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銀だらの西京焼き

作者: 夏夢
掲載日:2026/03/18

 3月、有吉佐和子の「青い壺」を読んだ。

 同じ和歌山にゆかりがあると知っているのに、今まで一冊もこの作者のものを読んだことがなかった。面白かった。


 近頃「本屋大賞」の本を読むと、ストーリーやキャラクターで読者を楽しませようとするものが多い。


「青い壺」はそういうものとは毛色が違う。


 ある陶芸家が焼き上げた最高傑作の「青い壺」。その周辺を生きる人々を描く連作短編だ。

 かなり多くの人物が登場するけれど、どの短編に出てくる登場人物も生々しい。

 小説の舞台は戦争前後の日本なのだけれど、その日々を生き抜いている市井の人たちの温度感をしっかりと感じることができる。


 美食を楽しみに生きていた夫婦が、芋ばかりの生活の中でもなんとか優雅さを味わおうとする姿に胸をうたれ、

 日本で初めて高等教育を受けた女学生であったのちの、老人たちのどうしようもない嘆きの会話を聞き、

 給食になんとかして野菜を入れ、食べさせようと腐心する栄養士の奮闘を覗く。


 そのあいだ、私は完全にタイムスリップした世界に連れていかれた。

 これぞ読書の醍醐味だと思う。


 帯には、原田ひ香の「こんな小説を書くのが私の夢です」という文言がある。

 小説家なら、きっと憧れるだろう。

 これだけ現実に立ち上がる小説、強度がある小説を読めてよかった。

 ほかのものも読みたい。


 さて、目標にしている毎月おいしい魚を食べる件。


 3月の頭に、夫が魚久の西京焼きセットをいただいてきた。

 これがあまりに美味しすぎて、西京焼きのことが頭から離れなくなってしまった。



 美味しいのは間違いないのだけれど、これを自分で購入するほどの食道楽にはなれない。


 結果、近所の角上魚類にもよく西京焼きが並んでいるのでそれを買うと、違和感がない(と思えるくらいには)美味しかった。

 実際に食べ比べてしまうと好き好みがあるのだろうけれど。


 どちらで買っても、圧倒的にいいのは銀だらだ。


 柔らかくて、魚なのにぱさぱさせずにジューシーで。


 銀だらを二枚買うのは始末して、銀だらと鰈を一切れずつ買い、皿にはそれぞれ半分ずつ並べる。


 夫は銀だらばかり食べたいというけれど、私は鰈も十分美味しいと思う。

 ただ、だからと言って夫に銀だら、自分は鰈、とするのは寂しいので、黙って夫の皿にも半分になった鰈を置く。


 夫は心得た様子で、鰈を最初に食べる。好きなものは最後に残しておくタイプなのだ。黙々と鰈を腹におさめていく。


 ゴールデンウイークには、久しぶりに私の実家に帰ることになっている。

 その時は朝食用に、人数分の銀だらを買って帰るつもりだ。


 あの肉厚な銀だらを一切れまるまる食べることを考える度に(しかも朝食に!)、煩わしい準備が軽やかに進むから安いものである

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