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2日目:「三大工」

みなさんおはこんにちばんは。アブソリュートです。

前回活動を始めたアストロイド「ラブ」はこのお話で更なる成長(?)を見せてくれます。

そして、なんとこの話は新キャラも登場!どのような活躍を見せるのか・・


それでは、本文をお楽しみください。


「大工」・・・月で最も優れた技術を持つ者としてアストロボット製造者から尊敬されている存在である。

現在月には三人の大工が存在し、彼らは「三大工」と呼ばれている。

シリウス、ペテルギウス、プロキオンが現在の三大工だが、彼らの時代より昔に、大工と呼ばれる者たちがいた・・。


---シリウスの工房---


朝を迎え、天井にある窓から光が工房内にさし込んでいる。

ドームは月に造られたために地球と違って朝、昼、夜はないのだが、ドームのシステムによって擬似的にそのサイクルを造ることができている。こういったシステムを造る理由にも、「より人間に近づけるため」というのが垣間見えているのだ。

ロボットには不要なものとなるのだが、さてこの物語の主人公にはどうなのやら・・


そんな月にとっても当たり前な朝を迎え、ラブは目を覚ました。

ベッドの上で上半身だけを起こし、辺りをキョロキョロ。そこでシリウスの姿が無いことに気付いた彼女は、ベッドから降りて探すことにした。

しかし、彼はすぐに見つかった。彼女のベッドの横で彼はスリープモードに入ったからだ。

シリウスを見つけたラブは、彼を起こすべく声をかけることにした。


「おはようございます!」


工房内に響いた元気な声。

その大きな声は、工房の前を通った散歩中のロボットが工房内を覗き込むほどだった。

しかしラブの声を聞いてもシリウスは動かず、ただ何かの駆動音が鳴っているだけだった。


「あれ・・?」


シリウスが動かないことを不思議に思い、首をかしげるラブ。

少しの間見つめ続けていると、やがてシリウスの目が光り、顔をラブのほうに向けた。


「あぁ、おはよう。ラブ」


目を覚ました・・つまり、起動したシリウスは立ち上がって体が


しっかりと体が動くか試していた。

ある程度体を動かして、異常がないと判断したシリウスはもう一度ラブのほうを見る。

するとそこには、不思議そうな顔をしているラブの姿があった。

それを見たシリウスは、まだ彼女は様々なことを知らないと思い出した。


「ラブ、俺たちアストロボットは一度スリープモードに入ったらまた起動しなくてはならないんだ」


「起動・・?なるほど、起きることですね!でしたら私も同じです!」


ラブは起動のことを「起きる」と言った。間違いではないが、起きるという表現は主に人間に使われるものだ。

やはり彼女は自分たちとは大分違う・・とシリウスは考えながらもラブと会話し、自分たちの構造について話していた。やがて話に区切りのついたシリウスは、今日やるべきことをデータベースの中に見つけた。


「あぁそうだ・・今日は朝9時にプロキオンの所に行ってテストを頼まれているんだったな・・」


「プロキオン・・えっと、昨日の黄色い方でしたよね?」


「そう、ソイツがプロキオンだ。丁度いいからラブも行くか」


予定を確認したシリウスはデータ端末の上に置いてあった携帯端末を手に取り、ラブと共に工房を後にする。


---ドーム・居住エリア---

2人は居住エリアを歩き、同じエリア内にある「プロキオン」の工房を目指すことにする。


だが、居住エリアを歩く2人はまさに注目の的だった。

それもそのはず。ラブは一般のロボットから見れば「変なロボット」だ。皆人間をデータとして知っているが、実物を見たことなどない。

今の時代に人間を知っているロボットなど、三大工であるシリウス達か、一部の老ロボットだけである。


「し、シリウス・・すごく見られてますよ?」


辺りから奇妙そうに見つめられ、心配になったラブはシリウスに寄り添った。

当然シリウスたちロボットはそう言ったことは気にしないのだが、まだまだアストロボットには分からない所がたくさんある。


「心配するな。居住エリアには怪しい奴などいな・・・ん?」


2人が歩き続けていると、突然シリウスの前にロボットが姿を現した。

深緑色のボディ。姿は人の形をしているが、装甲のほとんどが四角く、所々装甲が欠けてしまっていることから、旧型であることがすぐにわかった。このロボットこそが先述した「老ロボット」である。

そんなロボットが目の前に現れたがシリウスは怪しむ訳ではなく、気さくに話しかけた。


「テトロ!久しぶりだな」


「半年ぶりだなシリウス・・む?お前さん何故人間を連れておるんじゃ?」


テトロと呼ばれたロボットはラブのほうを見て不思議そうな顔をする。彼は数少ない人間を知るロボットの1人で、ドーム建設に関わった第一世代目のロボットでもある。

彼が人間を見るのは実に25年ぶりなのである。

対してラブは自分の知らない存在に出会ったので、シリウスに説明を求めた。


「ラブはまだ知らなかったな。彼はテトロ。俺の知り合いだ」


「友達・・・ということですか?」


「まぁ・・そうなるかな。」


まだ多くのことを知らないラブと、その製造者であるシリウスの会話を聞いていたテトロは、彼女のことを面白いと思っていた。

知り合いと言われると、人間であろうとロボットであろうと恐らくそのままの意味で解釈するだろう。だが彼女は、テトロをシリウスの友達と認識したのだ。


「カッカッカ!不思議な子じゃ。こんな不思議な人間は見たことが無いわい」


突然笑い出したテトロの言葉を聞き、ラブは反応し、言い返した。


「私は人間ではありません、アストロイドです!」


「ふむ・・?アストロイドとな?」


聞きなれない言葉に、首をかしげるテトロ。それもそのはず。

新型の「アストロイド」の名前を知るのは、まだシリウスたち三大工とラブだけだ。

そこでシリウスは、テトロにも説明しておこうと話し出した。


「テトロ、彼女は俺が造ったアストロイド「ラブ」だ。アストロイドってのは・・・」


それからシリウスの説明は長く続き、テトロは真剣にその話を聞いていたが、ラブはシリウスの横でウトウトと寝てしまいそうだった。

シリウスの話が続く中、ラブはふとシリウスの背後にロボットがいることに気付いた。

そのロボットはシリウスに気付かれずに、声をかけた。


「・・・シリウス君?ちょっといいかしら・・?」


突然背後から聞こえた声に、驚くシリウス。だがその声には聴き覚えがあり、恐る恐る振り返る。

そこにいたのは、見覚えのある黄色くて細めのボディ。そう、プロキオンが立っていたのだ。

彼女は少し怒っているように見える。


「や、やぁ・・プロキオン・・元気そうだな・・」


「えぇ。・・ところで今何時か知ってる?」


プロキオンに聞かれ、手に持った時計を見るシリウス。

その時計の針は、きっかり午前11時を指し示していた。

シリウスが時計を見て驚愕していると、プロキオンのほうからオーラのようなものがチラっと見えていた。

なんとか目を合わせないようにもう一度テトロのほうを向き、逃げ出そうとするシリウス。だが直後に、彼の頭が掴まれた。


「どこいくの・・?シリウス君」


掴んだのはプロキオンだ。声色から彼女の怒りがよくわかる。


「き、君の工房さ・・は、早く行ってテストをしないとな・・」


逃げ出そうとシリウスが歩き出すが、すぐさまプロキオンに倒されてそのまま引きずられていってしまう。


「おぐっ!ひ、引っ張らないでくれ!体が!体が削れるー!」


「大丈夫よシリウス君・・全部削れたりしないから・・」


「結局削れるじゃないか!うわぁぁぁぁ!!」


シリウスを引きずり、去って行ってしまうプロキオン。

後に残されたラブとテトロはその様子を見て唖然としていたが、置いて行かれると思ったラブはテトロに別れを告げ、プロキオンの後を追うべく走って行った・・・。


1人残されたテトロ。だが彼はどこか嬉しそうだった。


「カッカッカ!若いもんは可能性に満ちておるのう!」


満足げに笑うと、彼もまた歩き出してどこかへと去って行った・・・。


---居住エリア・プロキオンの工房---


ここは居住エリアにある、三大工「プロキオン」の工房である。

シリウスの工房よりは物が多くあるが、制作途中のロボットの姿が見当たらない。

なぜなら、彼女は主に愛玩用ロボットの製作を主に行っているからだ。愛玩用ロボットとは、俗にいうペットロボットのこと。

その種類は様々で、犬型や猫型等と言った一般的なものから、カバやキリンなどあまりポピュラーではないものまで造っている。


しばらく引きずられたシリウスはようやく放され、彼を引きずっていたプロキオンは工房の奥へペットロボットを探しに行った。

長い間引きずられていたせいだろう。シリウスの体は所々削れてしまっていた。


「・・はぁ、酷い目にあったな・・」


「シリウスがいけないんですよ?長々と話しているから」


「まぁ・・な。ってお前は半分も聞いてなかったじゃないか」


プロキオンがテスト用のロボットを持ってくるまでの間話をする2人。

その様子はまるで兄妹・・・いや、親子のようだとでも言うべきだろうか。テスト用ペットロボットを待っている間暇な二人だが、そこへ一人のロボットがやってきた。


そのロボットは女性型のロボットだった。細身の体はプロキオンと似ているが、彼女よりは身長が低い。

だがボディの色は白く、シルエットもプロキオンとは大分違っている。

2人の前に現れたそのロボットは、シリウスに話しかけた。


「こんにちは、シリウスさん!」


「久しぶりだねゲッカちゃん。元気だったか?」


2人の会話を聞く限り、先ほどシリウスが言った「知り合い」なのだとラブは理解した。

ゲッカと呼ばれたロボットはシリウスへの挨拶を終えると、ラブのほうをまじまじと見つめていた。よほど珍しいのだろう。そこでラブは、自分から挨拶をしてみることにした。


「こんにちは。私はラブと申します。よろしくお願いしますね、ゲッカさん」


丁寧なあいさつをし、頭を下げるラブ。その様子を見て、ゲッカは少し困惑していた。


「うー・・さ、さん付けで呼ばなくたっていいよ~・・」


「・・そう・・ですか?」


「クッ・・クフフ・・」


困惑しているゲッカと、首をかしげているラブ。そしてそれを見て、シリウスは思わず笑いそうになってしまう。笑いそうなシリウスに気付いたゲッカは、両腕を上下に激しく振りながら大声を上げた。


「もー!何笑ってるんですかシリウスさん!」


「ごめんごめん。ぎこちない感じが面白くてさ」


ラブが二人の何気ない会話を聞いていると、ふと奥から何かを持ってくるプロキオンの姿が目に入った。手には見慣れない姿をしたロボット。しかしそれは、人の形をしてはいなかった。


「お待たせ、シリウス君。この子なんだけど・・・」


「お?犬型か?・・・なんだか頭部が俺そっくりなんだが」


彼女が犬型のペットロボットを持ってくると、シリウスはそちらのほうに興味を移した。

残ったラブとゲッカは暇そうにしている。しかし、そこでゲッカがある提案をした。


「そうだ!ラブちゃん、ペテルギウスさんの所に行こうよ!」


「ペテルギウス・・・以前会った黒い方ですね?」


「まぁそうだね。・・・お姉ちゃん!ペテルギウスさんの所に行ってくるね!」


ゲッカがプロキオンから許可を取ろうとすると、プロキオンはすぐさま答えてくれた。


「えぇ、いいわよ。あまり遅くならないようにね」


「はーい!行こっ、ラブちゃん!」


ゲッカはラブの手を引っ張って走り出し、三大工の1人であるペテルギウスの工房へと向かった。

工房へ向けて走っている中で、ラブはふと気になったことをゲッカに聞いてみることにした。


「あの・・ゲッカさん・・」


「さんは付けないでよ~!もっと別の呼び方にして!」


質問をする前に、まずは呼び方を考えなくてはいけなくなってしまったラブ。

しかしラブは、まず呼び方にレパートリーがある訳ではない。

どう呼ぶか困っている時、ふとシリウスがしていた呼び方を思い出した。


「じゃあ・・ゲッカちゃん。先ほどプロキオンさんをお姉さんと


呼んでましたけど・・・二人の関係は?」


「あぁ、あれね?私とお姉ちゃんは姉妹なの。って言っても、正確には私はお姉ちゃんに造ってもらったんだけどね」


「姉妹・・二人は家族ということですね」


ラブがそう言うと、ゲッカは突然立ち止まって不思議そうな顔をした。どうしたのだろうと思い、ラブは彼女の顔を覗き込んだ。


「家族・・?聞いたことない言葉だけど・・・何、それ?」


「私にもよくわからないのですが、そう記憶しています」


聞いてはみたが、よくわからないと答えられてガクッと肩を落とすゲッカ。だが彼女はそれ以上のことを聞こうとせず、またラブを連れてペテルギウスの工房まで走りだした。


---しばらく走った二人は、ペテルギウスの工房へとたどり着いた。その工房はほかの大工の工房よりも大きく、それに比例して入口も大きい。その理由は、ペテルギウス自身が大柄なロボットだからだ。

中からは声が聞こえるが、二人はかまわず工房の中へと入って行った。


「ペテルギウスさーん、こんにちはー!」


元気よく挨拶をするゲッカ。だがその声は工房に響くことは無く、機械の音に阻まれてしまう。

工房の中にいたのは、以前ラブを見るためにシリウスの工房を訪れたペテルギウス。しかしそのすぐ近くには、ラブにとってはまだ見たことのないロボットがいた。


体長はペテルギウスより一回り小さく、白と黒のカラーリングが施された細身のボディ。しかしそのロボットのことを、ゲッカは知っているようだった。


「ありゃ、今トール君が修行してるみたいだね」


トール・・どうやらペテルギウスのそばにいるロボットはそういう名前のようだ。しかしそれよりも気になったのは、ペテルギウスたち二人が何をしているのか。ここから話しかけても二人には聞こえないので、ラブは近づいて話しかけることにした。


「ペテルギウスさん!」


「むっ!?・・おぉ君は!よく来てくれたな!」


突然至近距離から聞こえた声にペテルギウスは驚いた。しかしラブの姿を見ると、喜んでいるような様子だった。

先ほどまではペテルギウスがトールに指示を出していることにより機械が動き、音が鳴り響いていたが、ラブがペテルギウスに話しかけたことにより指示が止まった。それと同時に、機械も停止して音がやんだのであった。

指示が止まり、どうしたのかとトールはペテルギウスに話しかけた。


「師匠、どうしました?」


「すまねぇなトール。お客さんが来たもんでよ」


「お客・・?」


トールは、ふとペテルギウスの近くに誰かがいることに気が付いた。だがそれは体格の大きいペテルギウスの陰に隠れてしまっていたので、彼は覗き込むようにしてその客の姿を見た。

しかしそれは、どうみてもロボットには見えない姿をしていたのだった。


「っ!?し、師匠・・それは・・?」


「おう?彼女はシリウスが作り上げたアストロイド・・・ラブ・・・だっけか?」


「はい!私はラブと申します!」


ペテルギウスがラブに名前を確認すると、彼女は元気に自分の名前を言い、トールにお辞儀をした。

対して、見たことのない存在が目の前で動いている光景を目の当たりにしたトールは後ずさった。


「・・?あの、どうかしましたか?」


「うおぉっ!?」


後ずさりをしたトールに、どうしたのかと心配しながら近づくラブ。しかしトールはラブが一歩近づく度に一歩後ろに下がるため、二人の距離は一定に保たれたままだった。

その二人のやり取りはしばらく続いていた。そこへ、見かねたペテルギウスがトールに指示を出した。


「トール、今日の作業はおしまいだ!あがっていいぞ!」


「は、はいっ!」


ペテルギウスの指示を受けたトールは、一目散にラブから逃げて行った。しかし対してラブは、彼が何故自分から逃げて行ったのかが分からずにいた。

その理由を考えていると、近くからペテルギウスの声が聞こえてきた。


「アイツはな、初めて見る物には警戒しちまうんだ」


「警戒・・?怖がっているんですか?」


「うーむ・・まぁ、その考えは間違っちゃいないが・・」


今後はペテルギウスが考え事を始めてしまうと、先ほどから放っておかれてばかりのゲッカが声を上げた。


「ねぇペテルギウスさん!また昔話を聞かせてよ!」


「うおっ!?ゲッカちゃんいたのか・・」


「最初っからいたよー!」


存在が確認されなかったことをゲッカは怒っているようだ。

ペテルギウスはそれをなだめながら、昔話を聞かせるために二人を工房の外へと誘導した。しかしそこは、二人が入ってきた場所とは全く違うところだった。


そこは広場と言うには小さいが、二つの小さな椅子に、大きな椅子が1つある場所だった。

それに囲まれているのは、一つのボロボロなテーブル。まるで貴族がお茶を楽しむために造られた場所だった。その時ラブは、全く知らない場所を訪れたために首をかしげていた。


「ここは・・?」


「あ、ラブちゃんはここ初めてだったよね。ここは[大工の箱庭]って呼ばれてる場所なんだよ」


「おう。その昔な、初代の大工が会議をした場所って言われてんだ。さ、そこの椅子に座ってくれ」


また1つ新たな場所を知ったラブだが、どうにもそこが全く知らない場所ではないと思っていた。しかし彼女は深く考えはせず、ペテルギウスの指示通り小さいほうの椅子に座った。

ゲッカも隣にあった小さい椅子に座り、大きい椅子にはペテルギウスが腰かけた。


全員が座ったところで、ペテルギウスは昔話を始めた。


「それじゃあ今日は、大工についてを話そう。彼らが何故月にこのドームを造ったのか・・それはな・・」


大工が月にドームを造った理由・・それは、地球に住む人々を迎えるためだった。現在地球の人口は増えすぎているため、その増えすぎた人口を少しでも減らそうと、その理由から計画されたのが「月面移住計画」であり、その鍵となるのがアストロボットたちだったのだ。

月には当初30体のアストロボットが送られたが、その内の三体が[大工]としてドーム建設に深く関わっていた。現在の三大工は[シリウス][プロキオン][ペテルギウス]だが、

彼らより以前の三大工は[アルタイル][デネヴ][ヴェガ]の三体であった。


「その中でデネヴさんは俺の師匠でなぁ・・俺と同じで体がデカい人だったよ。それでな・・・」


彼ら三大工は27体のロボットと共にドームを建設し、地球に住む人々を迎えれる準備を整えていた。

だが今から21年前に謎の事故が起き、せっかく迎え入れる準備ができたというのに地球との交信ができなくなってしまったのだ。


「それからは長い間地球と何故交信できないのかわからずじまいでな・・今では迎え入れるなんざ、到底無理な話だな」


それからもしばらくペテルギウスの話き、ラブは真剣に話を聞いていた。それと同時に、彼女の中にはある決意があった・・。しばらくして長い昔話が終わり、気が付けば辺りは暗くなり始めていた。

それに気付いたペテルギウスは二人を帰宅させるために、出口まで見送ることにしたのだ。


「いや~・・話し始めちまうとどうにも止まらなくなっちまうなー」


「でもペテルギウスさん、とてもいいお話が聞けて私は嬉しいです!」


「お、そうかい?そう言ってもらえると話したかいがあるってもん・・・お?」


出口に向かっていたペテルギウスがふと見たのは、入口に立つシリウスとプロキオンの姿だった。

どうやら遅くまで帰ってこなかった二人を迎えに来たようだ。


「おうシリウス!わざわざ悪いな!」


「こちらこそだ。ラブが世話になったな」


シリウスが工房内に入ると、姿を確認したラブがすぐさま駆け寄った。ゲッカも同様にプロキオンの元へ行き、4人はペテルギウスに別れを告げてそれぞれの工房へ戻って行った。

その帰り道、居住エリアはロボットたちの会話で賑やかだが、二人は無言で歩き続けていた。特に話すこともなかったのだが、それよりもシリウスが気になっていたのはラブがずっと難しい顔をしていたことだった。無言のまま帰るのはダメだと考えたシリウスは、ラブに話しかけることにした。


「なぁラブ、ペテルギウスに会ってみてどうだった?」


突然話しかけられ、少しだけ驚くラブ。だが直後には、笑顔でシリウスの問いかけに答えた。


「とてもいい話が聞けてよかったです!それから・・」


「・・それから?」


「いいえ、これは工房に帰ってから話します!」


何かを話しかけたが、途中でやめてしまったラブはシリウスを置いて走り出し、かなり離れた場所からシリウスに早く帰ろうと声をかけた。


「・・本当に不思議だな。待てよラブ!あまり走ると転ぶぞ!」


突然走り出したラブに一瞬だが困惑したシリウス。だが直後には、彼女を追いかけるために走り出した。しかし彼女もただ待っているだけではなく、シリウスがある程度近づくと同時に走り出し、追いかけっこのような状態になっていた。


しばらく走り続けていたラブだが、とうとうシリウスに追いつかれた。しかしその頃には、もう工房の前にたどり着いていたのだった。

工房に入った二人は椅子に腰かけた。そして、シリウスはすぐさまラブの先ほどの行動について問いかける。


「ラブ、突然走り出してどうしたんだ?」


「えっと・・トールさんの気持ちを知りたかったんです」


「トール?あぁ、ペテルギウスの工房にいる・・」


ラブはシリウスに、工房であったことを話した。

工房でクレセントールに会い、彼に怖がられたこと。やはり彼女はそのことが気にかかっていたのだ。


一通りラブの話を聞いたシリウスだったが、どうにもラブが言いたいことはそれだけではないと感じ、更に問い詰めることにした。どうせ大工についてもっとよく聞きたいのだろうと、その時シリウスは考えていた。・・・しかし、ラブは彼の予想を超える発言をしだしたのだ。


「シリウス・・私は、このドームを成長させます!」


「あぁそうか・・・ってはぁっ!?」


予想外の発言に驚くシリウス。それもそうだ。つい昨日完成した者が訳の分からない発言をしたのだから。それに、成長させるという事はつまりは建物自体を大きくさせたり、より良い機能をつけることになる。そんなことがアストロイド一人にできるはずがないとシリウスは考えているが、それでもラブの目はやる気に満ち溢れているのか輝いている。


「・・ダメ・・でしょうか?」


「いや、ダメという訳じゃない。ただなラブ・・成長させるというと凄まじく難しいことだぞ?」


「難しくてもいいんです。それが私の使命ですから!」


満面の笑みで答えるラブ。だがその時、[使命]という言葉に、シリウスは反応した。

自分たちは使命を果たそうとしているのだろうか?自分たちが月にいるのは、ただ生活するだけではないハズだ。使命を与えられたロボットたちが果たせなかった使命を、今目の前の人間そっくりなロボットはその使命を果たそうとやる気になっている。


しかし・・ラブに何かを言おうと考えてはいるが、シリウスには答えはまとめられなかった。


「・・すまん、ラブ。今日はもう寝よう」


ゆっくりと立ち上がったシリウスは工房の奥へ行き、そこから1つのパンを持ってきた。それをテーブルの上に置き、自分は缶からエネルギーを補給してスリープモードに入った。

彼から答えを聞くことができなかったラブだったが、それよりも疑問に思ったのは何故か彼が落ち込んでいるように見えたからだ。

だが既にスリープモードに入ってしまった彼に聞くことはできず、テーブルに置かれたパンをゆっくりと食べ、スリープモードに入る準備をした・・・。


---二日目・終わり---

大変お待たせしました。第二話完成でございます。

いかがだったでしょうか?感想などをいただけると幸いです。


まだまとまりのない文章や低い表現力ですが、温かく見守っていただけると幸いです。

それでは、また次話でお会いしましょう。

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