プロローグ 曖昧な戦線/娯楽軍とストライキ
キュゥゥン__
2125年。アルムス共和国とグリアス公国は戦争をしていた。
「ぐあっ」
「ガッ」
「ぐうううあっ!?」
食料を運んでいた敵兵が我々アルムス軍に撃たれる。
「お、おい?」
俺の言葉に耳を貸さず、敵兵のグリアス軍に銃が向けられる。
「待てよ!」
「なんだよ、殺らなきゃ殺られるんだぞ!」
「分かってるけど……」
なぜ、こんなことを?上層部は何を考えてるんだ?
「……大変よね」
「ああ。ヒナはなんともないのか?」
「私は平気よ」
「そうか……」
なぜ?なぜ、戦争をしなければならない?
「そういえばリュート、15歳で戦争に駆り出されたのよね?」
「あまり掘り返さないでくれ」
パァン!
「ごめんごめ__うっ!?」
「ヒナ!?」
突然、1階からの攻撃でヒナの右肩が後ろからやられた。背中とか脊椎とかじゃなくて良かったのかもしれない。
「な……んで」
「あらあら、あなたも軍隊にいたのね?」
「姉……ちゃん」
「あいつが……!」
下を見ると、相手も2階を見ていた。……待て、ここは前線基地のはずだぞ!なんで侵入された!?
「くっ!?」
「敵襲!」
「どうなっている……」
俺はトランシーバーとAK47を持ち、敵国の前線基地に向かった。
「っ!敵!?」
「あれ?簡単に来れちゃった」
なぜか、ここに来るまでに銃で狙われなかった。
「おい、これはどういうことだ?」
「うっ、うるせー!帰れよ!撃つぞ!」
「落ち着け、お前たちの軍のリーダーはどこにいる?」
「ああ?……ちと待ってろ」
ザザ……
『いないぞ』
『こっちもだ!』
……ザザ
「俺のとこもいないみたいだ」
「両軍いないことあるか?」
「……ちょっと貸せ」
敵兵からトランシーバーを奪い、両方に向けて
「両軍、リーダーがいないようだぞ」
と言い放つ。すると、
『おかしいだろ!?』
『もしかして捨て駒?』
『ありえねぇ……』
両者ともに今の現状が信じられないといった感じだ。
「なんか戦場のど真ん中でチェスしてるバカもいるし、戦争やめとくか」
「じゃあどうすんの?」
『敵同士なんだぞ?』
「決まってんだろ。……戦争のストライキだ」
『はらへったー』
『俺帰ってもいいかな』
「帰るなら、マスコミにこう伝えてくれ。『両国とも、戦争をストライキした』とな」
『了解です!』
こうして、我々は戦争をやめた。
「あー、両国とも合併しようぜ」
『合併?どういうことさ』
「そのまんま。ひとつの国にする」
「楽しそう!」
『いいね、賛成!』
『どーせ両国とも言語は同じだしな!』
『第三次世界大戦とかにならなくてよかったー』
__1ヶ月後、アルムス共和国__
ザッザッザッ
ザワザワ……ヒソヒソ……
「行くぞ」
これから行う作戦は、国の国会などを狙い、新たな国をつくるために大統領等を捕虜にする。グリアス公国でも同じくだ。
「!動くな!」
「てめぇらが……なぁ!」
パァン!
「ひっ!?」
「そうだ、武器を下ろして、手を頭の後ろに……そうそうそう」
「聞いたか?あのニュース」
「ああ、なんでもストライキしてるとか__え?」
「その通りだ。君たちも捕虜になってもらおうか」
「大統領!」
「知ってる。潔く捕虜になろう」
「敵兵もいます!」
「なんでも新たな国になるとか」
「そうなのですか……では私も諦めます」
__1年後__
「まさか俺が軍隊長に任命されるとはな」
俺は、新たな国の軍隊長として任命されてしまった。
『続いて、リュート軍隊長の挨拶です』
「行ってこい。立派な演説待ってるぞ」
「行ってきます」
「コホン……『えー、新たな軍隊の皆、これから我々は、新たに軍隊長として任命された、俺「リュート・ロワルド」が君たちを引っ張っていく。その上で、君たちに約束したいことがある。「娯楽を充実させる」「核兵器の廃絶」「災害時に支援する」、この3つだ。娯楽は、チェスやトランプはもちろん、日本のゲームなども導入するつもりだ』
「おぉ……!」
カシャア!パシャシャシャ!
『さらにだ。核兵器の廃絶については、この国では絶対に核兵器を使用しないし、つくらないし、持ち込ませない!そして、最後の災害時支援についてだ。日本の自衛隊のように、災害時にはどこへでも軍を派遣する!』
「質問です!なぜ日本の軍隊を話に出すのですか?」
『それについては、俺が前世日本人だったからだ!』
「えぇー!?」
パシャシャ!
『他に質問はないか?……では、これで終わりだ。これからに期待している』……ふぅ。人前に出るのは疲れるな」
「お疲れ様、リュート君」
「大統領……」
『えー、続いて、新たな大統領からの挨拶です』
「あ、行ってくる」
「お気をつけて」