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変態登場

不死であるみゃんとパーティを組むことになった呪使いの俺、シグは俺の冒険者登録とパーティ登録をするために冒険者ギルドに向かっていた。

「シグさんってなんで呪いを学ぼうと思ったんですか?」

唐突にみゃんが聞いてくる。パーティを組んだからお互いのことをもっと知ろうのしているのだろうか。

隠す必要も無いし素直に答える。

「俺は小さな村で生まれて普通に冒険者になろうと考えていたんだ。教わる人もいなかったから木刀の素振りとか筋トレとかそんなんだ。村のみんなを守る守るために強くなりたかったんだろう。でも、10年前にその夢は諦めた。」

「10年前に俺の村が魔物に襲われた。俺はその時13歳だった。必死で闘ったが手も足も出なかったよ。」

「俺の目の前で次々と村の人が殺されていった。俺の親も。絶望したよ。俺の今まではなんの意味もなかったんだって思った……」


「それは……とても悲しいことでしたね…」

「すみません、こんなこと聞いてしまって……」

みゃんが申し訳なさそうに言う。


「だけど、悪いことばかりじゃなかった。その時に師匠に出会ったんだ。師匠は呪使いだった。目の前の敵を一瞬で倒しちまって本当にかっこよかったよ。」

「そんで弟子にしてくれって頼んだんだけど中々相手にして貰えなくてな。泣きながらもし俺を弟子にしなかったら死ぬって言ったらぶん殴られた。でも結局弟子にしてもらえて今に至る。思い出すと今でも情けなくて恥ずかしいよ。」


「なるほど、シグさんの呪いはその師匠さんから学んだんですね。」


「ああ、だが自分で考えた呪いもいくつかあるぞ。」


「すごいですね!」


「みゃんは今までどこで暮らしてたんだ?昔から冒険者を目指していたのか?」

みゃんに倣って俺も聞いてみる。


「私は生まれた時から孤児院で育ったので親は顔も知りません。でも、孤児院の人達はみんな優しくて大好きでした!」

「冒険者は……なんでなりたかったのか自分でもよく分かりません。誰かの役に立ちたい!って感じですかね。」

なんだかフワッとしているな。


そんなお互いのことを話し合っていたら冒険者ギルドに着く。冒険者への依頼は全てギルドに届き冒険者ランクに見合った依頼をこなし報酬をもらう。魔物の討伐はもちろん素材の収集や護衛なんてのもある。

俺たちはギルドに入りそのまま受付に向かい俺の冒険者登録を依頼する。

「冒険者登録とパーティ登録ですね。まずはこちらに手を置いてください。」

ガラス板の様なものを差し出される。どうやらこれで名前や能力が分かるらしい。

手を置くとその板が光り出す。


[シグ・スタンレット]

[魔法:未取得]

[スキル:未取得]

[適正属性:適正なし]


……わかってはいたが、こうハッキリ映し出されると悲しいぞ。

「あの…これからですよ、これから!何も能力がないってことは逆になんでも覚えられるってことです!!元気だしてください!」

受付のお姉さんに励まされる。そんなに気を遣われると余計気まずいんだが……

「シグさんはFランクにて登録となります。」

冒険者にはランクがあって成果によって上がっていくらしい当然Fは1番下。気が遠くなるな。

「私もまだFランクなんです。一緒ですね!」

……みゃんもFランクらしい。


そんな中、1人の大柄の男が近付いてきた。

「Fランクだあ!?だいたいのやつは最初からEランクだってのに笑いもんだなあ!」

「まずは俺に挨拶しといた方がいいぞ。なんてったって俺はBランクの冒険者だからな。」


面倒くさいやつに絡まれた。

「おい、聞いてんのか!Fランク!」

何やら凄んでいるが無視。

こういうのは相手にするだけ無駄だ。

しかし男は引かずにみゃんがパーティ登録のため手に持っていた冒険者証に目を向ける。

「おい!コイツもFランクだぞ!雑魚同士お似合いじゃねぇか!」

みゃんの冒険者証を無理やり取り上げる。

「おい!みんな見てみろよ!こいつらFランク同士でパーティ組もうとしてるぜ!」


フツフツと俺の怒りが込み上げる。

「なんで冒険者なんかやってんだ!?迷惑なんだよなぁ、こういう勘違い野郎どもがいるだけで。冒険者ってのは誰でもなっていいもんじゃねぇ!お前らみたいなのは村の片隅で静かに暮らしてろよ!」

みゃんは「返してください!」と泣きそうになっている。


もう限界だ。少し脅してやろうか。

みゃんの冒険者証を高々と上げているそいつの腕を掴む。そして呪いを発動。大丈夫、安全なやつだ。


【呪 ― 縛の型 ―】


「あ…あ……?」

「な、なんだ、体が動かねぇ...」

「なにをしやがったてめぇ!」

大男は急に怯えた態度をとる。


俺は大男を睨めつける。

「おい、目障りだ。痛い目に会いたくなければさっさと俺の視界から消えろ雑魚。」


大男が怯むのを確認し俺は腕を離す。

「き...今日のところは見逃してやる...」

震えた声でそう言うとそいつはギルドを出ていった。


「ありがとうございます、シグさん。助かりました。力もお強いんですね!」


「いや、呪いを使っただけだ。」

今使ったのは【呪 ― 縛の型 ―】だ。発動条件は相手の皮膚を直接掴むこと。俺の体の自由を代償に掴んだ相手の体の自由も奪う。発動してる時は俺も動けなかったが、それを知らないアイツは高レベルの魔法かスキルで体の自由を奪われたと勘違いしたことだろう。いい気味だ。


一悶着あったが、俺の冒険者登録とみゃんとのパーティ登録を終えた俺たちは呪屋に向かった。

「とりあえず俺たちに出来る依頼をこなして金を稼ごう。そのためにも、みゃんお前に合っている呪具を決める。」


「そのために一旦呪屋に行って探すんですね。私、あの飛翔鎌がいいです!相性もいいと思います!」


「いやお前あれ使う度に首が飛ぶんだぞ。あれは対となる命の盾が1回限りで破壊されるからそれ目当てで常連になってくれると思って勧めたんだ。」

「もっと相性のいい呪具がある。」


「そんな、ひどいですよ!シグさん!」


はあ……しかし師匠や知人から借りてかき集めた金でようやく建てた店だったのにあんなことに……

とりあえず応急処置で屋根を直したら宿としては使い物になるだろうか。もともとボロかったから更に不気味な見た目になって店としては誰も寄り付かないだろう。一応冒険者の仕事の合間に時間があれば店も続けてみるか。希望は薄いが...

そんなことを考えながら呪屋に向かう。

裏路地に入ると急に後ろから声をかけられる。

「ねえ!」

フード姿の人に急に呼び止められる。

何だか嫌な予感がする。まったく気配を感じなかった。

「やっと人気のない所来てくれたね、待ちくたびれちゃったよっ!!」

「あなた不死でしょ!わたし見ちゃったんだっ!」

「わたし、わたしね、あなたの首切り落としてみたいのっ!いい?いいよね!?」


明らかに様子がおかしいやつが現れた。しかもみゃんを不死だと知っているみたいだ。

「知り合いか?」

みゃんは怯えた様子で「知らないです。」と答える。

「……だよな。」

わかりきったことを聞く。


「なんなんだお前は。なぜみゃんのことを狙う?」


そいつはニヤケながらフードをとる。

案外かわいい顔してるな。言動とのギャップが凄い。身長は小さく白髪で子供みたいな見た目をしている。

「わたし……わたしね、虐めるのが好きなの!だから冒険者になった!魔物を虐めて苦しんでるのに懸命に頑張る顔が大好きなの!!」

なるほど、変態というヤツか。実物を見るのは初めてだ。

「でも...でもねずっと人も虐めたいと思ってたの……」

「でも人を虐めたら捕まったちゃうの。捕まったら虐められないからずっと我慢してたの。」

案外良識はある……のか?

「そんなときあなたを見つけたっ!あなた死なないんだよねっ!痛めつけてもいいんだよねっ!殺してもいいんだよねっ!!」

そう言いながら彼女は短剣をみゃんに向ける。


「おい!落ち着けよ...1回話し合おうぜ」

刺激しないようゆっくり近付こうとしたが、次の瞬間

「あなたとは話してない。邪魔!」

彼女の短剣が俺の腹部に刺さる。あいつ短剣を投げやがった。

「大丈夫ですか!?お腹、凄い血出てます!一旦逃げましょう!」


「いや、多分逃げきれない。動きが早すぎる。」


「私が囮になります。その隙に治療所に向かってください。私は大丈夫です、不死なので。」


「……待て、みゃん。俺に考えがある。」


俺はこっそりとみゃんに作戦を伝える。

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