7話
あのジャイアントベア討伐から約二ヶ月が経った。
こつこつと魔物の討伐依頼を受け、リンも少しずつ戦闘にも慣れてきた今日この頃。
リンたちの住むラベライト王国では国を挙げて行う春を迎える祭り《春来祭》が始まろうとしていた。
街は活気に満ち溢れ、人々の表情もどこか楽しげに見える。
この日、リンはエルと共に朝市に出かけていた。道の端に並ぶ多くの屋台には採れたての肉や新鮮な野菜から朝食にちょうどいい惣菜パンやスープなどが並んでいる。
「朝市ってあんまり俺は行くことなかったんですけど、朝食とかも売ってるんですね」
「ほぅでふね。んぐ、朝が早い人たちの為に手軽に早く食べれるのを提供したのが始まりだそうですよ」
「たしかに安いし美味しいです。、、、ふと思ったんですが、聖女様って朝から結構食べれるタイプの方なんですね」
「朝ごはんは一日のエネルギーの元ですから。もしかしてリンさんは朝は食べれないタイプですか?」
「食べはするんですけど、あんまりって感じですかね。最近は動いてるからか結構食べれるようになりました」
両手にパンや串焼きなどを抱えるようにして食べ歩きをするエルを見ながらリンは素直に感心する。
リンは朝に弱いタイプの為、あまり朝食は食べれないタイプなのだ。
パン一個食べれるか食べれないかといったところだったのを最近はワンプレートくらいは食べれるようになってきている。十分な進歩と言えよう。
特に目的もなく二人で市場をぶらぶらと彷徨っていると「なにすんだテメェ!!!」と野太い大声が人混みの向こうから響くのが聞こえる。
二人は一瞬顔を見合わせるとすぐに声のした方へと走り出した。
人混みの中をを人にぶつかりそうになりつつ走り抜けた先では、先程の大声を上げていた男が薄汚れたマントを着た人物の首元を捕まえて怒鳴りつけていた。
「もし、そこのお兄さん。一体どうなさったのですか?」
エルが二人の間に入り、首元を捕まえている男の手にそっと自分の手を乗せて何があったのかを問いかけた。
「ア”ァ”!?って、せ、聖女様!?」
男は怒りのままに答えようとしたのだがエルの顔を見た瞬間、驚きにより掴んでいた手を離してしまった。
一瞬戸惑った様子だったが、すぐに聞かれたことを思い出し動揺しつつも事の発端を身振り手振りしながら話し始めた。
「それがよォ、こいつに財布を盗られて。あ?居ねェ!?!?!?」
しかし、話し始めた直後に男はマントを着ていた人物が消えたことに気づく。
それもそうだろう。首元を掴んでいた手を離してしまったのだから。
薄汚れたマントを着た人物は皆の視線がエルに集中したほんの一瞬の間に消えてしまっていた。
「あらまぁ、逃げられてしまいましたか…とりあえずお話だけでも聞きたかったんですがね」
誰にも見られずに消えるという早業にエルとリンの2人も驚きを隠せなかった。
「全然気づきませんでした。俺も探しに、」
「待ってくださいリンさん。警衛さんがいらっしゃったみたいです」
そうこうしている内に警衛も集まり男も事情聴取ということで連れて行かれてしまった。
エルとリンはその場に居合わせただけのためマントの人物の特徴くらいしか聞かれることもなかったが、男が簡単に警衛に説明していた内容をこっそりと聞いていた。
二人で聞いた内容を整理しながらまた市場の方へと戻る。
「道でぶつかって、財布が無くなったことに気づいて、あのマントのやつが財布を持っているのを見つけて捕まえたって感じだったみたいです。聖女様」
「う~ん、私たちが出る必要性はなかったみたいですね」
「ですねぇ。逆に引っ掻き回しちゃった気がします」
さっきまで両手に山程抱えていたご飯はどこに消えたんだろう?とリンは不思議に思いつつも屋台が畳まれていく様子を眺める。
その視界の端、路地裏の近くで不審な動きが目に入る。
さっきのマントを着ていた人物だ。
「聖女様、ちょっと行ってきます」
もぐもぐと口を動かすエルを横目に先程の人物が消えていった路地裏へとリンは駆け出した。
話の文字数を毎話3000文字程度に増やしたほうが読みやすいでしょうか?
参考程度にですがこの話は1700文字です。ご意見待ってます。
次話は本日の18:00に更新予定です。




