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5話

村まで戻る短い道中で幼い少年になぜあの場にいたのかと聞いた。


「あんな、おとうさんがな、あのくまのせいでけがしたんだ。それでおかあさんもな、すごいつらそうでな、だから、だからおれがたおせたらな、みんなうれしいとおもったんだ」


「そうだったのか。村のみんなを喜ばせたかったんだな」


そのリンの優しい言葉に子供はまた泣き出してしまった。こういうときは本人も分かっているのだから頭ごなしに叱ってはいけないのだと今までの経験でリンは知っている。


なにより————


「グス、ほんとうに、ほんとに、ごめんなさぁあい!」


本人もしっかりと反省しているのだから後は親がやるべきことだろう。


よしよしと頭を撫でながら涙を拭ってやる。


「それじゃあお父さんとお母さんのところに戻ろう。心配してるさ」


「う"ん"!」


そんなこんなで幼い少年ことアランは現在進行形で母親にしっかり叱られていた。


その隣ではエルの《星の奇跡》の力によって全快した父親がギャン泣きしているアランを見てオロオロとしている。


その幸せな家族の姿にリン本人も無意識のうちに羨望(せんぼう)の眼差しを向けていた。


そこにリンとエルが帰ってきたと聞きつけた村長が急いで駆けつけ、また深々と頭を下げる。


「勇者様、ジャイアントベアの討伐だけではなくアランのことも助けてくださり、本当にありがとうございます。これで安心してこの冬を越せます」


涙声で感謝を告げる村長にリンたちも萎縮(いしゅく)してしまう。


「いやいや、当然のことをしただけです。ていうか全部聖女様のお陰なのでそういうのは全部聖女様にお願いします!!」


「聖女様も怪我を負った者たちを癒やしてくださったこと、心より感謝申し上げます。本当に、ほんとうによかった。ズビッ」


「私も教会の者として当然のことをしたまでですよ。その思いはどうか神に祈り伝えてください」


「本当に謙虚な方々ですわい。、、、それでは報酬を払わせていただきます」


そう言って村長はずっしりとした重さの銭袋をエルの手にしっかり握らせた。そっと包みを開け中を覗き見たエルは驚愕(きょうがく)の表情を浮かべる。


「村長、こんなにもよろしいのですか?冬の間の食料や生活品を買うためのお金だって必要でしょう?」


「元々依頼用に十数年掛けて貯めているのですわい。それに、ジャイアントベアを倒すだけではなく村民たちの治療までしてくださった御恩に報いるためにはこれでも少ない方でしょう」


「返しても受け取っては頂けないのですね」


「えぇ、どうか受け取ってくだされ」


「わかりました。東アルネ村のみなさんに幸多からんことを」


会話を終えたエルは人知れず少し離れた場所に移動していたリンの方へと小走りで駆けていった。基本的にリンには人見知りの気があるようだ。


「リンさん、村長さんに報酬を頂いたので確認をお願いします」


「俺がですか?」


「はい。ジャイアントベアを倒したのはリンさんですし、そもそも二人で依頼を受けたのですからリンさんにも確認する義務はありますよ。報酬の半分はリンさんの物なんですから」


「たしかに、、、」


リンはエルの言葉にハッとしながら手渡された銭袋の口を開けて中を見る。


そして驚愕の声を上げてしまった。


「こ、こんなに良いんですか!?相場とかよく知らないですけど絶対多いですよね!?」


袋の中にはパッと数えただけで銀貨が20枚近くも入っていた。これだけで一般的な労働者の半月分の収入になる。


たしかに討伐を生業にする者は一般的な労働者よりも収入が高い者も多い。


それには危険だからこそ最低でも貰える賃金を組合が決めているというのもあるし、依頼がないときでも魔物の素材は高く買い取って貰える場合が多いからという理由がある。


命の危険がある上に安定した収入を貰えるというわけではないというデメリットもありはするがそれでもこれだけ貰えるのであれば魅力的に感じてしまう部分はある。


孤児院で生活をしてきたリンにとっては例え半分だとしても恐怖を感じてしまう金額ではあるが。


(というか聖女様の力で村の人達の怪我治したんだから、聖女様は半分以上受け取るべきだろ。半分とか貰えない!)


「先に言っておきますが組合で最初に説明された通り、任務を受けた際のパーティー人数で等分ですからね。そういうルールですよ」


「う、、、はぃ」


リンの心を読んだかのようにエルが釘を差してくたので図星を指されたように返事をするしかなかった。


そういえば最初受付でそういう説明を受けた記憶があるな、なんて思い出しながら帰りの馬車に乗り込む。


馬車が走り出したところでリンはハッと思い出した。《月の魔法》のことを村で聞こうと思っていたのだ。


あ~疲れましたねぇ、と言っているエルを一瞥(いちべつ)し呼吸を整えると、リンは意を決してエルへと話しかけた。


「聖女様、さっきの《月の魔法》って言葉なんですが、」


「あ、、、、そういえば説明すると言いましたね」


明らかに忘れてしまっていたようだが、先程まで村の家々を回って治療していたのだ。忘れるのも無理ないだろうとリンは内心頷きつつエルの話に耳を傾けた。

6話は本日の18:00に投稿予定です。

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