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5話「所詮■らは■■モドキ・後編」

話はリン達がリギル村を出発することを決めた日に(さかのぼ)る。


チカがモドキだとバレた食堂での出来事を窓の外から見ていた一つの影があった。


黄色い雨合羽を被った4、5歳くらいであろう背丈の子どもが背伸びをして食堂での出来事を、正確に言うとリン達勇者一行を見つめている。


「んむー、まどが高すぎますねー…はわわーモドキバレしちゃってかわいそー」


マントを(まく)られモドキであることが露呈(ろてい)してしまったその瞬間をその子どもはしっかりと目撃していた。


雨合羽のフードで隠れて表情は分からないがそれでも可哀想だと言う言葉には本当に可哀想だと思う気持ちが溢れている声色で、もし顔が見えるのであれば眉を(ひそ)め涙を(にじ)ませていただろう。


そんな声色から一転、何かを思い出したかのように声を上げた。


「ほーこく忘れてたですー!ローパーさんがアリイム様に怒られちゃいますー!」


そう叫ぶとはっとした表情をして声が大きすぎたと言わんばかりに口を手で覆いつつ手のひらサイズの綺麗なな石を取り出した。


キラキラと月明かりで光るその石は光を増していき、やがて幼い少女を包みこんだ。


光に包みこまれた少女は食堂から少し離れ煌めいている光のうちの一つに触れる。


するとその光は一つの映像を映し出した。


至厄舟(しあくしゅ)のみなさまーソーレ様ー!ごほーこく致しますー!」


クスクスと笑みを浮かべた少女はその映像の先の五人へと報告を始めた。


◆◇◆


とある広い会議室にて五人男女は報告を座して待っていた。


切られたオレンジの乗った洒落(しゃれ)たドリンクをストローでちゅうちゅうと吸っている男。


その男はこめかみから一対の角が伸びており尾骶骨(びていこつ)から伸びた短いしっぽが不機嫌そうに揺れている。ちゅぽっと音を立て無駄に色気を振りまきながらストローから口を離すと目の前の小さな子どもに向かって絡み始めた。


「さてさて、そろそろ報告のお時間みたいやけど。ローパーちゃんとこん子まだみたいやね?」


その言葉に目の前の雨合羽を纏った4~5歳くらいに見える子どもが体を震わせた。


ぼたぼたと机に涙を溢しながら謝り始める。


「は、はわわートゥーラさん、も、申し訳ないですー。ぐすっ、今しばらくお待ち下さいー……グスンっ」


「ちょっとローパー、しっかり仕事してくれない?あたしも暇じゃないんだけど?」


「ぴぎゃー!アリイムさんほっぺた引っ張らないでくださいー!痛いですー!」


「あははは!めっちゃ伸びる~!おもしろ~い」


べしょべしょになりながら謝っているローパーに真横に座っていたアリイムという名の女がその柔らかい頬を引っ掴み伸ばして遊び始める。


ケラケラと笑うその女は大きい耳と大きいしっぽを持ち、そうやって子羊のように震えているローパーをいじめている様子はさながら御伽噺(おとぎばなし)の狼のようであった。


「アリイム殿。見ている側からすれば気分の良いものではないのだが」


「は?うるさいわね。黙ってなさい」


「な…」


ローパーをいじめにいじめ、元から涙を溢していたローパーの瞳が溶け落ちそうなほどにいじめていたのを流石に可哀想に思ったのかヒヨドルが止めた。


しかしそれでもアリイムは頬を伸ばす手を止めずに逆に殺気を向けるのだが、そのアリイムを見てソーレはため息を着きながらも一触即発(いっしょくそくはつ)の空気を止めに入った。


「ヒヨドル。ソイツらに関わるだけ無駄だ。止めておけ」


「せやで、下手に関わったほうが怖いしな?」


ケラケラと笑いつつもトゥーラもソーレの意見に同意した。


明らかに面倒だと思っている対応の二人に流石にアリイムも頬を膨らませ不満を(あら)わにする。


「アンタ達あたしのことなんだと思ってるワケ?」


「人格破綻者」


「面倒な女」


「倫理観をお母さんのお腹ん中置いてきた人外?」


「よし殺すわ。今すぐ殺すわ」


ヒヨドル、ソーレ、トゥーラの順でアリイムの質問に即答する。


聞かれた瞬間に答えられるということは普段から思っているということに違いはないのだが、それにしてもあまりにも酷い言われようにアリイムも怒髪天(どはつてん)()く勢いだ。


とりあえずといった様子で目の前に座っているヒヨドルに殴りかかるアリイムをどうにか(なだ)めるトゥーラ。そしてこの中で明確に上の立場だと言えるソーレに至っては壁に(もた)れながら眺めていた。


そんなしっちゃかめっちゃかな会議室にまさに鶴の一声と言える言葉が響く。


「ほら君達、報告が来るから座り給え」


「顧問官どn/お兄様!」


何処(どこ)からともなく現れた光の塊から発せられた声にヒヨドルとアリイムがほぼ同時に反応した。


「やあアリイム。今日もしっかり生きているようで安心したよ」


「やだわお兄様。あたしは毎日とっても真面目にしっかり生きているのよ?」


「ああ、分かっているよ。それでも君が生きているということが喜ばしいのさ」


「きゃー!そう言って頂けて嬉しいわ!」


先程までの怒れる獣とは思えない甘ったるい声で話すアリイムのあまりの猫かぶりの速さに他の四人はついつい遠い目をしてしまった。


「さて。じゃあ今から繋げるから好きに話し合うといい。またねアリイム」


「ええ、お兄様!」


光の塊が一際(ひときわ)輝くと一つの映像が空間に投影され、ローパーと似た見た目の子どもが映し出された。


未だにアリイムにいじめられていたことで泣きっぱなしの様子のローパーとは対称的に映像の中の子どもはにぱにぱと笑い何処(どこ)か楽しそうな様子で声を上げる。


至厄舟(しあくしゅ)のみなさまーソーレ様ー!ごほーこく致しますー!」


「はわわー。報告が間に合ったみたいで良かったですー!」


「間に合ったって言えるんこれ?」


待ち望んでいた報告が始まったことに安堵(あんど)の声を上げたローパーにトゥーラはなんとも言えない様子で呟く。


しかしそんな二人の様子を余所に報告が進められていった。


「といった感じでー勇者一行はこのくらい強くなりましたー!仲間も増えて、特にこのチカって子の魔法はーローパーさん達的にはちょっと厄介かもですー!」


「吾輩からすればこのシータの硬化魔法というのも少し面倒な力だとは思うが、」


「でもそいつの能力って生き物には上手にかけられへんのやろ?そんならそこまで強くはないと思うけどなぁ。これで防御固められて月の魔法の移動速度で動かれたら他の皆は辛いやろ」


「アタシからしたらこいつら全員ゴミよ。道端の小石ね」


「ローパーさん的には皆さん強そうだなーって感じですー。ローパーさんは一番弱いのでー…ひん」


リン達の力を報告し情報を精査しながらもし己が相対したときならば、をそれぞれが想像する。


皆の言葉の節々からは楽しげな様子が見え隠れしていて、とても敵と相対したときの事を考えているとは思えない様子だ。


しかし、その和気あいあいとした様子はソーレの一言で一変した。


「問題はこの星の聖女とか名乗っているゴミだな」


「そうね、何様のつもりで生きてんのか分かんない」


「早くこの世から消えてほしいですー……」


「同意ですー!」


ソーレの一言に他の女子陣がすぐさま似たような、というよりもっと酷い罵倒で同意する。


聖女と名が付いているのだ。それは人としての有り(よう)も能力も容姿も素晴らしいが故に人から(たた)えられる存在。


しかしそれは人間から見てのこと。


人を害する側である魔族からすれば話が違うのだろう。


特に女子陣が集中砲火でボヤいているのは下手すれば嫉妬とも取れてしまうかもしれないが本人達にそれを言えば烈火の如くキレられるのは想像に(かた)くない。


「相変わらず女性陣は気が強いな」


「せやねぇ。…気が強い、でいいんかなこれ」


ひそひそと追いやられるようにして話す男性陣二人の様子に気づいたソーレがコホン、と咳を一つ。


それで緩みに緩んでいた空気は引き締まった。


「さて、強いと言えば強いがこいつらの強さはまだ発展途上。しかしこれから先の脅威となる可能性は高い。よって、基本的には見つけ次第即排除を方針としていく」


「把握した」「りょーかいしたで」「はぁい」「わ、わかりましたー!」


ソーレの即排除という言葉に皆が返事を返す。


◆◇◆


さてもう会議もお開きにするか、という空気感をローパーに似た子どものふわふわとした楽しげな声が破壊した。


「あの、もう一つごほーこくがー…」


「なんだ?」


「それがですねー、この映像見てほしいんですけどー」


そう言われ五人は映し出された映像を一人は興味なさげにまた一人は真面目に、といった様子で眺め始める。


流れた映像とはチカがモドキであることがバレた瞬間から外へと飛び出していった村人達の言葉であった。


  「ああ気味が悪いったらありゃしないわ。ユレイ、お手柄だったね。よくアイツがモドキだって見つけた」

  「おれすごい?へへへ、うれしい!」


  

  「聖女様の仲間にモドキがいるとか気持ち悪いよなぁ。麗しの聖女様に近づかないで欲しいぜ」

  「仲良しゴッコしてたけどきっと聖女様はお優しいから嫌だって言えねぇだけだろうぜ」


そんな言葉に五人は怒りを(あら)わにする。


「あらまぁ、ソーレ様ったら。コップ割れてしもうとるで」


「ッ…すまない。少し力を込めすぎたようだ」


己の握力によって割れてしまったコップの破片を集めながらソーレは言葉を続ける。


「神は人間のことを清く美しく愛おしい存在だと言っているがこのような言葉を吐く奴らの何処(どこ)が美しいんだ?本当に訳が分からない」


「結局この村の人達も人間モドキってことですよねー。この、、、チカちゃん?が魔族モドキだって言われてるのと同じですー…」


しょんぼりとした様子でソーレの言葉に続くローパー。その雨合羽に隠された瞳からは隠せぬ怒りが燃え盛っている。


テーブルの上の菓子を摘みつつアリイムも村人たちへの思いを吐露(とろ)し始めた。


「これだからゴミ共は駄目なのよ。面倒だしコイツら全員殺しましょ?ついでに勇者も殺せば万事解決じゃない?」


「それってもしかしてローパーさんがしなきゃいけない、とかじゃないですよねー…?」


「え?アンタ以外に誰がするの?」


「ひええー、酷いですー。ローパーさんは毎日真面目に働いてるのにー。更にお仕事増やす気で、あででででー!引っ張らないでくださいー!」


口答えするなと言わんばかりにまたローパーの(やわ)い頬を引っ張り上げる。


「あたしなんか二四時間三六五日、仕事してるようなもんなんだけど?休みの日があるアンタらがしなさいよ」


「吾輩は兵達の訓練があるな」


「ロ、ローパーさんもお仕事沢山ありますー…」


「僕は弱いものいじめしたいわけやないからパス~」


四人ともお互いに新しく生まれそうな仕事を押し付け合う。


四人はバチバチと視線を交わし、誰がこの仕事をするのだと腹の探り合いに似たような事を始めた。


「まあ、アリイム殿が国から離れるのは問題だな」


「ローパーちゃんとこの子が村に()るんやしその子にお願いしたらええんとちゃう?」


「え”?!さ、流石にそれはー、まずいかもですー?ていうか弱いので勇者がいるときついですー…グスン」


「じゃあ誰がするのよ?」


「それは…」


結局暇そうな奴がいないため話が止まる、かと思われたがアリイムがソーレの方を指差し、それに他三人も視線が誘導される。


「…ん?」


全く関係がないと思い油断していたソーレは四人の視線が集まったことで声を漏らす。

そんなソーレにアリイムは(いや)らしい笑みを浮かべながらソーレのその体へと指を滑らす。


「アンタがいるじゃない!ソーレ、貴方が殺してきて頂戴よ!」


「ふぅ…お前本気で言ってるのか?私は一応お前の上司なんだが」


「年功序列ってやつよ。ね、お願い?」


「いや、お前、それは…」


額に青筋を浮かべながらも言葉に詰まるソーレを遠目に眺めるアリイム以外の三人。


ローパーに至っては黄色い悲鳴を上げながら顔を赤くしている。


「聞いてくれなきゃローパーにお願いしちゃうんだから」


「ク◯◯◯(ピーー)女め」


「それ魔王様が聞いたらびっくりして泣いちゃうわよ」


「この場に王はいらっしゃらないから問題ない」


「それ言っていいの?」


「いい」


「あ、そう」


普段はあまり暴言を吐くことのないソーレの暴言に驚きを隠せない。


このまま断られるのかと思っていたがソーレの口から出た答えは思ってもいないものだった。


「仕方ないからな、私が行こう」


「えええー!ソーレ様が行ってくださるんですかー?!」


「お忙しいのではないですか?」


「ありがとなぁソーレ様」


「ありがとー♡」


「言っておくが次はないからな」


そう釘を刺すソーレに皆が色良い返事を返す。


これがソーレがリギル村へと向った経緯であった。


アリイムの一言からリギル村は滅ぶこととなってしまったのだが、不幸中の幸いといっていいのか勇者達はソーレと出会うこともなく安全に次の場所へと向かうことが出来たのだった。

ノリとテンションの可笑しい女性陣とそれなりに真面目な男性陣です。

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