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青春リテラシー。  作者: シュレディンガーの羊
13/15

12:くしゅん×10回




「なぁ、相澤」

「なんだよ、倉上」

「くしゃみ連続十回だといい噂か、悪い噂か?」

「……お前、それ気にするくらいなら風邪の再発を気にしろよ」




「くしゃみ二回がいい噂なのは知っている」


倉上がまた懲りずにそんなことを言った。


「あぁ。確か一回は悪い噂で、三回は風邪ってやつだろ」

「漫画やアニメでよく使われる表現だ」

「場面が変わる時とかによく見るかもな。いま、噂されてた気がする、とか」

「なぁ、十回は三回のループでだろうか」

「だとしたら、いい、悪い、風邪、いい、悪い、風邪、いい、悪い、風邪、いいだな」

「いい噂だ」


指を折って数えてやれば、その結果に倉上は満足げに笑う。

それから、思いっきり咳込んだ。

微かに涙目なのがなんか不憫だ。


「いや、お前の場合は言うまでもなく思いっきり風邪気味だろ」

「おかしい。いい噂のばすなのだが」

「いや、こんな花占いみたいのを信じるな」

「いや、花占いの偉大さを相澤は知らない」

「は?」

「重要なのはあのお手軽加減だ。例え[嫌い]になっても、もう一度やるか、こんなもの気にしなくていいと思えるだろう。[好き]になればそれだけで背中を押された気になれる」


説得力はなくはないが、拳をきかせて男子高校生が力説することではないと思う。

花占いをする倉上を想像してみる。

嫌だ。よくわからないけどすごく嫌だ。


「つまり人間は好きなことを信じればいい。くよくよ悩んで、思い込みの自己暗示にかかるほうが阿呆のすることだ」

「へぇ、今日の倉上はいつもより数段とまともに見えるな」

「俺がまともでなかったことがあるか。いやない」

「おー、今日は反語も出来てんな」


素直に驚く。

めちゃくちゃな屁理屈もいつもよりはまともだし、反語も出来てるし。

なんだ、風邪気味ではないようだ。

と、倉上が俺を見て口を開く。


「ところで、相澤」

「なんだよ、倉上?」

「俺はどうやら風邪のようだ。早退する」

「……いや、ばりばりの健康体だろ」

「いや、ほら、くしゅんくしゅんくしゅん」

「……だから?」

「なんだ。三回は風邪だと相澤が言っただろう。自分の言った言葉に責任を持て」

「その言葉、そっくりそのままお前に返す。三回で風邪とか信じんな、そっちを信じるなよ馬鹿!」


とりあえず、早退するのは阻止した。

ただ唯一ちょっと心配だったのは、無駄に屁理屈な言論を弾き出す思考回路の知恵熱だったりした。




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