつもの立場が完全に逆転しているじゃないか。

「『相手にやったことはいずれ自分に返ってくる』ですよ、トノサマ」

「わざわざそれを再現しなくていいからな!? 俺は常にルナを弄る側でいいんだよ」

「……ドSですか、トノサマ」

「そうだよ。俺はドSなんだよ。そしてルナはドMなんだよ」

「勝手に決めつけないでくれます!?」

「え、違ったのか?」

「そ、それは……違わないですけど……」

「うん? なんだって? はっきり言ってくれ、はっきりと」

 ごにょごにょ言うから聞こえなかった。……いや、これは本当で。昨日のように聞こえたけど聞こえなかった云々じゃなくて。

「……ッ。そ、それなら……なんでもないです!」

「『それなら』ってなんだよ、『それなら』って」

 明らかにおかしいだろ。『それなら』って……。もしルナのセリフが聞こえてたら違ったりしたのか?

「と、とにかく話を戻しましょう。また脱線させてますよ、トノサマ」

「おっと、そうだな。……ご、ごほん。それでは気を取り直して――」

 またルナに注意されてしまった。さっきのやつは気になるけど……置いておこう。……それにしても珍しいな、ルナに二回も注意されるなんて。今日のルナはアレだが……今日の俺も結構アレなのかもしれん。これは完全にルナ病に感染っちまったな。

「『ルナ病』って何ですかトノサマ! 新手のいじめのつもりですか!」

「小学生がよくやる『わー、わー、○○菌が感染ったー、ほれタッチ。はい、これで俺は無敵だからねー、一回感染ったらもう感染らないんだからねー』的な?」

「まさかやるつもりですか!?」

「んー、そうだなぁ」

 やってみるのもそれはそれで―――って、ダメだダメだダメだ。完全に脱線してる! これじゃあ練習時の二の舞じゃないか。

「脱線回ですね、今回は」

「それを言うなよ!」

 あぁ、やっちまったなあ。絶対お父様に怒られる。下手をしたら『書き直せ!』とまで言われるかもしれない。

「……よし、無駄にしないためにもルナ。今からまじめに取り組むぞ」

「いつだって私はマジメですよ? キリッ」

「…………」

 ツッコミたい、ツッコミたいけど……ダメだ! これ以上話を逸らすわけにはいかない!

「それじゃあルナ」

「ツッコまないんですか?」

「……それじゃあルナ」

「ツッコまないんですね?」

「…………それじゃあ、ルナ」

「完全に無視ですね」

「………………それじゃあ、ルナ――って何回続けるつもりなんだよ!?」

「永遠ループでいいじゃないですか」

「よくねえよ! そんなこと繰り返しても面白くねえからな!?」

「いえいえ、トノサマ。『ボケやツッコミ』も追求し続ければ面白くなるものですから、きっと『脱線』も―――」

「お願いだから勘弁してください」

 ガッと勢いよく頭を下げる俺。……まさかルナに頭を下げるなんて。最悪だ、今日はきっと厄日に違いない。

「……なぁ、ルナ」

「なんですか?」

「今日はもう帰っていいか?」

「ダメに決まってるじゃないですか。まだ結論が出ていないんですよ?」

「……そう、だな。出てないもんな。これで終わらすわけにはいかないよな」

 なんとか自分に言い聞かせてやる気を出そうとする俺。……よし。……よし。大丈夫だ、きっと俺ならやり遂げられる!

「やる気が出てきたみたいですね、トノサマ」

「あぁ、なんとかな。……さて。じゃあ、さっきのボケとツッコミの中で感じたことなんだけどさ……、平仮名にすることで負のイメージ、もしくは幼稚なイメージを与える気がするんだ」

「負と幼稚……ですか?」

「うん。さっきの『アイスクリーム』や『チョコレート』をそれぞれ平仮名にしたことで『溶けている』ってイメージを与えただろ?」

「……そう、ですね」

「だろ? これは人にもよるけど、俺にとっては負のイメージだ。溶けたアイスなんてあんまり良い感じがしないし、ドロドロのチョコレートなんて食べたいとは思わない」

「私はそう思いませんけどね。……溶けているアイスと言えばシェイクでしょう?」

「いや、それは違うだろ! 俺が言いたいのは棒状のアイスとかが溶けた状態のことを言ってるんだよ」

 あのドロドロしてて非常に食べにくくなっている状態のことだ。

「……えっちぃですね、トノサマ」

「どうしてそうなる!?」

「だって今、トノサマは私にドロドロに溶けた棒状のアイスを口に無理やり突っ込むことを想像したでしょう?」

「してねえよそんなこと! えっちぃのはお前の頭だろ!」

「……えっちぃという言葉をトノサマの口から聴けたのでそれだけで十分です。御馳走様でした」

「…………」

 何なんだろう、今日のルナは。……キャラが崩壊してねえか? まぁいいや。ルナの性格が安定しないのは地獄の時に思い知らされたことだし。

「ご、ごほん。……それで、だ。これで負のイメージというのはわかってもらえたと思うけど、次は幼稚なイメージについて説明していきたいと思う」

「幼稚なイメージですか。……それについては私もなんとなくわかりますよ」

「本当か?」

 珍しいな。今日の調子ならルナは絶対負のイメージすら理解できてないと思ったんだけど……。

「え、負のイメージについてはまだわかっていませんよ?」

「やっぱりかよ!」

「まぁいいじゃないですか。細かいことは。それでは幼稚なイメージについてですが――」

「…………」

「な、なんですかその目は」

「……いや、なんでもない。続けてくれ」

「こ、こほん。では……幼稚なイメージについてですが、それはまさしく先ほどの通りじゃないでしょうか」

 先ほどの通り―――おそらく俺と言いたいことは同じなんだろう。ほら、『アイスクリーム』を『あいすくり~む』と言った時のことだ。あれは『溶けている』という負のイメージを与える場合とそうじゃない場合があるんだ。

 例えばアイスクリームを知らない子どもがいたとしよう。その場合、ほとんどの確率で『あいすくり~む?』と訊くはずだ。もちろんこれには語尾に『?』が付くことになるが……小さな子どもが何かわからないものを訪ねるときにはよく平仮名で表されることが多いと思う。小説なんかでもそうだろう?

「え、そこだったんですかトノサマ」

「え、違ったのか?」

「はい。私は『あいすくり~む』の部分ではなくて『とのさ~ま』のところでですね――」

「その話はもういいからな!?」

 どんだけ俺をバカにしながら話を進めたいのだろうか。これは俺の偏見なのかもしれないが、少なくとも俺本人がそう感じているのだから話題にしないでほしい。

「……これだからトノサマは」

「なんで呆れられるんだよ! ……まぁ、いいや。それで、だ。幼稚なイメージと言えば―――あ、そうだルナ」

「なんですか?」

「阿鼻叫喚の意味って知ってるか?」

「あび、きょーかん?」

「……ふっ」

「な、何で笑うんですか!」

「今ちゃんと記録したからな。ルナが『あび、きょーかん?』って平仮名で言ったことを!」

「そ、それがどうかしたんですか!」

「つまり『あいすくり~む?』と同じってことだよ。さっきの場合は小さな子どもが――っていう前提だったけどさ……、この場合は年齢が低いっていうわけじゃないだろう?」

「まぁ……そうですね」

「だから平仮名に置き換えるということは『意味が分からない時』にも使われるってことだよ。……ふぅ、漸くひとつ進んだ気がする……」

 ちなみにルナは俺と同年齢らしい。ルナの場合は天使だから、生まれた時からずっと成長せずにこのままの姿なんだけど……生まれてからの年を数えるとちょうど俺と同じらしい。

 いやそれにしても、まさかルナが阿鼻叫喚の意味を知らないとはな……。

「心の中で私をいじめてるつもりですか、トノサマ。残念ですが『あびきょーかん』の意味くらい知っているんですからね! トノサマの顔がまさにそうじゃないですか!」

「え……」

 いやいやいや、う、嘘だろう?

「嘘じゃありませんよ?」

「…………」

 まさかそんな風に見られていたとは……。ちなみに阿鼻叫喚の意味は悲惨な状態に陥っているとか、ひどい状況で泣き叫んでいるとかそんなイメージでいいと思うんだけど―――俺の顔が阿鼻叫喚のようなって―――

「あれ、トノサマ。そういう意味だったんですか? 私はてっきり顔がかっこよすぎて泣き叫びたくなるほどモーレツに胸がキュンキュンするっていう意味かと―――」

「どうしてこの漢字からそういう意味で捉えられるんだよ!? それに――きゅ、キュンキュンって……」

 なんだかものっすごい告白をされたような気がした。……うん、気のせいだ気のせい。無かったことにしよう。

「……さすがにそれはひどいんじゃないですかね、トノサマ」

「うん? もうちょっとはっきり言ってくれないと聞こえないぞ?」

「と言いながらも今度はしっかり聞こえてたんでしょう、トノサマは!」

「ちっ、バレたか……」

「今さりげなく舌打ちしましたよね!?」

「あー、はいはい。それじゃあ、話を戻すとして――」

「む、無視しないでください!」

 ゲシゲシ、ゲシゲシ、何度も脛を蹴ってくる。

「こ、こら、やめろ! い、痛いってば! 痣になるだろ!?」

「痣になっちゃえばいいんですよ、トノサマの足なんか。……ふんっ、です」

 どうやら完全にルナが拗ねてしまったらしい。……しゃーない、ここはひとつ――

「ルナ、ちょっと休憩しようか」

「…………」

「あー、なんだかアイスが食べたくなってきたなー」

「…………」

「それにチョコレートも食べたくなってきたなー」

「…………っ」

 ピクリと反応。……よし、ここだ。

「そうだなぁ、せっかく話題に出てきたんだからシェイクにしようかなー。ここからだとちょっと遠いけどあえて食べに行くっていうのもありかなー、ルナはどうするー?」

「…………」

 しかし意地を張っているのか、こちらの方をちらりと見ただけで頑として何も言わないルナ。

「そっかぁ……、ルナはいかないのかー、残念だなぁ……。それじゃあ俺は行ってくるからルナは留守番よろしくなー」

 がちゃりとドアを開け、外に出ようとする。と、ここで――

「ちょ、ちょっと待ってください! 私は行かないなんて一言も言ってませんよ!?」

「じゃあ、ルナはくるのかー?」

「……べ、別に『行く』なんてことも言ってません!」

「そっかぁ、俺はルナと一緒に行きたいと思ってたんだけど、それは残念だなぁ」

「……え?」

「じゃあ行ってくるからなー」

「だ、だからちょっと待ってくださいってば!」

 バンっと勢いよく立ち上がり鞄を持つルナ。

「なんだ? 一緒に行ってくれるのか?」

「と、トノサマが『どうしても』と言うのなら私は別に……」

「俺は『どうしても』ルナと行きたいんだよ。……ダメ、か?」

「そ、それなら仕様がないですね。い、一緒に行ってあげるんですから、感謝してくださいよね!」

「ありがとう、ルナ。……じゃあ、行こうか」

 そう言いながら手を差し伸べると、嬉しそうに俺の手を取るルナ。

 ……ふぅ、これだからツンデレは大変なんだぜ。


     * * *


「ただいまです」

「ただいま~」

 誰もいない部屋に声をかけ、帰ってきた俺たち。予想以上に時間がかかってしまった。

「この部屋を出たのが約二時間前ということは……向こうで一時間もゆっくりしてたのか」

「長居しすぎましたね……、でも私は楽しかったので全然気にしてませんよっ」

 にこにこしながらそう言ってくるルナ。行く時と違って機嫌はかなり良い。……まぁ、それもそうだろう。シェイクだけでなく、巨大チョコパフェを一人で食べやがったからな。……そんなに甘いものばかり食べてたら太るぞと言ってやりたいところだが、生憎俺たちは太らない。

「そうです、私たちは太らないんですっ。だから食べたいだけ食べればいいんですっ」

「はいはい。それじゃあさっきの続きをしようか」

 予想以上に時間を浪費してしまったからすぐに取り掛かった方がいいかもしれない。とはいえ、まだ夕飯の時間まであと五〇分ほどある。昨日のように終わってからゲーセンなどに行く時間はないが、余裕を持って終わらしておきたい。

「つ、続きをするんですか!?」

「え、嫌だって言うのか?」

「べ、別に嫌だというわけではないですけど……」

「じゃあ早くしようか」

「は、はい。わかりました……」

 なぜかはわからないが、頬を赤らめながら返事をするルナ。

 俺がそのことに対して首を傾げていると―――

「よいしょっと」

「ええ!?」

 いきなり服を脱ぎ始めやがった。

「ん……しょっと」

まず上着を脱ぎ去り、そして次はスカートに手をかけ――パサリと脱ぎ捨てる。その後も徐々に服を脱いで行き――ピンク色の下着姿になる。

「と、トノサマも早く脱いでくださいよ……」

「…………」

 わけがわからず固まる俺。ルナは相変わらず頬を赤らめたままで……下着に手を掛け、そして―――

「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ったあああああああああ」

「……はい?」

 ルナがブラを取って控えめな胸を晒したところでようやく我に返った。

「と、トノサマ……。もしかして下着は脱がせたい派、だったんですか?」

「そ、それはそうだけど―――って、そうじゃなくて!」

「どういうことですか」

「と、とにかく服を着ろ!」

「……そうでしたか。……トノサマは服を着たままヤりたい気分だったんですね」

「違うからな!?」

 どうしてそんな変態扱いされなきゃいかんのだ! でも……服を着たままヤるのはそれはそれで―――って、何考えてんだよ俺!

「と、とにかく服を着ろ、な?」

「え……、だって『続き』をするんですよね……?」

「そうだけども! 勘違いしてるだろ、絶対!」

「はい? ……ま、まぁ、トノサマが服を着ろと言うのなら着ますけど……」

 なんだか納得しないような顔をしながらも服を着始めるルナ。……ふぅ、何とか一難去ったか……。

 そして、ルナが脱いだ服を再び着なおしてから。

「トノサマ。……服を着ましたけど、一体どうやって―――はっ、もしかしてハサミで部分的に穴をあけるんですか!?」

「だから違うってばああああああ。いい加減そっち方面から帰ってこい!」

「え? だってトノサマ。さっき『続き』って言ったじゃないですか……」

「言ったけども! だからそれが誤解だと言ってるんだ!」

「誤解、ですか? でも『続き』と言えば私を犯すことに―――」

「ならないからな!? 俺が言ったのは『おっけ~』について議論し合う続きのことだ!」

「『おっけ~』ですか……。わ、私はいつでも『おっけ~』ですよ?」

「何を言いたいんだ、何を」

「つ、つまりですね……。い、いつトノサマが欲望を私の中に出しても……い、いいんですよってことをですね……」

「だからそっち方面から帰って来いってばああああああ」

 完全に変なスイッチが入っている。このままだとヤバい。『おっけ~』についての話し合いどころじゃねえ!

「ルナ、だからどうして『続き』がそっち方面になるんだ!」

「そ、それは私たちが行った場所が……ホテルだったから、じゃないですか」

「おい待てルナ。いらぬ誤解を招く」

「え? でも事実じゃないですか」

「事実だけども!」

 明らかに今、読者の皆さんは勘違いしているに違いない。確かに俺たちが行った場所はホテルだ。ホテルだけども―――そういうことじゃないからな!? ただ俺たちが食べに行った場所の二階以降がホテルだっただけだ! 一階には誰でも入れる喫茶店とかがあるんだ。そこへ俺たちは行っただけなんだ!

「だからルナ。続きは二階のホテルに行って――とかじゃないからな!?」

「じゃあ、続きはウェブで」

「じゃあって何だよ、じゃあって! 何のCMのつもりだ!」

「え、それはもちろん――私とトノサマが一八禁的な雰囲気になる作品の―――」

「そんなものないからな!?」

 いったい俺たちはいつから官能小説に路線変更してるんだ! これライトノベルだろ!? ラ・イ・ト・ノ・ベ・ル! 決して官能小説ではない。それに―――言っておくが、俺とルナが一八禁的な雰囲気になる小説は書いてないからな?

「え、書かないんですか、トノサマ」

「俺が書くと思ってたのかよ!? 頼まれても絶対書かないからな、俺は!」

「そうですか……それは残念です。それならば私が書くことにしましょう」

「いや、書かなくていいからな!? そもそもお前、そんな簡単に書けるとでも思っているのか!?」

 このライトノベルですら俺が全部執筆しているというのに……。ルナが書けるとは相当思えない。

「ぐぬぬ……失礼ですよ、トノサマ! 私は素晴らしいものを書けるに決まっています!」

「どうして決めつけれるんだ」

 ただのポジティブシンキング、ではなさそうだ。物事を前向きに考えるとできる可能性は高くなるが……ルナの場合はその自信となる何かがあるわけでは―――

「無いということはないんですよ。だって私は毎晩、殿様と――――」

「ちょっと待ったあああああああああああ」

「ど、どうしたんですか、急に大声出して」

「それ以上は止めておこうな、な? 思いっきり話が脱線してるぞ。俺たちは『官能小説』について語り合っているわけじゃないだろう? 『おっけ~』について話し合ってるんだろう?」

「あ……、そういえばそうでしたね」

 言い聞かせると、ようやく本来の目的を思い出したのか納得するルナ。……ふぅ、何とか一難去ったか……。

「何を安心してるんですか、トノサマ」

「え? いや……気のせいだと思うぞ、うん」

「………?」

 しばらく訝しげな視線を向けられるが―――平常心、平常心っと。話を掘り返されても困るからな、さっさと『おっけ~』について話し合おう。

「では、今から――」

「トノサマ」

「なんだ?」

「話を掘り返すって――」

「では今から『おっけ~』についての議論を再開したいと思います」

「む、無視ですか! それにトノサマ。どうして丁寧な口調になってるんですか、おかしいですよ?」

「……ッ。い、いいんだよ、そんなことは。じゃあさっさと再開するぞ」

「……むー、わかりましたよ」

 ルナが納得しないながらも何とか再開。……よし、始めるぞ俺。思考を切り替えるんだ。今からは『おっけ~』についてだ。

「さて……、ルナ」

「はい?」

「一応喫茶店へ行く前に話し合った内容を振り返っておこうか」

「いいですよ?」

「それじゃあ……簡潔にまとめておくけど。平仮名に言い替えるということには相手に伝わるイメージというものが変わることが分かった。主な例を挙げるとすれば、『アイスクリーム』を『あいすくり~む』という風に言い替えることで『溶けている』という――俺的には『負のイメージ』を与えるということがあった。他にも平仮名に言い替える時は『意味が分からない』という時にも使われるということがわかった。―――以上だ。それで……今思ったんだけどさ。全部良いイメージじゃないよな?」

「良いイメージじゃない……ですか?」

「あぁ、そうだ。『負のイメージ』はそのままでいいと思うんだけどさ。意味が分からない時にも使われるっているのはさ、結局は相手に良い印象を与えてないと思うんだ」

 『意味が分からない』という状態が良いということはないはずだ。どちらかと言えば、知らないということは悪い方面であるはず。もちろん中には『そんなこと知らなくてよかった』というような例もあるが、それは別。言いたいのはそういうことじゃない。

「えっと……それでトノサマはこれからどういう話し合いをしたいんです?」

「そうだなぁ……、今まで話し合って出てきたものは基本的に『悪いイメージ』ばっかりだったけどさ……全部が全部じゃないと思うんだ」

「きっと『良いイメージ』もあるってことですか?」

「そういうことだ」

 悪いことばかりじゃないはず。それにわざわざお父様が俺たちに『おっけ~』という議題を与えてきたのだから、何かメッセージがあってもいいはずだ。今のところそれはわかっていないことだし。

「そうですね……、議題を通じてお父様が私たちに何らかのメッセージを伝える……ですか。初めに気付いた通り、何らかの意図があるのは間違いないですもんね」

「だろ。だから今からは『良いイメージ』について考えていきたいと思う」

「『良いイメージ』……ですか……んー」

「……良いイメージ、良いイメージ……」

 うーん、うーんとルナと共に頭を悩ますこと数十秒。

「はい、トノサマ」

「お、何か思いついたか?」

「ええ。『意味が分からない』という部分があったのでそれで気が付いたのですが……『可愛い』というプラスになるイメージがあると思います」

「……可愛い?」

「はい! 例えばトノサマが私に『あいすくり~む?』って訊いてくるとズキュンってくるじゃないですか!」

「ズキュンって来ねえだろ! むしろ気持ち悪いだろ!」

「いえいえ、トノサマ。そんなことはないと思います」

「たとえそうであったとしても、それはお前だけだ!」

 想像してみてくれ。高校生の男が『あいすくり~む?』なんて可愛らしい声を出しながら訊いてくるんだぞ。……気持ち悪いだろ絶対! いやまぁ、そりゃあ……男の娘だったら別かもしれんが、俺は断じて男の娘じゃない!

「むむむ……確かにトノサマは男の娘じゃないですけども……」

「はいはい、この話題はそこまでにしておこうか。でも俺も何となくわかるぞ?」

「そうなんですか?」

「あぁ」

 小さい女の子が『あいすくり~む?』って訊いてきたら―――そりゃあ、ズキュンって来るに違いない。

「ロリコンですか、トノサマ」

「ぅ!? ……ち、違うからな!?」

「嘘ですね」

「いや、嘘じゃない。本当だ」

「…………」

「な、何だよその『いかにも疑ってます』っていう視線は」

「いえ、なんでもないですよ?」

「…………」

 ぐぬぬ……、絶対にルナは俺のことをロリコンだと勘違いしてやがる。

「安心しろ、ルナ。もし俺がロリコンだったらこの天国には来ていない」

「どうしてそう言い切れるんですか」

「忘れたのか? 地獄の王のことを」

「地獄の王……シリカさんのことですか?」

「あぁ、そうだ」

 地獄の王。確か名前は……、シリカ・シュバルツ・リシード・アスラエル・スラギル……だったはず。……とにかく長いから俺たちはシリカと呼んでいる。

「シリカさんがどうかしたんですか?」

「よく考えてみろ。もし俺がロリコンだったらシリカの執事になっていたはずだ。一応あの時誘われただろ、俺」

「そういえば……そんなこともありましたね」

 そう、俺たちが天国へ行く際には地獄の王の力が必要だった。そしてシリカと出会った時に一度『執事になってみないか』と誘われたんだ。もちろん冗談に決まっているのだが……もし、俺がロリコンだったら何が何でもシリカの執事になって、ルナとの契約を破棄していたに違いない。

 だから俺は―――

「ロリコンじゃないと言い切れるわけですか」

「あぁ、そういうことだ」

 これでどうにか疑いは晴らせたかな。ちなみにシリカの姿は幼女そのもの。どう見ても小学生にしか見えない。髪の色は深紅でツインテール。……だが見た目に騙されちゃいけないぞ。見た目は幼女でも性格は相当黒いからな。下手な行動を取ったら恐ろしいことになる。

「そうですね。あの時はトノサマが女の子にされちゃいましたもんね」

「あー、そのことは思い出させないでくれ。あれは完全に俺にとっての黒歴史だ」

「そうなんですか? とっても可愛らしい姿でしたのに……」

 どうやらルナは俺が女性になった時の姿を思い出しているらしい。だから思い出すなってば。俺にとっては全然良いことなんてなかったんだからよ。

「と言いながらも、自分の胸を触った時に『おぉ!』なんて嬉しそうな反応をしていたじゃないですか」

「……ッ。あ、あれは……お、男なんだから仕様がないだろ!」

 きっと男性陣ならわかってくれるはずだ。そうだなぁ……自分が女にされた時のことを考えてみてくれ。……絶対胸は触るだろう? それに結構大きくて柔らかかったんだから―――

「こ、こほん。トノサマ。それは私の胸に対する嫌味のつもりですか?」

「ち、違う。そんなつもりで言ったんじゃ―――っていうかかなり脱線してるじゃねえか! いつから俺たちは『胸について』の話になったんだ!」

 テーマは『おっけ~』だったはずだ。なのにどうして俺たちは胸の話をしてるんだろうか。まったく関係ないじゃねえか。

「ご、ごほん。話を戻そうか、ルナ。……とりあえず『可愛らしくなる』っていう良いイメージがあることはこれでわかったな」

「そうですね。他にも猫が鳴くときとかでも『ニャー』よりも『にゃぁ』の方が可愛いですもんね」

「…………」

「どうしたんですか、トノサマ」

「い、いや……なんでもない」

 言えない。ルナが『にゃぁ』と猫の真似をした時に萌えてしまったなんて言えない!

「…………にゃぁ」

「ッ……。これだからお前の能力は厄介なんだよおおおおおおおおおおおおおおお」

 せっかく口にしなかったのに。口にしなかったのに聴き取られてしまったじゃないか! たまには聞き逃すとかそういう気遣いもしてくれよ……。

「え、嫌ですよ。せっかくトノサマを萌え死にさせることができるんですから」

「お前は俺を屠りたいのか!?」

「そんなわけないじゃないですか。『萌え死に』というのは相手をひたすらキュンキュンさせて……お、俺を奴隷にしてくださいっ、って言わすことなんですよ?」

「違うからな!?」

 いつから『萌え死に』がそんな意味になったんだよ。正しい意味なんて知らないけどさ、『俺を奴隷にしてくださいっ』なんて言わすことが目的ではないはず……だと思う。

「曖昧なんですね、トノサマ」

「そりゃそうだ。いろんな意味があるからな」

 実際に萌えすぎて心臓が停止して……などもあり得るだろうし、『うぉおおおお』って悶えることもある意味ではそうだろうし――とにかくいっぱいだ。

「ということはですね、トノサマ」

「なんだ」

「平仮名にすることで『可愛い』以外にも『萌える』という要素があるというわけですよ」

「……ん、確かにそうかもしれんな」

 そもそも『可愛い』がある時点で、そこから発展して『萌える』という要素が加わってもおかしくはない。でもまぁ……ルナにしてはいいところに気が付いたと思うぞ。

「褒めてくれてもいいんですよ? だから……ん」

「『だから……ん』じゃねえよ! ここにきて最初のネタを引っ張り出してくるのかよ!?」

 それにチョコレートはポケットの中に―――あれ、三つ入ってるな。

 あ……そういえば、休憩した時に補充したんだっけか。

「そうですよ、トノサマ。『だから……ん』なんですよ」

「目聡いなお前!」

「そ、そんなに褒めなくても……」

「褒めてないからな!?」

 決して褒めるつもりで使ったわけではない。確かにいい意味もあるけど、今回はそうじゃない。

「ぶー、褒めてくれたっていいじゃないですかぁ」

「あぁもう鬱陶しいなぁ。……ほら」

 仕方なしにポケットから一口チョコレートを取り出し、手のひらに乗せてやる。

「んぐんぐ……へええ、ありがとう、おにいたん」

「なんで妹キャラ!? それに『おにいちゃん』じゃなくて『おにいたん』なのかよ!?」

「あれ、おにいちゃんの方が良かったんですか?」

「いや別に考えたことすらないけど……」

 一応俺にも妹はいた。おそらくその頃に、『おにいちゃん』と呼ばれていたから、そう呼ばれることが普通なんだと思っていただけだ。

 それに実際、『おにいちゃん』って呼ばれる人の方が多いんじゃないのか?

「さぁ、どうなんでしょうね。……それよりもおにいたん」

「なんだ」

「『おにいちゃん』、『おにいたん』、『おにぃ』、『兄者』、『兄様』、『おいたんっ』……どれがいいですか?」

「最後の絶対違うよな!?」

 明らかに『おじさん』の呼び方を変えたやつだ。それに―――

「そんなことどうでもいいからな!? ルナ、妹キャラは止めろ! 話が脱線してる」

「あ……そうですね。いつの間にか『妹キャラ』についての話になっていましたね」

 ……やっぱり今日は脱線が多い気がする。いつものことと言えばいつものことなんだろうけど……。

「さて……話を戻すとして。……あ、そうだルナ」

「なんですか?」

「初めに気付いたことなんだけどさ。『緩い』ってイメージがあったよな」

 『OK』や『オッケー』を『おっけ~』にすることで緩くなるということだ。何に対して緩くなるのかと言えば―――許容範囲が広がる的な感じでいいかな。

 ん? 『許容範囲が広くなる』か……。

「そうですね、トノサマ。『おっけ~』だと何をしても許してくれそうな感じがありますよね」

「だよなぁ。でも、『何をしても』ということはないだろうけど……大半のことを許してくれるような気はするよな」

 もちろん、他人に迷惑をかけるとか、そういったことはダメだと思うけど。

「あ……トノサマ、今全てがわかりましたよ!」

「うん? なんだ、お父様が俺たちに伝えたいことが分かったとでもいうのか?」

「はい、そうです!」

「じゃあ、言ってみろよ」

 どうせろくでもないことを言うんだろうけど……。

「ろくでもなくないです! これは明らかに私に向けたメッセージなのです」

「なんだよそれは……」

 まずルナに向けたメッセージという時点で怪しい。普通はルナだけじゃなくて、俺にもあるものじゃないのか?

「いえいえ、トノサマ。実際に議題を与えられたときは私一人しかいなかったんですから、私宛にメッセージがあるはずなんですよ」

「そうかなぁ……、まぁいいや。とりあえず言ってみろよ」

「はい、では……。『おっけ~』とあえて平仮名で言うことによって許容範囲が広がるとトノサマは言いましたよね?」

「おう、言ったぞ」

「つまりですね……、私の能力をトノサマ以外にも使ってもよい、ということをお父様は伝えたかったんですよ!」

「なんでそうなる!?」

「だから許容範囲が広がると―――」

「他人に迷惑をかけてる時点でダメだと思うぞさすがに!」

 仮に、だ。お父様がルナに能力を使う条件を緩和したとしよう。そうしたらルナはどうすると思う?

「もちろんトノサマ以外の人にも使います!」

 本人も言っているからそうなるのは確定だろう。つまり、だ。ルナが他人の胸中を読み取ることをするということは―――他人のプライバシーを侵害するということになる。

「それに何か問題でもあるんですか?」

「問題ありまくりだ! プライバシーっていうのはな……本来侵害しちゃいけないものなんだよ!」

「そうなんですか?」

「そりゃそうだろ! ルナ、仮にお前の心の中が他人に読み取られたらどう思う?」

「……まぁ、いい気分はしないでしょうね」

「そう思うんだったら使うなよ!」

「へ? 別に私は他人に使ってないですよ?」

「俺に使ってるだろ、俺に!」

 まるで使うのが当たり前かのように常時俺に使っているじゃねえか。完全に日常化してるし。

「あ~、でもトノサマは例外じゃないですか」

「例外なのかよ!?」

「はい。だってトノサマは……くすっ、トノサマですからね」

「なんで笑った!? もしかして俺、人間扱いされてない!?」

「え、トノサマは人間だったんですか?」

「人間扱いされてなかったあああああああああああああああ」

 じゃあ、俺はなんなんだと言いたい。人間じゃないとしたら俺は何者なんだ。

「だってトノサマは私の契約者じゃないですか」

「そうだけど。それがどうしたっていうんだ」

「つまり……私の奴隷、ということですよ」

「奴隷!? 俺がルナの奴隷!?」

「そうですよ、私の契約者なんですから」

「…………」

 どうやら俺はルナの奴隷らしい。そうか、そういうことだったのか……。だからお父様は俺にだけ胸中を読み取ってもいいとルナに許可したのか……。

「なんて納得はしないけどな!」

「ここで復活ですか!?」

「当然だ! 俺はちゃんとあの事を覚えているからな」

「……あの事って?」

「俺がお父様と初めて会った時だ。……あの時お父様は俺にこう言った。『契約者というのはパートナーのこと。つまり、お互いに対等な立場であって、協力し合っていくもの。いわゆる夫婦みたいなものだと思ってほしい。だからこれからもルナと協力し合って様々な困難を乗り越えていってほしい』ってな!」

 だから契約者=奴隷というわけじゃない。契約者=生涯のパートナーということだ。

「…………」

「……ん、どうしたルナ?」

 なんだか顔が赤くなっているけど……、急に風邪をひくわけはないし……別に部屋も暑くないし……

「トノサマ。……そこで鈍感になる必要はないです……」

「鈍感? 俺が……?」

「はい。だってトノサマ……さっき自分が言ったセリフを思い出してください」

「俺が言ったセリフって――――はっ、しまったああああああああああああ」

 間接的にルナに告白してるじゃないか。それもただの告白というレベルを超えている。

「やっと気づきましたか。……でも、すごく嬉しいですよ、私は」

「……ッ」

 俺も一気に頬が赤くなった。わかる、わかるぞ。真っ赤になっていくのが……。こんなにも顔が熱くなるもんなんだな……。

「いや、それよりもルナ。今のはダメだ。聞かなかったことにしてくれ」

「どうしてです? まさか逃げるつもりですか」

「……ッ。と、ととと、とにかくだ。今はそういうことをしている場合じゃないだろ。『おっけ~』についての話し合いだろ」

「誤魔化すつもりなんですね」

「……ぅ。ま、まぁ、この話は今晩にしよう。とにかく今は『おっけ~』について話し合おう」

「そうですか……逃げるつもりがないのなら別にいいですけど」

「…………」

 くっ……大変なことになってしまった。……まぁいいか。このことはあとで考えるとしよう。

 時間も押してきてることだし。

「あ、ほんとですねトノサマ。あと二〇分くらいしかないですね」

「そうだよ、とにかく時間がないんだ。何とかして一つの結論を導き出さないと……」

 こういう時は急いで考えれば考えるほど、何も思い浮かんでこないものだが―――うん、何も思い浮かんでこない。

「ダメダメですね、トノサマ」

「う、うるさいなぁ。そういうルナこそどうなんだよ」

「私はもうばっちりですよ。結論、思いつきましたし」

「なに!?」

 いや、さすがに冗談だろう。さっきの胸中を読み取る能力の云々かんぬんはダメなはずだ。

「ええ、もちろんそこではありません」

「本気で!? 本気で思いついたっていうのか!?」

「はい、ではトノサマにヒントをあげましょう」

「くっ……」

 なんだかルナにヒントを貰うなんて屈辱だ。こんな屈辱を今まで受けたことはない。

「……じゃあ別に言いませんけど?」

「ぐ……、いや、今のは取り消してくれ。時間がないのは事実だし、教えてくれ」

「くすっ、仕方ないですねぇ、トノサマは」

 ニコニコしながら俺の顔を見るルナ。……絶対に楽しんでやがる。

「では、トノサマ。まずは心を落ち着かせてください。深呼吸です、深呼吸」

「し、深呼吸だな。よし……」

 スーッと息を吸い込む、そして――

「ひっひっふー。ですよ、トノサマ」

「ひっ、ひっ―――って、どんだけ息を吸わすつもりなんだよお前は!」

 それに『ひっひっふー』は深呼吸じゃない、妊婦が使う奴だ!

「でもトノサマ。これで少しは落ち着いたでしょう?」

「落ち着けるか! むしろこれは興奮状態っていうんだよ!」

「……えっちぃですねぇ、トノサマは」

「そういう意味じゃないからな!?」

 なんだかツッコミを入れることでものすごく疲れた気がする……。ある意味焦りとかは無くなったけども。

「では結果オーライということにしてですね……。トノサマ」

「なんだ」

 もう勘弁してくれよ、ボケるのは。

「わかってますよ。それではトノサマ……、思い出してほしいのですが、『おっけ~』にはほかの二つと違って、『許容範囲が広い』ということが言えましたよね?」

「そうだな」

「つまりです。お父様がわざわざ『おっけ~』という議題を与えたのは『許容範囲は広いぞ』ということを言いたかったんじゃないでしょうか」

「お父様の許容範囲が広い―――あぁ、そういうことか!」

「やっとわかりましたか」

「おう」

 それにしてもルナに先を越されるなんて初めてだったな。……たまにはいいか。

「じゃあ、結論にしようか。……今日はどうする? 昨日に引き続きルナがするか?」

「いいんですか?」

「別にいいぞ」

「では――こほん。英語やカタカナのものを平仮名で言い替えることにはいろいろな意味があります。それは相手に『悪いイメージ』を与えたり、『良いイメージ』を与えたりするということです。一つずつ挙げるとすれば……前者ならば、トノサマで言うところの『アイスクリーム』を『あいすくり~む』にすることによって『溶けている』という、時には悪いイメージを与えるということ。後者ならば、あえて平仮名を使うことによって『可愛い』というような良いイメージを与えるということです。『ニャー』を『にゃぁ』とかがそうですね。これは言い方もあるってトノサマは言いましたけど……」

 ここで一息つくルナ。そして―――

「それで、です。今回の『おっけ~』には『OK』や『オッケー』と違って平仮名にすることによって『緩くなる』すなわち『許容範囲が広がる』ということです。そして、それをあえて議題にしたお父様が言いたかったことは―――『さまざまなことに挑戦していけ』ということです。―――以上です。……これでいいですか、トノサマ」

「おう。十分だ。……まぁ、あと付け加えるとしたら―――」

 どうして『さまざまなことに挑戦していけ』という結論に至ったのか。……でも、そうだな。これについては読者の皆さんに考えてもらうことにしよう。

「面倒くさいから省いたんですか、トノサマ」

「違う! 俺はあえて考えてもらおうって言ってるんだ。『考えること』それが重要だからな」

 この議題を通じて読者のみんなに考えてもらうこと。それが俺の――俺たちの目的。

「なんかかっこいいこと言っているつもりなんですね、トノサマ」

「別にかっこいいことを言っているつもりじゃないからな!?」

「またまた、そんなこと言って」

「……ぐぬぬ」

 なんか今日はいつもより疲れた気がする。ルナのボケに突っ込むのもそうだけど……慣れてないからだろうなぁ。

「私に弄られるのが、ですか?」

「そりゃそうだ」

 慣れないことをしたら疲れる――それは当然のこと。でもそのうち俺も弄られることに慣れていって―――

「って、絶対慣れないからな!?」

「どうしてですか」

「俺は明日からもずっとルナを弄る立場だからな!」

「むむ……、いいですよ? 言っておけばいいじゃないですか、明日もきっと私が弄る側です」

「さぁ、どうかな」

 ばちばちばち、とどうでもいいところで火花を散らす俺たち。……さて、

「それじゃあ今日も無事終わったことだし、夕飯を食べに行こうか、ルナ」

「そうですね、トノサマ。おなかペコペコです」

「よくそれが言えるな!」

 数時間前に巨大チョコパフェを一人で全部食べたのはどこのどいつだったろうか。

「おやつは別腹っていうじゃないですか」

「それ食後の話だからな!?」

「いいんですよ、細かいことは。……行きましょう、トノサマ」

「……あぁ」

 今日も今日とて無事議論を終えた俺たちは夕飯を食べに向かうのであった。


                                   おわり

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