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不死者と呪使い

「死なないって…マジか…」

到底信じられないが目の前の喋る生首が何よりも証拠づけている。

「しかし凄いですね、あの武器!私初めて魔物を倒すことが出来ました!」

俺の呪具を褒めてくれるのは嬉しいがあまりその状態で喋らないでくれ。めちゃくちゃ怖い。

遠くには魔物の死体と目の前には頭と体が切断された冒険者。傍から見たら恐怖映像だ。だが、幸いにもここは元々人通りも建物も少ない。被害はそんなに大きくない。

……俺の店を除いて。

しかし、彼女の不死を見られたら面倒なことになりそうだと思い俺は辺りに目を配る。遠くから冒険者パーティらしき人達がこちらに向かって来ているのが見える。おそらく魔物を討伐しに冒険者ギルドから要請されたのだろう。

俺は慌てて彼女の頭と体を抱えて店の奥に隠れる。


「あの...とりあえず頭を胴体にくっつけてもらえると助かります。それで繋がるので。」


なるほど。それだけで繋がるのか。いや理解はできないが。言われた通りにくっつけるとみるみるうちに皮膚が繋がり完治していた。何者なんだほんとに。


―――――――――

――――――


「ありがとうございます。助かりました。」


俺はただ君の頭と体をくっつけただけなんだがな。

しかし一体どういう原理なんだ。魔法やスキルを使わずに傷が一瞬のうちに治った。まるで傷を負ったこと自体なかったことにしているような...

「君の不死って”天恵”か?」

天恵とは神から与えられる恵。魔法やスキルでは体現出来ない特殊能力が身に付く…らしい。

「んー…よく分からないんですよね。私がなんで不死身なのか。冒険者になって初めての依頼がヨロイキシの討伐でした。」

ヨロイキシとは鎧に青銅の剣をもった騎士の魔物だ。鎧の中には生物はおらずただの動く鎧だ。動きは遅くそこまで強くは無い。

「その時も首をスパッと切られてしまって…」

…切られすぎだろ、首。

「死んだ、と思いました。でも意識はずっと途切れずあってその時初めて自分が不死だと気づいたんです。その時は1人だったんで頭と体をくっつけるの大変だったんですよ。」

…頭がなくても体は動かせるんだな。


天恵を授かる時は目の前に光が現れてその光が全身を覆ったあと力を授かるらしい。こいつがそれを体験していないってことは天恵じゃないのか?

……まあ考えても仕方ないか。不死なのは事実だし。


「自己紹介がまだだったな。俺はシグ。魔法もスキルも使えないが呪いに関しては多少自信がある。」


「私はみゃんです。」


「…みゃん?…本名?」


「はい。みゃんです。」


……いや名前をバカにするのは良くないな。いい名前じゃないか。少し面白いが。


「よろしくな、みゃん。」


「はい、よろしくお願いします!あと私も魔法、スキルは使えないんです。奇遇ですね。」


それで何故冒険者になろうと考えたのか。不死身じゃなかったら君の冒険は初陣で終わっていたというのに。


「あの...シグさんは冒険者になりたいとかは思ってませんか?」


「いや、思ってないが。」


「私の不死を知っていろんな呪いを試したいと思いませんか?」

それはちょっと思った。が、口にはしない。引かれそうだから。

「何が言いたいんだ?」

もじもじしながら、彼女は言った。


「私とパーティを組んで欲しいんです!」


唐突な提案に俺は驚く。

「私...かなり弱いので誰もパーティを組んでくれないんです。でも、今日初めて魔物を倒せました!私たちかなり相性良いと思うんです!」

確かに呪いというのはそれぞれ代償がありそれは使用者の身体的外傷であることが多い。その代償がこの子の場合無かったことになってしまう。正直言うと俺はこの子でいろんな呪いを試してみたいと思ってしまっていた。

「まあ確かに相性はいいと思うが…」

「みゃんはそれでいいのか?今回みたいな危険が毎回君の体に降りかかることになるんだぞ。嫌だろ、痛いだろうし。」

みゃんは一切悩むことなく口を開く。

「いいんです。私、武器もろくに扱えないし魔法もスキルも使えない。でもさっきシグさんの呪具を使った時にわたしの中でビビッと感じたんです。なんだか暖かい感じというか、上手く言葉にできませんが...わたしにはシグさんの呪いが必要なんです!わたしの強さは不死です。そしてそれを発揮出来るのがシグさんの呪いなんです!」

「お願いします!」

みゃんは真っ直ぐに俺の目を見つめる。

俺の呪いが必要...か。なんだかはじめて誰かから必要とされた気がする。

「……わかった。どの道この店を直す金もないし、しばらくは冒険者として食いつなぐとするか。」


「ありがとうございます!」


こうして不死者と呪使いという奇妙なパーティが結成してしまった。




―――――――――――――――――――――


「このワイバーン、君たちがやったのか?」

「あ、ギルド長!お疲れ様です!それが俺たちのパーティが来た時にはもう討伐されてて誰もいなかったんですよ。」

「...そうか。」

「この場合って、第1発見である俺たちが魔物の素材貰っていいんですよね!?」

「ああ、そうなる。早めに済ませてくれ。」

「よっしゃあ、ラッキー!」


(ワイバーンの首を一太刀で仕留めている…)

(相当な実力者だが、一体誰が..)






みゃんが仕留めた魔物の回収作業が行われる中で建物の影に潜むフード姿の少女がひとり―――


「見ちゃった!すごいの見ちゃった!あの子首切っても死ななかった!最高じゃん!会いたい!私も首切ってみたい!」


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