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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

芦毛のシスターの日常

作者:種田自由
 コンコン。

 木の扉をノックする音が、古い石造のアパートの廊下に響く。
 ノックの主は少し待ったが、反応がないので再び木の扉を叩く。

 コンコン。

 さっきとまったく同じリズムで音が鳴った。

 コンコン。
 コンコン。
 コンコン。

「うるせぇな! さっきから! 一体何時だと思ってんだ!?」

 足音が近づいてきて、内開きのドアが乱暴に開けられる。
 中からは、血管をひたいに浮き立たせた男が現れた。
 声色の通り、かなり不機嫌そうに見える。
 しかしノックの主が、人の良さそうな笑顔を浮かべた少女であったことが分かると、男は途端に表情を変える。

「……おやおや、シスターさんじゃないですか。こんな時間に一体なんのようで──」

 男はニヤケ面のまま、背中から床に倒れた。
 シスターが男の喉元にナイフを突き立てたからだ。
 死体を踏み越えるとき、シスターからは一切の表情が消えていた。
 衝撃音を不審に思ったか、奥のドアから女が現れる。
 女はシスターと血の海に沈んでいく男とを交互に見て、顔を引きつらせた。
 女が口元に手をやるのと同時に、乾いた音がひとつ鳴り、女は背中から倒れる。
 シスターが奥の部屋へと入ると、ふたつの発砲音が鳴った。
 再び死体を踏み越え、シスターは外へ出る。
 長い芦毛色の髪を揺らしながら歩くシスターの表情は、とても柔和な笑顔だった。
前編
2025/01/11 18:50
後編
2025/01/11 19:00
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